「ひろっこ」
【生産地】湯沢市・県内全域
【特徴】アサツキの若芽。8月下旬~9月上旬に植え付けし、12月の積雪後まもなく収穫を開始する。収穫は雪融け直前まで行われる。雪の下で萌芽した白い芽を、深い雪を掘り収穫する。
【食味】雪の下で糖度が増す、早春の味の代表格。雪消え後の青い若芽も青ひろっことして食する。
【来歴】大正時代に旧須川村から栽培がはじまったとされる。
【時期】12月~4月
*https://tradveggie.or.jp/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e4%bc%9d%e7%b5%b1%e9%87%8e%e8%8f%9c%e3%83%bc%e7%a7%8b%e7%94%b0/#i-6 より
雪深い1月頃から早春の野菜として、県内で出まわりはじめる「ひろっこ」
それは、1メートル以上の雪の下から掘り出されるアサツキの若芽です。秋田では、黄白色でより白っぽく、曲がっている細身のものが好まれます。
山形や岩手、福島でも食されていますが、陽にあてて青くしたものなど、その形態は地域によって違っています。名称も「ひろっこ」「きもど」「しらひげ」など様々ですが、秋田は「ひろっこ」。その語源は秋田にありそうですね。
また、雪融け後に県内各地で天然のひろっこを穫って食する地域も多く、ひろっこ穫りという春の楽しみにもなっています。
◆ひろっこの栽培の始まり
元々県内の山野に自生するアサツキですので、雪融け後の春には山菜として古くから食されていたものと考えられますが、ひろっこが栽培されるようになったのは、大正時代に旧須川村(湯沢市)の田畑集落の佐藤兵吉氏が子どもの頃のケガがもとで身体が弱かったことから、冬野菜のひろっこが身体によいと聞き、種球を入手し自家用に栽培を開始したのが始まりとされています。親類縁者に分けている間に徐々に評判になり、相川地域全体に広がり、湯沢市や秋田市への行商でも販売されるようになり、「湯沢ひろっこ」という特産物になりました。(1987年農業秋田より)
はじめの頃、種は野生に自生しているアサツキの種球を用い、生産者はよいひろっこの種球を求めて、近隣の里山から山形周辺にも出かけました。特に開拓地や鉱山地帯付近で自生のアサツキを入手していたようです。しかし、徐々に入手が難しくなっていきます。そのため種球を自家栽培するようになり、その中で系統選抜がすすめられていきました。
昭和35、6年には、本格的な出荷が始まり、昭和50年代には農協を通じた出荷も開始されました。品種は、それまでに集めてきた秋田系在来、山形系、福島系などから極早生系、早生系、中生系、晩生系の4つを使い分けて出荷されました。
深い雪の下から掘り穫るひろっこの栽培は大変難儀なものと知られていますが、その雪の下にするまでの課程でも大変な手間がかかっています。その一連の作業をご紹介しましょう。
◆ひろっこの栽培
6月 ひろっこの畑に美しい花が咲いています。これを見るとなるほど、アサツキ、でも、ここでひろっこができるわけではなくひろっこを本畑に植え付けるための種球(鱗片)を採取する種取用の畑です。本畑より粗植で栽培されます。この種取畑は本畑面積の3割を必要とします。
ここで、大きくなった球根を花ごと掘り穫ります。
掘り穫った球根のついたアサツキを束ねて8月まで軒下などで陰干しにします。
8月に本畑に種球を植えつけます。そしてこれが11月のひろっこ畑です。秋田の人が好む細身で柔らかいひろっこにするためと、作業性のため密植で栽培されます。
秋の様子は、まさにアサツキ。青々としていますが、これは雪の下になり枯れてしまいます。
厚い雪の下の地中は凍ることもなく、一定の地温が保たれます。そこで新たな萌芽が生長を始め、ひろっこになります。
2月 収穫は12月から4月頃までで、1メートル以上の積雪を除雪し、土の中からひろっこを掘り穫ります。
土中のひろっこはこのとおり、たくさんの根と土だらけです。
これを、綺麗にするためにまだまだ作業は続きます。
泥を落とし、水で綺麗に洗います。
それから、ひろっこを一つ一つ丁寧に根切りします。
右手の人差し指に専用のカッターがついています。細かい作業でこれは概ね高齢者の仕事です。
「ストーブにあたりながらできるがらなんも苦でねえよ」と生産者さん。
◆ひろっこはアサツキかノビルか
ひろっこについて「野蒜(ノビル)」か「アサツキ」かと話題になることがあります。ホームページ、文献などでも様々な表現がされています。
語源を辿れば「蒜(ひる)」というのはにんにくも含めたユリ科のネギなどの古語で、食べると辛さでヒリっとすることから「ひる」と言われたとのことです。 例えば由利、秋田、南秋付近まで栽培されている「サシビロ」という春の青ネギがありますが、その語源もこの古語によるものです。また、これは「カリビロ」とも呼ばれ、根を掘らず、根本から刈って収穫する「蒜」です。 (写真は野蒜のタマビロ)
そして「ひろっこ」は、秋田弁で小さい“蒜”、またはいい“蒜”という意味でしょう。秋田弁では小さいもの、いいものに愛称として「こ」をつけます。 そのため、いわゆる“たまびろ”の“野蒜”も“アサツキ”の若芽も「ひろっこ」と呼ばれています。地域によっては、“サシビロ”も「ひろっこ」と呼ぶ地域があるようです。(写真は野蒜のタマビロ)
つまり、「ひろっこ」は秋田では、小ぶりなネギ属やその若芽の総称のようなものでしょう。またややこしいことに、「たまびろ」と「アサツキ」の両方を「野蒜」と称する地域もあるようです。様々な地域の呼称があり、文献でも時々「ひろっことは野蒜」のことである。」と紹介されているのはこのためではないかと思います。 しかし自生のものをのぞき、一般に販売されているあの黄白色の「ひろっこ」は、ほとんどが県南地方などで雪の下から掘り出した栽培のアサツキの若芽ですから、一般には「アサツキ」と紹介した方がよいのではないでしょうか。
*https://www.akikyo.net/%E3%81%B2%E3%82%8D%E3%81%A3%E3%81%93/ より
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