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11月の課題本 連城三紀彦 『戻り川心中』

2013-11-29 23:57:20 | ・例会レポ

連城三紀彦『戻り川心中』

光文社文庫 2006年

大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に迫いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。岳葉が真に愛したのは?女たちを死なせてまで彼が求めたものとは?歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。耽美と詩情―ミステリ史上に輝く、花にまつわる傑作五編。

=例会レポート=

実は20年くらい前にも一度課題本になったという作品が、再登場です。

とはいえ、当時読んだというひとよりも、初めてという人が多く、また読んだはずなんだけど、覚えてないよという方もおり、長い歴史のあるわが会では、2回目同じ本っていうのもありなのか?

比較的評判は良かったです。賛否両論ありですが。

良い評価としては

 ★文がとってもきれい。

 ★『藤の香』の書き出しはとてもすばらしい。

 ★まさかの結末の作品があり、ミステリー好きには嬉しかった。

 ★とても「昭和」な読み物。花の使い方もうまく、大衆的な楽しみが得られる。

 「新幹線本」(さらさら読めて残らない)かも。

 ★『桐の棺』の男同士の○○にはびっくり!!

 ★以前読んだ時にはうっとうしいな~(ペンネームに?)と思ったが、大人になってみると、つくりこんだ作品も小説なのだから楽しめるかなと思えるようになった。

 短歌を作品に埋め込むなんてチャレンジャー。がんばった作家だったね。

 ★プロットの立て方が練りにねっている。螺鈿細工の良いものを見ているようなすばらしい職人技。

 ★『戻り川心中』は前に読んだ記憶ははっきりしていた。良かったものはこころに残るのか?主人公は太宰治を思わせる。

『桔梗の宿』も良かった。

 ★おもしろかった。『桐の棺』の兄貴の狂気が特に印象的。

 ★映画を見ているように読み進められた。

 ★耽美的な世界を描きながら、ミステリーとして成立しているのがすごい。

 ★情念や恋愛を扱って暗くどろどろの情念を扱っているが、感情に引きずられず、技巧的につくりこみ、引いて見ている。大好き!どストライク。いいもの読ましてもらったな~

 ★濃縮ジュースや、濃厚なお酒を飲んでいるみたい。洗練されているけど、難しいわけではない。せりふの一言ひとことがとても考えられていてすごい。

 『桐の棺』の兄貴とのシーンにはびっくり!

マイナス評価としては

 ★男女のドラマには浸れるが、種明かしで興ざめ。せっかく浸っていたのに残念。この作家とは相性が良くない。

 ★おもしろいけど、種明かしが長すぎる。

 ★種明かしがご都合主義に感じる。

 ★私には合わない。

 ★つくりこみ過ぎ。

 ★『戻り川心中』の登場人物も好きになれず、内容がきらい。

 ★トリックありきに思えて、あまり魅力的ではなかった。

 ★暗くていやだ。登場人物に魅力を感じなかった。

 ★推理物としては今ひとつ。殺人を犯す理由に説得力を感じなかった。

などなどの意見がありました。

講師からは

 精巧なガラス細工を見ているような作品。

とても花をうまく使って、女性や日本的情緒を描いている。花言葉を使っていないところもいい。花をモチーフに扱った小説は個人的に好きなので。

とても作り込んでいるが、実に細心の注意を払って、舞台装置を作っている。

『戻り川心中』の舞台は大正時代じゃなくては成り立たない。この時代の大正ロマンチシズム、モダニズムあふれる大正歌壇というのが、必要不可欠。

大正歌壇にこんな歌人がいたらということを表現するのに、あたかも実在したかのような評論家を登場させて、舞台装置を作り込んでいる。

 主人公の歌人は、心中事件を起こした太宰治や有島武郎や初恋の人を引きずっていた若山牧水を思わせる。

この作品に登場する短歌は下手くそ。なぜなら、トリックを成立させるために説明的で余韻がないものになってしまっている。

モチーフもすごく考えて、とても作り込んでいく作家。同じ雑誌『幻影城』出身の泡坂妻夫も似たところがあるかも。

ただし、連城三紀彦は長編があまり良くない気がする。短編の方がお薦め。

自分では、読まないような作家を知るためにもぜひ、みなさん課題本はどんどん推薦してください。

というお話を伺いました。

推薦者の私は、あまり連城さんのあまりいい読者ではありませんでしたが、亡くなってしまったとのことなので、今回まとめて読んでみました。デビュー作ともいえる『変調二人羽織』の書き出しはとても素晴らしかったです。古い時代を扱った作品は耐える女性なども登場し、やや暗い印象がありますが、現代ものの作品には強い女性も出てきたり、ユーモラスな表現もあって、とても上手な作家なんだなと思いました。

同じ『幻影城』出身の泡坂妻夫の作品は大好きだったので、同じ雑誌出身のこの作家の作品も読めて良かったです。

『恋文』で直木賞をとったので、恋愛小説家のようなイメージが強かったのですが、やはりミステリー作家でしたね。

T氏の『幻影城』を全部持っているという話にはすごい!と思いました。

残念ながら、亡くなってしまいましたが、連城三紀彦さんの作品はしっかり、心に残すことができました。ご冥福をお祈りします。

レポート:舞浜嵐子


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