環境法令ウオッチング

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第166回通常国会の議論から22 自動車NOx・PM法改正案 その6 微小粒子状物質の環境基準策定

2007-05-01 05:56:35 | 大気汚染
2007年5月1日 
 粒径が2.5マイクロメーター以下の微小粒子状物質、いわゆるPM2.5については、粒径が小さいということで、浮遊粒子状物質の中でも、特に呼吸器症状や循環器症状などの健康影響を示唆する知見があります。アメリカでは、1997年に環境基準が設定された後に、昨年9月に見直しがされております。また、EUでも、現在、環境基準設定に向けた検討が進められています。さらに、世界保健機構では、、昨年の10月にPM2.5を含む浮遊粒子状物質のガイドラインが策定されています。
 国内でも、平成13年5月に、自動車NOx・PM法の制定に係る参議院環境委員会の審議において、「PM2.5については、調査研究を急ぐとともに、諸外国の知見、動向を踏まえ、できるだけ早期に環境基準を設定すること。」と附帯決議がなされました。また、現在進行中の東京大気汚染訴訟の和解交渉においても、重要な争点とされています。

 現在、大気に関する環境基準は、二酸化窒素、二酸化硫黄、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、光化学オキシダントや有害物質など合計10種類の物質にいて設定されています。具体的には、昭和45年に一酸化炭素、昭和47年に浮遊粒子状物質、昭和48年に二酸化硫黄及び光化学オキシダント、平成9年ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン、平成11年にダイオキシン類、平成13年にジクロロメタンに関する環境基準が設定されました。

1.二酸化窒素環境基準緩和の経緯
 『非常に気になるのが二酸化窒素の部分であります。二酸化窒素は、昭和53年7月11日にそれまでの基準よりも緩く改定されたということでありますが、その経緯はいかがでありましたでしょうか。』(近藤昭一代議士/民主党)

 『委員御指摘のとおり、二酸化窒素に係る環境基準、当初、昭和48年当時の科学的知見に基づきまして設定されておったものでございます。その後、二酸化窒素の健康影響に係ります内外の科学的知見が充実してきたことから、昭和52年、当時の環境庁長官から中央公害対策審議会に対しまして、二酸化窒素の人の健康影響に関する判定条件について諮問をしたものでございます。この環境基準というのは、先生も御案内かと思いますが、公害対策基本法の第九条の中で、環境基準については常に適切に科学的判断が加えられて必要な改定がなされなければならないとする趣旨の規定がございまして、この趣旨にのっとりまして、環境庁長官から中央公害対策審議会に対して昭和52年に諮問したところでございます。審議会におきまして、この諮問に基づきまして、その時点の最新の科学的知見を検討、評価いたしまして、その審議結果を踏まえまして、昭和53年3月、環境庁長官に答申をしたところでございます。環境庁におきましては、この答申を踏まえまして、国民の健康を保護する上で維持されることが望ましい水準として二酸化窒素の環境基準を決定しました。これが、先ほど先生御指摘のとおり、昭和53年7月に環境庁告示をしたところでございます。』(環境省水・大気環境局)

 『私の手元にある、1977年3月28日ですか、これは環境庁長官のコメントでありましょうか、「二酸化窒素の環境基準は「一時間値の一日平均値が0.02ppm」と1973年に定められた。しかし、諸外国の基準値と比べると厳しい値であったため、その達成が難しいとされ、大気汚染対策の重点がSO2からNOxに移行しはじめた70年代、見直しを求める意見が経団連や日本鉄鋼連盟などから出されるようになった。」こういうようなコメントが出ているのでありますが、いかがでありましょうか。』(近藤昭一代議士/民主党)

 『先ほど申し上げた科学的知見という点もございましたし、今先生が御紹介をされた、さまざまな議論があったということも事実として承知をしておるところでございます。一方で、繰り返しになりますけれども、科学的な観点から議論をしていただきまして、最終的に検討、評価をしていただいた結果を踏まえて、この指針値というのを答申いただいたというところで、その指針値をもとに環境基準の改定を決定したということでございます。』(環境省水・大気環境局)

2.PM2.5の環境基準策定
 『PM2.5の環境基準策定に向けて環境省の取り組みをお伺いしたいと思うわけでございますが、これはもう参考人質疑でも、またこれまでの審議でも多くの先生方が御指摘をされているところであり、私もこのPM2.5の環境基準設定は早期に行っていくべき大きな課題だと思いますが、いかがでしょうか。』(江田康幸代議士/公明党)

 『PM2.5につきましては、環境省におきまして、現在、各種基礎調査研究を実施しているところでございまして、日本国内におきます健康影響に関する科学的知見の集積に鋭意努めているところでございます。また、委員御指摘のありました、米国、EU、WHOにおきます動向なども含めまして、諸外国の知見に関する情報収集をも行っておるところでございます。これらの科学的知見や情報を踏まえまして、このたび、今後の大気環境保全対策の検討に必要な基礎資料を得ることを目的といたしまして、学識経験者などから構成されます検討会を環境省内に設置いたしまして、PM2.5に関する健康影響評価を行うことを予定しておるところでございます。現時点では環境基準を直ちに設定するという状況ではございませんが、今後とも、これらPM2.5に係る健康影響評価の検討につきまして、精力的に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。』(環境省水・大気環境局)

3.環境基準策定までの時間
 近藤昭一代議士(民主党)は、二酸化窒素の環境基準が緩和されたときのスピードについて質問したうえで、PM2.5の環境基準設定に関する知見が得られるまでの時間がかかりすぎではないかとの質問をしました。
 
 『それで、先ほどのPM2.5の部分につきまして、PM2.5というとディーゼルの排ガスからも出てくるんですかね。そうすると、私はちょっとおもしろいなと思うのは、東京都がディーゼル車の規制をして、石原都知事がそこで頑張っておられた。ディーゼル車の規制をされた。一方で、過去の、いや、それは悪いとかそういうことではないし、知見がそうだと。でも、当時環境庁長官であった石原長官が諮問をして、その結果、知見が出たけれども、そういうふうに環境値が緩められた。PM2.5についてどうでしょうか。私はやはり随分と時間がかかり過ぎているというふうに思うんですね。これについて、もう6年以上もたっている。今後どうしていかれるのか。大臣、いかがでありましょうか。』(近藤昭一代議士/民主党)

 『PM2.5につきましては、委員御指摘のように、参議院の附帯決議がございました。その附帯決議の内容も踏まえながら、環境省において各種の基礎的調査を実施してまいっております。日本国内におけるPM2.5の健康影響に関する科学的な知見を集めるために鋭意努力をいたしているところでございます。この附帯決議前からでもございますが、平成11年には疫学調査、動物実験あるいは暴露調査などの調査を開始いたしております。平成12年には、大気中のPM2.5質量濃度測定方法の暫定マニュアルを策定し、そして平成13年に長期疫学調査を開始いたしておりますが、長期疫学調査は5年間の実施が必要であるというようなことから、最終年度は平成18年度ということになっているわけでございまして、18年度に本調査研究の実施が終了をする、検討の状況はそのような状況になっております。また、米国やWHOなどにおける環境基準の設定に関する動向、昨年からことしにかけての動きがございます。これらも含めまして、諸外国の知見に関する情報も収集をしているところでございます。これらの科学的な知見や情報を踏まえまして、今後の大気環境保全対策の検討に必要な基礎資料を得ることを目的としておりまして、長いことかかってまいったということも、それらの資料の収集もかなり進んできたところから、実は学識経験者などから成ります新たな検討会を省内に設置して、PM2.5に関する健康影響評価を行っていくというようなことを、私自身はことし手をつけたらどうかという考えでおります。』(若林環境大臣)

 『知見には時間がかかる、ただ、それにしては先ほど申し上げた二酸化窒素については随分と早いなという思いがするんです、大臣。それで、今最後に大臣、ことし手をつけたらどうかなということでおっしゃってはいただきました。手をつけるというか、今知見が始まって、既にある種の手はついているんだと思います。ぜひ、実現に向けて大臣のリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思うんです。私は、冒頭申し上げましたように、今回の法改正は、ゼロではない、少しは前進するのかもしれませんが、どうもそこに本当に実効性があるのかということを大変に危惧しております。そういう意味で、ぜひきちっと対応していただきたいですし、これにはスピードも必要であります。何か、緩めるときには妙にスピードが速くて、厳しくするときにどうぞ頑張っていただきたいというふうに申し上げるしかないような気がしております。』(近藤昭一代議士/民主党)

4.東京大気汚染訴訟等との関係
 『・・・・・・行政の不作為による公害加害責任を認めるかとなったとき、今いみじくも大臣は首を横にお振りになられましたけれども、窒素酸化物に比べて粒子状物質に対する国の規制がおくれたために、今回、大気汚染の改善がおくれてきたんじゃないか、私はそう考えるわけであります。そう考えると、今、首を横にお振りになられましたけれども、公害加害責任をやはり認めていかないとこれは前に進めない、私はそう考えます。・・・・・・国が応分の負担をするということの提案について、環境省も検討をしていくべきではないかというふうに私は考えるわけですが、大臣、いかがですか。』(田島一成代議士/民主党)

 『東京都が腹構えをして、ここまでぜんそく患者の医療費について考えていくということを申しておりますのは、実は、排気ガスと直接因果関係があるないということと全く関係なく、具体的にわかりやすく言えば、小笠原諸島であろうと青梅の多摩の地域であろうとそういうぜんそくの患者についてはみんな医療費を負担しましょうというようなところまで含んだ東京都の提案になっているわけでございます、これは極端な話ですけれども。そういう意味で、先ほど来からお話し申し上げていますように、主たる原因が窒素酸化物などの排気ガスによるものであるということがはっきり認められないものについて、法的な責任を負うという意味合いを持つ給付というのはするわけにまいらないという原則の中で話し合いを今しているところでございます。』(若林環境大臣)

 『西淀川の判決以来もう5連敗、見事に敗訴し続けてきたところであり、もう既に責任は認容されているわけでありますけれども、原告から要求されている一時金であるとか謝罪に応じる、もうそろそろ覚悟を決められていいんじゃないかなと思うんですけれども、いかがですか。』(田島一成代議士/民主党)

 『これまでの訴訟につきましては、原告に理解をいただき、損害賠償を破棄して、道路管理者は道路環境対策を実施するという内容で和解を原告と結んでおります。今お話しの、今度は東京訴訟についてでありますが、裁判長から、和解の可能性を探るために各当事者の話を聞きたいとの発言がありまして、これを受けて、現在、関係省庁と相談の上、解決点を探るべく、原告との話し合いを真摯に進めているところでありまして、委員のおっしゃられることもこの話し合いの中に加味しながら結論を模索していきたい。いずれにしろ、道路管理者としては、これからは、できることは道路構造とかそういったものを整備して、交通流の円滑化でありますものですから、今後とも、原告の要望や裁判所の意向を踏まえて、環境対策に何ができるかということを、誠意を持って検討と言うとこれはうまくないようでありますので、本気に努力をしていく、こう申し上げて、答弁にさせていただきたいと思います。』(国土交通大臣政務官)

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