
山内マリコ 『ここは退屈迎えに来て』
幻冬舎 2012年
地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。フレッシュな感性と技が冴えわたるデビュー作は、R-18文学賞読者賞受賞作「十六歳はセックスの齢」を含む連作小説集。
=例会レポート=
一気に寒くなった10月最後の木曜、男性4名、女性13名、計17名の参加でした。隣の部屋から漂ってくる美味しそうな匂いに気もそぞろになりながらの例会でした(隣は調理室だった模様)。
初推薦、みんなつまらなかったらどうしよう・・・と緊張しましたが賛否両論、色々な意見が聞けて心が躍りました。
皆さんの感想は、きれいに真っ二つでした。今回偶然にも席順が、わからない・好きではない派とよかった派に分かれていてそれもなんだかおもしろかったです。おも本のみなさんに地方出身者が意外と少なくて驚きました。
図書館では90人待ちもざら(!)ということで、今密かに話題の本です。
<わからない、好きではない>
椎名の魅力がわからない。なぜ皆椎名に憧れているのかわからないという方が多かったです。
・自分は小説をフィクションの世界や小宇宙に連れて行ってくれるのを期待して読むが、これはすごくリアルな話である。リアルなことが書いてある本を、わざわざ買って読むということが分からない。この本を支持している若い人たちに、「本を読む」ということはどういうことなのかを聞きたい。読んでも何も残らない。
・交換日記を読んでいる感じ。どうしてヒットしているのかわからない。
「なんとなく、クリスタル」と似ている。
・頭で書いている感じで冷めている文章。
・表現の仕方が人が変わっても一緒で書き分けの効果がでていないと思った
椎名には、みんなが思い出す存在としての格がない。
第三章のユウコの設定には別にびっくりしない。この本を読んで、作者も読者もそれぞれ居場所があるんだなと思った。
・語りすぎで、読者が想像する余地がない。
・国土沿いの文化について、これはもう知っているよ、と思った。
・なにもないながらもそれでも地方性があって、おもしろいんじゃないかというもっと地方に対して、愛のある話を期待していた。リアルの、その先を書いて欲しい。地方に対して前向きな解釈をしたいという自分の気持ちが挫折させられた。
・男目線からすると、ふーんそうなのね、という感想。狭いレンジには受ける小説だと思った。
・男の人に幻想を抱いている感じがした
などなど、椎名バッシングと厳しい意見が続き、どうなることかと思ったのですが、
その後は好意的な意見が相次ぎ、推薦者としてはほっとしました。
<よかった>
次も読みたい、第三章、アメリカ人とリセエンヌがおもしろかったという意見がいくつかありました。ブレンダちゃんが人気でした。
・きびきびした文章でさらさらと読める
・色々考えるけど、すべて机上の空論で終わる。けど別にいいというのが自分に似ていると思った。教訓が含まれていて、ためになった
・20-30代がみている地方の風景はすごく写し取っていると思う。気の利いた書き方をする人だと思った。地方の中でも県庁所在地とかではなくて郊外の話だと思った
・椎名の使い方もうまかった。
・田舎にいると退屈な面があって、閉塞感はすごく感じる。誰か迎えに来てほしいというのはすごくわかった。
・女性が書いたからかすごく現実的に、シビアに物事を見ている。椎名は一人ひょうひょうと生きている。
・地方都市の生活はつけたしに過ぎない、と思った。女の子たちのばかばかしさ、愚かさ、ピュアさを椎名くんを通じて書いている。椎名は自分がもてると思っていないし、別にかっこよくない。皆が勝手にヒーロー化しているだけ。でも、それでかまわない。椎名がすごくかっこいい必要はない。この本が好きかどうかは、少女漫画が大人になっても好きかどうかであると思う。
・最後の章で、女の子のセックスの考え方がだいぶ肉食化していると感じた。
・普通の生活をだらだら書いているものが好き。自分と同じ考え方をする人でなくても共感できて、おもしろかった。
・会話もよく書かれているし、21世紀の風俗がうまく書かれている。さわやかな性の話で、読みやすかった。
・30代から高校生まで、どんどん若返っていく構成もよかった。
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