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2023年10月の課題本『十五少年漂流記』

2023-11-19 23:04:06 | ・例会レポ


講師含め11名
うち初読2名未読1名でした。

☆出席者の感想☆
・冒険小説として楽しめる。
・子供のころに少年少女文学全集で読んだ。
・〈少年〉が〈漂流する〉のがぐっと来る。
原題が「二年間の休暇」だったら
こんなに読まれなかったのでは。
・子供向けかと思ったら意外に面白い。
・子どものころの夢に訴えかける。
子供時代の秘密基地を思い出す。
・善い人悪い人が分かり易い。
・動植物の描写の詳しさは19世紀の自然科学や博物学への関心の高まりなのか。
・帝国主義の発展の時代は子供もフロンティアスピリットがあった。
・大人になって読むとかなり違和感がある。
大人が読むべき話ではない。
・文明社会に戻るのは結局大人の力によるのがつまらない。
・8歳くらいの子供もいるのに母親も家も恋しがらないのは不自然。
・椎名誠訳ではジェンダーやレイシズムへの配慮があった。
・紅ヅル=フラミンゴを食べるなんて!
・学校や勉強に縛られずに過ごした日々、
「二年間の休暇」というタイトルは正しい。

☆講師のお話☆

 海外の少年少女小説はほとんど読んでいない。
この作品も初めて読んだのだが
〈組織論〉としても読めることに感動した。
組織のなか人と人とがどう距離感をつかみ付き合っていくのか、
他人と自己の関係をうまく書いている。

「十五少年漂流記」は
昭和26年に波多野完治が訳したことで広く読まれるようになった。

本には読む時期というものがある。
読む年齢によって感想が違うのは当然で、
たとえ抄訳であったとしても大人になってからの読み方がある。
そこにこそ成長があるのだ。
  
推薦者欠席のため幹事がまとめました。
推薦者からの熱い推薦文はこちら ↓


『十五少年漂流記』推薦者から一言
(2023.10.28)


●SF少年だったぼくは、自然の流れで「SFの父」H・G・ウエルズとジュール・ヴェルヌの作品を読むようになった。学校図書室で少年少女向きにリライトされた二人の作品(ヴェルヌは学習研究社の全集だったと記憶する)を読みふける。小学校の頃だと思う。時系列で読書歴を考えれば、ウエルズとヴェルヌの作品を読んでいた時期は、SF黄金時代と呼ばれる50年代に活躍した欧米作家(ハインラインやアシモフ、クラーク、ブラッドベリら)、の作品や、深く入っていく日本人作家の作品を読む前の、つまりジュブナイルから本格的な大人向けSF作品への移行期に相当する。

●ウエルズよりはヴェルヌの方がお気に入りとなる。理由ははっきりしないが、手頃なテキストとして学習研究社の全集があり、まとめて読破できたせいかもしれない。

●ヴェルヌのSF小説は、秘境探検ものやロードノベル的な「冒険小説」的要素が特徴。それらはSF色が強い『海底二万里』『地底旅行』『月世界旅行』、「冒険・探検小説」色が強い本作や『八十日間世界一周』などに大別される。

●ヴェルヌの作品でぼくのお気に入りは、『地底旅行』とこの『十五少年漂流記』。前者の圧倒的リアリティ(地底海浜辺の巨大キノコの群生シーンは何度悪夢となって推薦者の安眠を妨げたことか)と、複数の個性豊かな少年たちが時にいがみ合い、時に協力し合って絶海の孤島で生き抜くという本書から受けた影響は大きい。

●本書のテーマは単純、簡単。ラストの一文、「この少年たちが国に帰ったときには、小さい少年たちはほとんど大きい少年たちのように、大きい少年たちはほとんどおとなのようになっていた」が示すように、「少年の成長物語」。「艱難汝を玉とす」の言葉どおり、知恵と勇気と団結力で困難を克服した少年が立派に成長したというお話だが、そこに説教臭さはなく、すぐれたエンターテインメントとして完成している。「困難を克服する過程」=孤島でのサバイバルのエピソードの面白さこそ本書最大の魅力。小学生の頃の推薦者は友だちと遊ぶことや、団体生活が苦手で、一人机に向かって何時間でも本を読んでいることに無上の喜びを感じていたが、そんな推薦者に対し母親は、ことあるごとに「外に行って遊んできなさい」と文句を言っていた。友だちや知り合いに出会わないよう、自転車で家を出た推薦者が向かう先には、少年たちが暮らす洞窟を連想する半ば朽ちた防空壕跡や、クリークに沿っての探検行を夢想させる木々の生い茂る山が残っていた。

●加えて、普通の読者なら「犯人」についてはすぐに気がつくだろうが、「なぜ少年を乗せた船が漂流したのか」という謎解きが隠れたモチーフになっている。

●フランス人のヴェルヌは自国民であるフランス人を主人公に据えた作品と、他国民を主因公に据えた作品が混在する。本書の登場人物はフランス人、アメリカ人、イギリス人と多様だが、主人公の兄弟はフランス人としている(ちなみに、『海底二万里』はフランス人、『地底旅行』はドイツ人、『月世界旅行』はアメリカ人、『八十日間世界一周』はイギリス人が主人公)。人柄の良さで仲間を統率していくフランス人、現実的で沈着冷静、判断力に優れたアメリカ人、尊大な植民地主義者のイギリス人という三者三様の構図は、当時のスタンダードな人種観か。

●本書が発表されたのは1888年、日本は明治21年。漂流した孤島での生活は、さながら19世紀末の植民地主義全盛期の西欧文明社会のコピー。忠実な召使いという位置づけの黒人水夫の少年に選挙権を与えないところも当時の西欧人的世界観・人種観の表れ。

●秘密基地作りは男の子にとっての永遠の憧れ。

●孤絶した地にあって創意工夫で生き抜くサバイバルものは、ロビンソン・クルーソー以来の西欧伝統テーマ。やがて舞台は地球を離れ宇宙にまで広がり、映像作品『宇宙家族ロビンソン』や『オデッセイ』(原作は『火星の人』)などを生むに至る。

●孤島に漂着しサバイバル生活を余儀なくされる前半と、大人の漂着者と出会ってからの後半に大きく分かれている。生きるために何をすべきか――前半の自然相手のサバイバルから一転、後半では敵となる悪人たちを容赦なく殲滅する血なまぐさい展開となる。

●後世の作家たちに与えた影響は大きい。例えば、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』では、ヴェルヌの作品がドクとクララの恋の小道具となっている。二人の間に生まれた兄弟の名前もジュールとヴェルヌというおまけ付き。

●ノリピーこと酒井法子は歌う。「♪いつでも/心に冒険を/夢が聴こえるよネ/自分の速度(ペース)で/近づけばいいよネ」(『夢冒険』)。高齢者になったぼくたちには、この物語の少年たちのような「冒険」は、体力的にも気力的にももうできないだろう。それでも「心に冒険」を失うことなく、ある日訪れるかもしれない「その日」に備えていきたいと思う。「備えよ、常に!」、

 


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