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2023年11月の課題本『徴産制』

2023-11-29 10:03:25 | ・例会レポ

 

2023年11月24日 19時〜 参加者 8人

新潮社の「女による女のためのR-18文学賞」を受賞してデビューした田中兆子さんの作品。田中さんの作品は2018年の11月の例会で、『甘いお菓子は食べません』を取り上げ、今回は2回目となります。
「2092年。新型インフルエンザの蔓延により10代から20代女性の85%が喪われた日本では、深刻な人口問題を解決するため、国民投票により【徴産制】の施行が可決された。住む場所も立場も異なる五人の【産役男】たちが、産役によって見つけた「生きる意味」とは。前時代的な価値観を笑い飛ばし、未来に託すべき希望を描く感動作」と新潮社のサイトで紹介されています。

★参加者の感想★
・性差よりその人の生き方が大事なんだと感じた。扱いやすい国民になっていくことを思うと怖さもあった。
・今の日本の問題を取り上げて、ディテールがしっかりしている。5人の中ではショウマにシンパシーを感じた。自分もそうなりそう。
・着想が見事、これで短編を5つ書き上げる筆力に感服。未来社会で生物学的男が出産可能になったからといって、スカートを履き化粧して「女」言葉を使うようになる設定に違和感を覚えた。性的指向と性別表現(「らしさ」の性)を混同している印象を受けた。
・漫画『大奥』に似ているディストピア小説だが、タケルの章が一番ディストピア感があった。ジェンダー云々には自分は懐疑的なところもあるが。
・M・アトウッドの『侍女の物語』などと比べて読んだ。アトウッドは「ずっと暗くて最後に希望」だったのに対して、この作品は「明るく読めて最後に絶望」だった。
・コロナのことを考えながら読んだ。人生を豊かにするのは自分次第、ジェンダーを超えていくことができるんだとハルト、キミユキ、イズミの章を読んで思った。
・どういう立ち位置で読めるのか…ともやもやっとした。目的がそこにあるのかどうかわからないけど、怖さをもっと強調してもよかったかも。

★講師から★
面白い感想が聞けた。論理を情痴で包んだところが小説のうまさになっている。現実のさまざまな問題に沿って5人の主人公を設定し、それぞれの人物造形が巧みで読ませる。国が「男らしさ」を押し付けたのが徴兵制だったが、それをひっくり返したところもうまい。
こういう作品はただ楽しく読めばいいと思う。R-18賞からは得難い作家がたくさん出てきている。つまらないと言って芽を摘むのではなく、褒めて育てることが大事。笑えば福が来るから、笑って読もうね。

★まとめ★
推薦者がこの小説を読むのは2回目でした。1回目はジェンダー問題に目が行きがちでしたが、2回目はジェンダーは材料なんだと思え、その向こう側にある人間や社会の問題に目が向きました。また作品としてはとんでもな設定とリアリティのバランスの良さが魅力だと感じました。例会でも指摘されていましたが、70年後の未来の人の意識が今とあまり変わらない点はクエスチョンマークかもしれませんが、SF作家じゃないんだからいいじゃないか、と。
もっとおもしろい作品を書いてほしい作家だから、褒めますよ〜。おもしろかった!


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