とあるスナックで
コー
ここに「アメリカの大恐慌」第5版 マレ-・N・ロスバート 著 岩倉 竜也 訳 の訳者あとがきを張っておこう。
この本の中で、オーストリア経済学派という言葉が随分出ていたが、日本にしっかり紹介されているんだろうか。研究する必要があるんではないんだろうか。
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訳者あとがき 本書は、Murray N.Rothbard, America's Great Depression 5th Edition (Ludwig von Mises Institute, 2000)の日本語翻訳版である。1929年にアメリカのウォール街での株価暴落に端を発して世界恐慌が起きたことは、中学生でも知っている。経済を自由放任にしておくと必ず恐慌が起きる。それを防ぐには政府が経済に介入しなければならない。そしてアメリカでは1933年からフランクリン・ルーズベルト大統領がニューディール政策を行い、政府が大規模な公共事業に支出することで、大量の失業者を救済し景気を回復させた。これらの事は事実として大抵の人が知っているだろう。「常識」であるとも言える。 ではなぜ今更「世界恐慌」の本を翻訳出版するのか。中学生の教科書にすら載っているこの「常識」は、実は「嘘八百」でしかないのだ。(コー注:またまた教科書でウソを書いている。<やつら>の常套手段なんだな。大概のことは本当のことを書き、肝心なことは、何気なく分からないようにウソを書く。教科書に書いてあれば大概の人は騙される)本書はそれを証明しているので、是非多くの人に読んでもらいたいと思ったのである。 訳者は大きく2つの点から嘘八百だと言っている。1つ目は、経済を自由放任にしておけば恐慌が発生するので政府が介入しなければならないというのが嘘だということ。もう1つはニューディール政策を行ったのはルーズベルトだが、ニューディール政策の元になる政策をアメリカで初めて行ったのはフーバー大統領であったということだ。 本書の第Ⅰ部で、ロスバードはまずミーゼスが確立したオーストリア学派の景気循環理論を説明する。景気循環は自由放任の市場経済では生じない。一部の分野で景気が悪くなってもその分他の分野の景気が良くなるのではないのか。経済全体で景気が変動する原因は市場経済の外部にある。政府の経済への干渉が景気循環を作り出しているのだ。政府と銀行が信用を拡大し、お金が楽に手に入る事により、本来であれば投資されない分野にも投資されるようになる。その結果として景気は一時的に上向いて好況になるが、信用拡大によって生じた資本構造の歪みはいずれ是正されないといけない。この歪みを是正する過程が不況である。ロスバードは次いでこの理論に対する批判、特にケインジアンの批判に反論する。後者についてはケインズ経済学への反論にもなっている。 第Ⅱ部と第Ⅲ部で、ロスバードはアメリカの大恐慌がオーストリア学派の理論通りに推移したことを示している。第Ⅱ部では1929年の恐慌に至るまで、1920年代にフーバー大統領が関与してアメリカで信用が拡大したことを、そして第Ⅲ部ではフーバ大統領の不況対策(価格・雇用・賃金の維持、輸入・移民制限など)が逆に不況を悪化させたことを明らかにしている。ルーズベルトのニューディール政策については触れられていない。規模こそ違えどフーバーが既に実施しているからだ。 ロスバードは特に第Ⅱ部で説明のために統計数字を用い、1920年代の好況が政府および銀行による信用の拡大に起因することを示している。しかし統計数字から理論を証明しているのではない。経済学において、統計数字は過去の実績にすぎず、理論を導くものではないのである。オーストリア経済学がケインズ経済学やマクロ経済学と大きく異なる点の1つがここであり、前者に言わせると後者は方法論的に間違っているのだ。 本書は初版が1963年に出版された。以後改版を重ね、第2版が1972年、第3版が1975年、第4版が1983年、第5版が2000年に出版されている。非常に息の長い書籍である。裏を返せば本書の内容が世間に浸透していないという事でもあるが。訳者は第5版の原書しか持っていないため、残念ながら他の版と内容を比較することができない。しかし各版のまえがきを読めば、出版当時の時代背景をうかがい知る事ができて面白い。そういう意味もあってまえがきをすべて訳出しておいた。最初は読み飛ばしてもかまわないが、本文を読んだあとに読み返してみて欲しいと思う。 政府の政策で景気を良くすることが出来るというのは幻想でしかない。政府がすべきことは経済への介入を止め、自由な市場経済に対する規制を行わないことだ。ところが日本をはじめとする今の先進諸国の経済政策はどうであろうか。「アメリカの大恐慌」を反面教師にすれば、その結果は既に目に見えている。
2016年2月 岩倉竜也
コー
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「政府の政策で景気を良くすることが出来るというのは幻想でしかない。政府がすべきことは経済への介入を止め、自由な市場経済に対する規制を行わないことだ。ところが日本をはじめとする今の先進諸国の政策はどうであろうか。「アメリカの大恐慌」を反面教師にすれば、その結果は目に見えている
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うーん、これを自信をもって行う政治家はいるんだろうか。国民としては、こんなに苦しんでいるんだから、政府が何とかしてくれ、と思うんではないだろうか。