技量が未熟で挫折を繰り返していた、亀ヶ岡文化圏出土品の石製笄(いしせいこうがい)をモチーフにした石笛が、やっとのことで恰好がついた。
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野太い線刻が全面に施されている石製笄の半分を意匠化した。土器もそうだが、どこから手を付けていいのか解らない複雑な施文でも、じっくり観察していくうちに法則性が読み解ければしめたもの。
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これまでは左手で石笛を持って線刻していたが、疲れてくると指が滑っての失敗も多かったし、線刻の幅や深さを安定させるのに苦労していた。
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そこで小型の加工品を保持する際に使うドロップ(熱溶解式の一時的な固着材)を木製ハンドルに塗ってみたら、どんな角度からも自在に線刻できるようになり、作業時間も大幅に短縮。
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完成品の同じ角度
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もっと早く気づきそうなもんだが、ドロップは小型加工品に使うものとの思い込みが邪魔をしていたのだ。NHKテレビの「いっぴん」で七宝蒔絵の職人仕事をみていて思いついたアイデアだが、でかい石笛でもドロップで固定できるとは知らなんだ。
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10年もやってれば、ある日突然とブレークスルーはやってくるもんで、うれしい。次なる課題は楷書的なきちんとした造形から、もっと大胆に、もっと野太くの草書的なモノ作り。
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白系のヒスイは透過性バツグン。
出土品は結髪の整髪具の笄(こうがい)と命名されてはいるが、中央に2個の小孔が開けられた上下対称の形状なので、むしろ松風独楽(ブンブン独楽)に近い。
縄文土器の施文と同じく、思いつくまま野放図に施文していたのではなく、きちんと区画割りしてから線刻したに違いないと思う。縄文土器作りをしたことのある人なら誰でも実感することだが、縄文人は独創的な芸術家であると同時に意外と計画的なのだ。