子供の頃に観た母親方の爺ちゃんが包丁を砥ぐ後姿が格好よく、真似しているうちに刃物研ぎが好きになった。
お袋は危険だからと止めさせようとはせず、褒めてくれたので調子に乗って、小学生の頃から我が家の包丁研ぎは私の仕事。
そんな流れで、たまに友人から包丁研ぎを頼まれる。
今回の依頼品は、ずっと仕舞いこまれていた赤錆た出刃包丁と菜っきり包丁の二本で、刃がなくなった鉄板状で呆然(笑)
しかも出刃包丁は大きく刃が欠けている・・・。
こんな場合はそのまま研いで取敢えず切れる状態に戻す事もできるが、職人魂が許さない。
切っ先から顎まで研ぎ下ろして、つまり刃の部分全てをチャラにして新しく刃を付け直すのが一番だが、ヒスイ仕事に追われてその時間が無い。
そこでヒスイ研磨に使っている平面研磨機を使ってみたら、短時間で刃を戻す事に成功して、錆も綺麗に落ちた。
赤い椅子の左奥にあるのが平面研磨機で、流石にプロ仕様の機械は精度もトルクも違うのだ。
平面研磨機で刃を付けた後は、砥石で中仕上げと仕上げ。
錆が包丁の中まで入りこんでいるので、新品同様と言う訳にはいかなかったが、とりあえず顔が写りこむ程度の鏡面仕上げになった。
私の愛用する砥石はシャプトンというメーカーの「刃の黒幕」シリーズで、懇意にしていた古武術研究家の甲野善紀先生からの頂き物。
甲野先生は大の刃物好きで、「刃の黒幕」の研ぎ味の良さ、耐久性、研ぎの早さ、コストパフォーマンスに惚れこんで、刃物好きの私にプレゼントしてくれたのだけど、後から縄文の恩師の関根秀樹先生も愛用していると知った。
二人とも刃物に関しての造形が深く、研ぎも上手な方なので納得。
これから砥石を買うなら、「刃の黒幕」はイチオシである。
1本だけならブルー(1500番)・・・マメに砥石を使うならこれだけで。
2本買えるならエンジ(1000番)とクリーム(12000番)セット。
いい砥石を使うと気持ちいい。
よく切れる包丁も気持ちいい。
刃物を研ぐ度に亡くなった爺さんの後姿を思い出す・・・気持ちよく調理ができる上に供養になりますな。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます