釋守成の転居物語(旧タイトル・GONTAの東京散歩)

またまた転居を目論んでいます。
5年間で5回の転居。
6回目の転居の経緯を書いていきます。

切られお富  処女翫浮名横櫛 

2010年05月25日 03時43分28秒 | 演劇・演芸
国立劇場に前進座公演「切られお富 処女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし)」を観にいきました。(18日)

この作品は、「与話情浮名横櫛」俗にいう「切られ与三郎」の書替え狂言で、作者は、河竹黙阿弥です。

切られたのが与三郎ではなく、お富であるという趣向で、強請りに行くのもお富です。

木更津で見初めあったお富と与三郎が再会、しかしそのときお富は赤間源左衛門という絹問屋を装った盗賊の妾になっていたのです。
二人の密会がばれて、お富はなぶり殺しされそうになりますが、お富に思いを寄せる赤間の子分の蝙蝠安に救い出されます。

お富と与三郎はその後再会し、お富の父との主人が与三郎の親であることがわかり、主家のために金に困っている与三郎のために、安をだまして、堅気の女郎屋をやっている赤間の店へ強請りに行きます。
お富は強請りでせしめた金を奪い、安を殺したところで大団円。(芝居はここまで)

実は、与三郎とお富は実の兄妹で、畜生道に落ちたことで二人自害するのです。

「悪婆(あくば)」といわれる役柄で、お婆さんではありませんが、伝法な女が啖呵を切るというところに見せ場があり、強請りの場は見ごたえがあります。

前進座では31年前、1979年吉祥寺の劇場ができる前の劇団の稽古場を小劇場にした「前進座小劇場」で五世河原崎国太郎のお富、六世嵐芳三郎の与三郎、市川祥之助の蝙蝠安、村田吉次郎の赤間で初演され、翌年1980年、国立小劇場で再演されています。
再演時には、赤間を三世中村翫右衛門が演じています。
その後数年再演されましたが、今回は25年ぶりの上演ということです。

前回の国立劇場公演当時、私は前進座の演出部に在籍していました。
ですから今回は非常に懐かしく拝見しました。

お客様もたくさん入っていましたが、前進座の歌舞伎にはなかなか大向うの声(○○屋!!という掛け声)がかかりません。
知り合いの座員は声がかからないことを心配して、私に声を掛けて欲しいと頼んできました。

実は大向うの経験は一度もありませんでした。
長く歌舞伎を見ていますから、掛け声の間合いも多少はわかります。
でもこの芝居自体見るのも30年ぶり、どきどきしながら初大向うをした次第です。
でも拝見していくうちに、若いときの記憶は確かで、内容や台詞まで良く覚えていることに驚きました。
内容がわかっていれば声は掛けやすいですね。
ここぞという場所で何回か声を掛けさせていただきました。
芝居の邪魔にならなかったかな。

今回は25年ぶりの再演で、お富を六代目國太郎(五世の孫で六世芳三郎の長男)、与三郎を七代目芳三郎(五世の孫で六世芳三郎の次男)、赤間源左衛門を中村梅之助(三世翫右衛門の子)とそれぞれの孫や子息が演じています。
久々に前進座らしくもあり、わかりやすい楽しい芝居を見せていただきました。
國太郎さんは先代の面影があっていいですね。特に後半の悪婆は見ものです。
小悪党の蝙蝠安は藤川矢之助さん、非常に重要な役を自然に演じられていて、可笑しみもあり非常に良かったです。そいいえば以前蝙蝠安を演じられていた市川祥之助さんに楽屋でお目にかかりました。お元気で何よりです。
梅之助さんの赤間源左衛門は風格があり立派でした。翫右衛門さんの鷹揚さより、凄みがありましたね。
舟穂幸十郎の嵐圭史さん、すっとした立ち姿がいいです。梅之助さんとの二人はやはり絵になります。

充実した時間をすごしました。
ありがとうございました。
これからも前進座歌舞伎が続きますように。

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燕子花

2010年05月17日 23時20分17秒 | 美術館・博物館めぐり
根津美術館に『国宝燕花子図屏風 琳派コレクション一挙公開』を見に行きました。

根津美術館ではこの屏風の公開は四年ぶりだそうです。
でも、国立博物館の『大琳派展』でも公開されていたので、そんなに久しぶりの感じはしません。
だから、今回の展覧会のお目当ては、庭の本物の杜若(燕子花)の花です。

何度も書いていますが、ここの庭は子供のときの遊び場。
その時に杜若が咲いていた記憶はまったくありません。
実際はその当時から咲いていたんでしょうか?

金曜日の昼時、入口には列ができていました。
待つこと10分ほど、入場するなりお目当ての庭園の杜若へ。



そろそろ盛りは過ぎていましたが、まだまだ見ごろでした。
これだけ群生した杜若を東京都内で見たのは初めてです。
それも我が家のこんな近くにあるなんて・・・・。



燕子花とは良く名付けたと感心させられます。
ツバメの飛ぶ季節に、濃い紫の花と花の真ん中の一筋の白い色は、燕そのものです。

さて、本来の展示品も見るべきものがたくさんあります。

一番期待していたのが、鈴木其一の『夏秋渓流図屏風』。
酒井抱一の弟子の其一の大作です。
大木の下を流れる渓流が色鮮やかで本当に見事でした。

なかでも今回気に入ったのは、酒井抱一の二作です。
ひとつは『隅田川図』。

「茶の水 花の影くめ 渡し守」という句に
遠くの山と一面の霞み、そして都鳥らしき鳥が小さく三羽。
それだけで、まさしく隅田川です。
表装も美しい掛軸です。

さらに『七夕図』。
「かささぎの さして呼ぶなり 星の竹」という句に
上部に五色の糸を掛け、下には角盥に梶の葉を浮かべた掛軸。
それで七夕を表すという心憎い掛軸です。

どちらも江戸の粋、そのもの。
多くを語らない美がありました。



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