阪神淡路大震災の際、陸自が野戦用入浴車を避難場所にもちこみ、入浴できなかった被災民は歓喜した。ところが神戸市は「条例では公衆浴場は循環式でないと不可なのでやめてください」と、まさかの中止要請!
非常事態に平時の条例を適用するとは何事!と陸自は後に引かず、衛生面を強化してサービス続行。被災者の救済を第一に考えた陸自に拍手をおくりたい。
行政は激甚災害でどんなコトが起こるのか?ナニをすればいいのか?をリアルに想定して、時には条例や法令を柔軟に解釈して対応する心構えが必要という反省点なのだが、ゴシップも含めてこんな事例がたくさん紹介されているのが本書。
法を柔軟に解釈して対応するという点については発令者が責任を負う覚悟も必要になる。極端な事例では日航機が御巣鷹山に墜落した事故の際、一刻の猶予もないと救助要請がないまま自衛隊を出動させた師団長が解任されたそうだ。軍隊が勝手に動いたことを事後承諾すると「満州事変」と同じになってしまうので、解任は覚悟の上の決断。この事例は非常にデリケートな問題。
移動トイレ車両を各自治体が1両づつ購入し、災害時には融通しあう互助ネットワークが広がりつつあるようだ。激甚災害では自治体の行政システムが機能しなくなる事態を想定して、市町村首長→県知事→内閣総理大臣といった縦の系統のみならず、近隣の自治体同士が柔軟に互助しあう横の系統のシステム整備も急務ではないだろうか。