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大阪の東南部に位置する人口10万ちょっとのごく普通の町、富田林。その魅力を、市民の手で発見していきます。

〈リバイバル・アーカイブス〉鏡に顔を映す大王

2020年02月01日 | おもしろ画像

〈リバイバル・アーカイブス〉2022.1.3~1.17

原本:2020年2月1日

もしも古墳時代に、青銅鏡をヤマト王権の大王が見たら...

こんな感じで見えたかもしれません。

さぞかし、ショックだったことでしょう!!

こんな変な顔に映るんです。銅鏡は鏡面(表面)が凸になっています。しかも、完璧な精度で作るのはとても難しいので、歪んでしまいます。

よって、かつて卑弥呼も、ヤマト王権の大王も、それをもらって喜んでいた富田林市新堂(現 南旭ケ丘町)の真名井古墳の被葬者も、こんな変な顔を映して喜んでいたということになります。

おもしろいですね。(資料は天理市立黒塚古墳展示館のものです。)

 

この三角縁神獣鏡(こちらは裏面)も、鏡面(表面)はすぐ錆びて、曇ります。

銅70%、錫(すず)25%、鉛5%程度の合金(青銅)で造られています。青銅といっても、本来の色は写真のとおり白っぽい黄金色。長年空気中の水分と二酸化炭素に触れていると錆びて青緑色に見えるので、青銅と言われています。この錆が文字通り緑青(ろくしょう、あおさび)です。

錆びるといえば、仏壇の前の「チーン」(真鍮製、黄銅 銅60%、亜鉛40%)がすぐ曇りがでて、おばあちゃんが一生懸命磨いていたのを思い出します。常に磨かないとダメなんですね。

 

鋳型(金型)

現代の試作用の鋳型です。

青銅鏡は砂で作られた鋳型に溶けた青銅を流し込み造られます。鋳型はガスが抜けやすくするように細かい砂で作られ、型から抜きやすくするように炭素が吹き付けられています。

 

鋳型から抜いた鋳造品の三角縁神獣鏡。まだ、バリが付いています。

 

ここからは、見学に行った天理市立黒塚古墳展示館の黒塚古墳から出土した銅鏡の一部を紹介します。

黒塚古墳からはなんと34枚もの青銅鏡が出土しました。

 

しかも、三角縁神獣鏡が33面、画文帯神獣鏡1面の出があり、レプリカではありますが、館に全品展示されています。

 

三角縁神獣鏡は縁が三角の山状の盛り上がりをしているので三角縁と言います。縁近くの文様が▲だからではありません。

また神獣鏡と言うのは、当時の中国の神仙思想の神仙(西王母・東王父)と霊獣が描かれているからです。

三角縁神獣鏡といっても、四神四獣、六神四獣、五神四獣、三神四獣、六神三獣、三神五獣など描かれている神獣の数が異なります。

また外周を巡る「帯」の文様も、文字が書かれている「銘帯」、獣が描かれている「獣帯」、画像と文様が描かれている「画文帯」、二重の波模様の「複波文帯」、唐草文の「唐草文帯」といろいろです。

 

館では一堂に黒塚古墳出土の青銅鏡を展示しています。

三角縁神獣鏡は現在舶載鏡(中国製)が430面、仿製鏡(国産)が130面も出土しています。まだ出土していないものや、すでに損失したものを合わせると1000面近くあったかもしれません。

青銅鏡のなかで、一番多く作られたのがこの三角縁神獣鏡と考えられています。ひとつの鋳型を作れば、多ければ手直ししつつ10面ほど鋳造できるので、同氾鏡(同じ鋳型を使いまわして造られた鏡)や同型鏡(ひとつの原型から複数の鋳型を作る方法で作られた鏡)で作られた鏡が広い範囲で出土しています。

 

黒塚古墳の竪穴式石室を原寸で復元しています。

板石を重ねて合掌式の石室を作り、上部に人頭大の川原石を載せています。初期の竪穴式石室で、古墳は4世紀初頭~前半の築造と考えられています。

 

粘土床は朱(辰砂、硫化水銀)で塗られ、画文帯神獣鏡1面がおそらく被葬者の頭の位置に立てかけた状態で置かれ、その両脇に刀剣類が置かれています。粘土床の上の木棺と人骨はは腐ってなくなっていました。そして、被葬者を囲うように北半分コの字形に
三角縁神獣鏡が33面置かれています。周りの壁面下はベンガラ(酸化第二鉄、赤サビ)で塗られているようです。

 

中央の立てかけた鏡が唯一の画文帯神獣鏡。三角縁神獣鏡より小さい鏡ですが、たくさんある三角縁より大事にしていた鏡なんでしょうか?

 

中国の神仙と霊獣が描かれています。

神仙はわらび型の帽子をかぶっているのが「西王母(せいおうぼ、さいおうぼ)」、三山の帽子をかぶっているのが「東王父(とうおうふ)」

西王母は天界の女王にして女仙の主。東王父は神話上の男の仙人。西王母が女仙を統率するのに対し、東王父は男仙を統率すると言われています。

 

他の鏡でも人数と表現は少し違いますが、同じように神仙と霊獣が描かれています。

霊獣は中国の神話伝説でこの世の動物達の長だと考えられた動物で、竜や虎のような神仙界にすむ動物を表現しているようです。

三角縁神獣鏡のなかには、「景初三年(239)」や「正初元年(240)」の年号が記銘された紀年鏡も出土しています。

魏志倭人伝の記述の「銅鏡百枚」とあり、景初三年と朝貢した年号も一致することから、卑弥呼の下賜された鏡が三角縁神獣鏡であるという学説があります。

いずれにしろ、中国と日本で量産され、その後の古墳時代に三角縁神獣鏡は「ヤマト王権」と有力豪族の連帯の「印」として与えられ、重要な役割を果たしたと思われます。

連帯した地方豪族がこれをもらってとても喜んでいる姿が目に浮かぶようです。そして、変な顔をその鏡に映していたと思われます。

 

天理市立黒塚古墳展示館

黒塚古墳のすぐ横にあり、黒塚古墳の竪穴式石室の復元や出土した青銅鏡(複製)の展示をされています。他にパネルによる詳しい解説や柳本古墳群の空中写真図などもあり、見ごたえの展示をされています。

ぜひ一度見学してみてください。

午前9時~午後5時 月曜日、祝日(月曜日が祝・休日の場合は翌日も休館)ほか 無料 (現時点の情報なので天理市のホームページ等でお調べください。)

 

黒塚古墳は、天理市柳本にあり、全長約130mの前方後円墳です。後円部3段、前方部2段の築造で、前方部と後円部の落差が大きく、前方部は平坦になっています。4世紀初頭~前半の前期古墳で、周濠があり、円筒埴輪や葺石は確認されていません。崇神陵や景行陵と同じく柳本古墳群の古墳です。

撮影:2020年1月21日

2020年2月1日(HN:アブラコウモリH )

 


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