ニュージーランド移住記録「西蘭花通信」

人生の折り返しで選んだ地はニュージーランドでした

ガブリエル後の風景

2023-02-17 | 経済・家計・投資
サイクロン被災者支援のクラウトファンディングが目標1.7億円目指して奮闘中。12時間で9,000万円到達。至る所での本気の支援が感動ものです。

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2月12日からNZを襲い始めた超大型サイクロン・ガブリエル。ノースランドからオークランド、さらに南下し東側沿海部を3日間にわたって進み、先々で甚大な被害をもたらしました。災害の全容は不明ながら、犠牲者185人を出した2011年のクライストチャーチ地震に匹敵するのではないかとみられています。今までは欧米やオーストラリア、日本での出来事だった気候変動の影響を、NZが経験した初の事態となりました。

17日現在、死者8人、1万人以上が家を失い、オークランドやホークスベイではそれぞれ4,000軒以上が停電したままです。ギズボーンは浄水場の故障で今朝から水道水が一切使えない状況に陥っています。さらに通信機能の喪失、道路や橋の寸断で孤立化した地域が多数発生し、空と海から水や食料の供給が始まっています。ホークスベイを中心に4,500人以上と連絡が取れない状況が続いているのは大きな不安です。

連日の報道に接し、家族、家、事業や仕事、家財や自動車、家畜やペットとありとあらゆるものを失った人たちが直面する現実に胸が塞がる想いです。しかし、NZが直面する現実から目を反らすこともできず、報道を追い続けています。1日も早く例え臨時のものであってもインフラが復旧し、被災者が安全な場所で寝起きでき、国の支援や民間の募金、保険金が届いて、国を挙げて復興に向けて立ち上がれるよう祈るばかりです。

災害規模や経済損失が明らかになるまで、まだまだ時間がかかるでしょうが、いずれクライストチャーチ地震との比較や1931年にネイピアに壊滅的な被害をもたらしたホークスベイ地震(死者256人)との比較分析などが出てくることでしょう。クライストチャーチ地震の2011年は国勢調査の年でしたが、地震により2年延期され2013年に実施されました。今年もまた3月7日に国勢調査が予定されていますが、延期になる可能性もあり、最新の人口動態や社会の把握なくしての分析は一段と難しくなりそうです。

すべてが不透明感に包まれる中で、ひとつだけかなりの確率で実現しそうなことがあると感じます。それは住宅市況の底打ちです。市場は2021年の金利反転以降、住宅ローン金利(2年物平均)が3.46%から現在は7%台へと急激に上昇する中、じりじりと調整を続けています。特にオークランドの調整幅は大きく、最新統計(REINZ調べ)によると、1月の平均物件価格(メジアン)は前年比でオークランドは22%の値下がりとなり、オークランドを除く全国平均の9%の値下がりと比べ大きく低下しました。

このタイミングで大災害が起き、オークランドのみならずホークスベイでも多くの人が家を失いました。政府主導で臨時宿泊施設を提供しているものの、数やエリアに限りがあることは明白で、資金があったり保険金受給のメドが立っている人たちが賃貸契約や住宅購入に動きだすことは想像に難くありません。また被災地から比較的被害が限定的だったオークランドに、家と職を求めて一部の人が移って来ることもまず間違いないでしょう。そうした需要が住宅の値下がりに歯止めをかける可能性をみています。

(※公園の大木もばったり)



クライストチャーチ地震後の人の移動の素早さには目を見張るものがありました。移民国のせいか老若男女の決断と実行の速さは想像以上で、家や職を失った人が伝手のあるなしにかかわらずクライストチャーチを離れ、隣国オーストラリアにまで飛んで新生活を築くケースも多々ありました(NZとオーストラリア間は国民同士の居住・就労が自由)。被災の規模は違えど直後に起きた東日本大震災との相違が印象に残りました。

その中で最大の受け皿となったのが、最大都市オークランドでした。すぐに市内の賃貸市場が干上がりました。かつての隣人もその時に転入してきた被災者でした。クライストチャーチの自宅は無傷だったものの、夫婦とも職場が立ち入り禁止地区に指定された市の中心部だったため、ご主人の勤務先がオークランドにポストを用意してくれました。すぐに家を売却し5月には引っ越してきたので、震災からわずか3ヵ月未満の早業です。収入がなければローンが払えず、家には問題がなかったのですぐに売れたそうです。

今回最も集中的被害を受けたとみられるホークスベイ地方は、人口(2022年)18万人と、クライストチャーチの38万人の半分以下で、容易にその地を離れられない農家が多いことも特徴です。しかし、オークランド市内でも家を失った世帯が多数ある上、地方の被災地の勤め人や若い人を中心に雇用機会が多いオークランドに転居する動きが進めば、2011年のような賃貸市場の逼迫が繰り返される可能性は十分にあるでしょう。

2011年は震災後に政策金利(OCR)が0.5%引き下げられ、オークランドは『空からキャンディー🍬が降って来た』 (NZやオーストラリア英語で言う「飴まき」(lolly scramble)。日本の餅まきや餅投げのようなもの) も同然でした。地震の被害がまったくないのに大幅利下げという飴が降って来て、需要増とともに世界金融危機以降低調が続いていた市況に一気に火が付いたのです。今回は高インフレ(直近7.2%)のただ中の上、政府の災害支援や復興需要等で利下げ余地はないでしょうが、賃貸市場の逼迫が契機となり売買市場がゆるやかに底入れしてくるのではないかとみています。さて、どうなるか?

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編集後記「マヨネーズ」 
2023年は景気後退必至とみられていましたが、災害復興需要でリセッションが回避される可能性がグッと上がったのでは?
がんばれ、ホークスベイ
がんばろう、NZ


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