縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

「いづもまがたまの里伝承館」閉鎖におもうこと・・・大量生産・大量販売の行く末を危惧

2022年02月07日 18時12分42秒 | ヒスイ
出雲の観光施設、「いづもまがたまの里伝承館」が閉鎖したそうだ。
写真は「島根観光ナビ」の関連記事より https://www.kankou-shimane.com/destination/20558
 
ヤフーニュースには、天然石ブームの下火とコロナ禍で来館者が激減しての閉鎖と出ていたが、ブームに乗ったりや観光土産としての大量生産・大量販売の玉造りから、小規模な加工販売で生計をたて、もって玉造りの研究と文化の情報発信への転換へと考える私にとって(関係者には気の毒だが)、その転換への嚆矢となってくれたらと切に思う。
 
糸魚川ヒスイが国石に認定されて以来、原石が年々と入手困難になってきているのは何故だろうか?
 
「糸魚川に遊びに来て一攫千金お宝ゲット!」「レッツ、ヒスイハンティング!」と言った類いの商業ベース寄りの情報発信を見るにつけ、情けなくなるのは私だけだろうか?
 
投機目的でヒスイを買い漁る業者は昔からいるが、観光客が拾ったヒスイを見せて「これ幾らで売れますか?!」とも聞かれる。以前は簡単に拾えたネフライト(軟玉ヒスイ)も、いまでは根こそぎ持っていかれて拾えなくなっている。
 
その一方で、糸魚川で買ったヒスイ原石を買い取って欲しいと持ち込まれる岩石がヒスイであった試しはない。
 
来客から以前に買ったものだと、桐箱に恭しく収められた加工傷だらけの勾玉や、着色加工した色鮮やかな加工品を「どうでしょうか?」と見せられると、返事のしようがない。
 
また縄文遺跡から出土したという石笛や勾玉を入手したと鑑定を頼まれれば、一目で現代の加工品とわかるようなものばかりだ。
 
つまりは多くの人にとって、ヒスイ=換金鉱物、または現世利益の得られるパワーストーンと認識されているのだ。そこに文化はあると言えるのか?
 
出雲で売られている勾玉は外国産の「青碧玉もどき」が大半であると聞くが、甲府の水晶に至っては随分と前から外国産。糸魚川ヒスイも何時かはミャンマーヒスイやインド翡翠(グリーン・アベンチュリン)にとってかわられる日が来るのかも知れない。
 
この4月で創立10周年を迎える「ぬなかわヒスイ工房」は6畳しかなく、4人以上の来客では手狭だし、多い時には30人のバスツアー客が訪ねてくるまでになったので、来客にゆったり寛いでもらえるように拡張工事を考えてはいる。が、これから10年、20年先を考えると躊躇してしまう。
 
 

「大首飾り」は武四郎と飯炊き男が作った説?・・・令和の大首飾りプロジェクト

2022年02月06日 09時23分04秒 | ぬなかわヒスイ工房
現存する「大首飾り」と同じアングル写真。
でかいから全体を俯瞰撮影するのは大変だし、色とりどりでもあるから白系・黄色系・茶系の布地に変えて、各玉類が最もバランスよく見える背景色は?と二日がかりの撮影。
 
大森貝塚の発見で知られるモース博士が、「好事家として有名な松浦武四郎を訪ねて古代の遺物を見せてもらった時、武四郎は召使いに命じて鍵のかかった大きな木の箱を持ってこさせ、中から珠をたくさん繋げた大きな首飾りを出して、十字形の飾り台にかけて見せてくれた」と日記に書き残している。
 
来客があると特製の飾り台に「大首飾り」をかけて見せていたようだが、時には首にかけてあげたこともあったのではないだろうか。
そんなことを繰り返していたから、全体で3キロ前後もある「大首飾り」の自重に柔らかい滑石製の勾玉が耐えられず、紐孔が裂けかけていたのですな。
 
モースの日記には召使いとあるが、江戸・明治時代の職種でいえば、口入れ屋から派遣される飯炊き男ではないか。
 
養子が早世して妻にも先立たれて家族運には恵まれなかった武四郎は、身辺の面倒を飯炊き男にみてもらっていたようだから、晩年は経済的に豊かで、悠々自適の暮らしをしていたことがうかがえる。
 
なにやら主人と飯炊き男が主人公の古典落語「化け物つかい」「権助提灯」「試し酒」を連想してしまうが、実は武四郎宅の飯炊き男が器用な釣り好きな若い男で、武四郎は「大首飾り」製作の手伝いをさせていた・・・と、微笑ましい光景を空想をしている。
 
72歳で亡くなる直前まで険しい大台ヶ原を登山していたほどの武四郎といえども、年齢的には老眼であったことだろう。したがって細かい作業の「大首飾り」製作は武四郎だけでは流石に難しく、若くて手先の器用な製作助手がいたのでは?という疑問と、飯炊き男の存在からの空想ですわ。
 
 
 

やりきった!と思ったら旧暦正月だった・・・令和の大首飾り改修プロジェクト

2022年02月02日 07時36分09秒 | ぬなかわヒスイ工房

「平成の大首飾り」を松阪市に返送する前に最終チェックしたら、プラスチック板で保護する前の木工クランプ固定で付着したらしき絹紐の汚れを発見!見過ごすわけにはいかない。

木工クランプのさらなる工夫として、頭と先端を削った釘をチューブで保護して、脱着可能な固定ピン式クランプに改良してみた。このアイデアは、指輪などを固定する時の彫金用バイスから頂いた。
作業効率が大幅UPして絹紐取付け完了。カンペキ!失敗したから改良できるのであって、失敗とは成果の生みの親ですナ。
 
名残惜しくもやりきった感にひたっていたら、ラジオから「なぜか今日はいつもと違う感じがして、普段はやらない朝ヨガをしてきんですが、そうかぁ、今日は旧暦の元旦だからなんですねぇ!」と竹内陶子アナの声が聴こえてきた。なるほどねぇ、と納得して梱包作業。
全部で10グループに分かれた「平成の大首飾り」をグループ毎に保護紙で巻き、動かないように紐で固定、最後にプチプチを上から被せて見えなくなった時、納棺しているような気分になった。さようなら。いっぱいの人に観てもらえよ。元気でな~!と最後のお別れ。
 
宅急便屋に持って行ったら、パーテーションの奥から女子社員が顔を出して「山田さ~ん!」と手を振ってくれた。場所限定とはいえ、俺は人気者なのだゾ(笑)
 
「この宅急便は特別なので、粗相のないようしっかりと頼みまするぞ!」と冗談を言ったら、「なになに?」と大勢でてきて興味津々の様子。
 
スマホで「平成の大首飾り」の写真を見せて仔細を話したら「Y運輸の名誉にかけて!」と、「取り扱い注意」「上乗せ厳禁」「こわれもの」のシールをペタペタと沢山貼ってくれたので、ありがとう!ありがとう!ありがとう!と、ニギニギしく貼ってくれたシールの枚数分の頭を下げて、コメツキバッタと化して謝意を表明。
 
ヒスイ加工職人の仕事は個人所有品が普通だが、公共施設で一般公開される作品は生涯あるかないか。得難い体験をさせてもらった。
 
4月下旬、三重県松阪市の「松浦武四郎記念館」のリニューアルオープンから一般公開予定。伊勢神宮から40分ほどなので、伊勢方面に旅行の際にはぜひとも観てあげてくださいナ。
 
 

 


「十五少年漂流記」の実録版「十六漁師漂流記」が面白い・・・「無人島に生きる十六人」

2022年02月01日 07時24分36秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

酒好きなら大仕事を終えたら秘蔵の一本を開けて祝杯をあげるだろうが、断酒20年超えの私は秘蔵の一冊を再読(笑)

無人島に生きる十六人」は、明治期にミッドウェー近海で難破して、5ケ月間の無人島サバイバルから生還した日本人漁師たちの実話が昭和初期に出版され、いつしか埋もれてしまった児童文学。すなわち「十五少年漂流記」の向こうを張った実録「十六漁師漂流記」が本作である。

古今東西の漂流記収集家でもある作家の椎名誠さんが本作を発見し、自身が編集長をつとめる「本の雑誌」で絶賛したことが縁で20年ほど前に装いも新たに再出版され、現在まで出版され続けるロングセラーとなっている。
「本の雑誌」は、椎名誠さんの高校時代からの仲間たちが「この本のここが面白い!」という手書きのミニコミ誌からスタートした書評誌。不定期刊行、季刊、月刊と成長し続けて今も売られている。この雑誌の事務員だった群ようこさんを始め、常連投稿者の中からもメジャー作家が排出した。いわば読書好きの梁山泊。私も20代の頃は定期購読していた。
 
「本の雑誌」のロゴマーク。最初は居酒屋で酒を飲みながらの読書談義から始まり、やがて「本の雑誌」を出版するための「本の雑誌社」まで作ってしまった。社章デザイン、表紙、挿絵は椎名さんの高校の同級生だった沢野ひとしさん。沢野さんのつぶやきが書かれたイラストも人気となった。懐かしい。
 
明治の日本人は楽観的な冒険主義者であったと司馬遼太郎は書いているが、その時代の冒険譚を子供向けに平明な文章で書いていることと、表紙絵と挿絵を担当しているカミガキヒロフミさんのシンプルで伸びやかな画風と相まって、全編がおおらかで明るいトーンに満ちている。
 
明治期の遠洋漁船はスクーナー型帆船だから、漁師は大工仕事や繕い物なんでも器用にこなせたので、樹が1本も生えておらず、水もない小さな無人島でサバイバルできた。
 
生きるために必要な物は廃材や漂流物で自作するのは無論のこと、「ウミガメ牧場」まで作ってしまう生活力に脱帽する。
 
サバイバル開始5ケ月目に偶然に通りがかった日本船に救助された時点では、向こう1~2年の自給自足が見込めるまでになっていたというから驚く他ない。
 
摩擦式発火法の知識もないはずなのに、文章から察するに「火溝式発火法」まで成功させている知恵と体力、団結力を武器として、各自が得意な仕事を見つけては嬉々と取り組む様子が実に愉しそうなのだ。
 
海面下40mまで透けて見えたという、微に入り細に入りるサンゴ礁の海の描写はお伽噺の世界。最初は食料にするつもりだったアザラシの群れと「親友」になり、漁師の姿をみつけたアザラシが遊んで欲しいと寄ってきて、一緒に泳ぐようになるなど微笑ましいエピソードが満載。
 
挿絵もかわいいので幼児への読み聞かせにもいい本。くたびれ気味のオジサン、オバサンにとっては、元気が出る読む処方箋。
 
読んでみたい方、ネット通販ではなく、地元の本屋さんで注文して、地域にお金をまわしてあげてくださ~い!