デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

2005年5月最優秀

2005-05-21 15:13:21 | 2005年
●今週の秀句/5月1日~10日
○高橋正子選

【金賞】
★火の山も青に染まりぬ若葉かな/小口泰與
若葉の季節になると、火の山も若葉に山が青々としてくる。絵筆で青をしみこませたように、すっかり初夏の山となった。様を変える火の山へ親しさがいい観察をもたらした。(正子評)

【銀賞】
★切れ目なき空にまっすぐ花菖蒲/大山涼
「切れ目なき空」は面白い見方だ。一色の空に、菖蒲の花が真っ直ぐに立っている。菖蒲の凛々しさ、潔さが読み取れる句だ。(正子評)

【銅賞/2句】
★絮タンポポ我が吹き旅の長くあれ/池田加代子(正子添削)
タンポポの絮に、息を吹きかけてふっと飛ばす。飛ばしたその絮の旅の長いことを願う。大空を飛んでゆくタンポポの種のはるかな旅を思う気持ちが超俗だ。(正子評)

★海原の果ては立夏の空と結ぶ/吉田 晃
海原の最果ては、立夏の空と結びあい一つになっている。立夏の霞んだような海の果てと空とが溶け合い光に溢れる夏が来るのだ。「結ぶ」に作者の思いがある。(正子評)

●今週の秀句/5月11日~15日
○高橋正子選

【金賞】
★新しき風鳴りはじむ樟若葉/かわなますみ
「樟若葉」をしっかり捉えた。季節を捉えたのである。「新しき風」は、作者の発見。新しき「若葉」なれば、「新しき風」が鳴る。(信之評)

【銀賞/2句】
★煽られて揺れ伝え合い麦稔る/瀧口文夫
熟れ麦の畑に風が吹き、麦の穂を煽り、穂の揺れがつぎつぎに伝わってゆくようすを、丁寧に美しく描写した。(正子評)

★草の海五月の風をわれに見す/ 臼井虹玉
「われに見す」に、大きな感動がある。「草の海」は、草原でよいだろう。草原を渡る風の波打ちに、「五月の風」を形と動きに捉えて、心が大きい。(正子評)

【銅賞/3句】
★風生る清しき朝の新茶かな/安丸てつじ
上五に置いた「風生る」が句を引き締めていて、「清しき朝の新茶」が作者の実感として伝わってくる。(信之評)

★ゴム草履畦に揃えて田を植える/今井伊佐夫
いい写生句だ。生活の体験が確かに伝わってきて、リアルな写生句である。(信之評)

★夏雲の影落つところ山青む/長岡芳樹
大きな風景をまとめて作意が無い。「夏雲の影落つところ」となれば、新緑の「山青む」である。(信之評)

●今週の秀句/5月16日~22日
○高橋正子選

【金賞】
★新緑にまみれて軽き旅鞄/野田ゆたか
小さい旅なのであろう。新緑の中を提げて歩く旅鞄の軽さが、旅を楽しむ心の軽さとなっている。どこを歩いても新緑が美しい。鞄に新緑が映るほどである。だから「新緑にまみれ」である。(正子評)

【銀賞】
★青空と静けさとあり麦畑/多田有花
麦畑の上に広がる青空と、麦畑の静けさが作る静謐なまでの景色が、無理なく詠まれている。静けさは、こうしたところにもあるのだ。(正子評)

【銅賞/3句】
★せせらぎの飽くまで澄める木下闇/安丸てつじ
木下闇をくぐって流れるせせらぎが、「飽くまで澄んでいる」ことへの強い驚き。木下闇の暗さをくぐればこそ、せせらぎの澄み具合がよくわかる。飽くまでも澄んだ水がやわらかで、句にいい味わいがある。(正子評)

★晴れ晴れと空の広さに麦熟れる/今村七栄
「晴れ晴れと」は、空が晴れている様子と、麦が明るく熟れ散る様子を形容して、麦秋をうまく捉えている。(正子評)

★朴の葉の香り豊かに包む寿司/今井伊佐夫
朴葉ずしは、岐阜地方の代表的なすし。朴の葉が青々としている初夏に作られる。ごぼう、にんじん、鮭などを具にいれ、その家自慢のすしが出来上がる。朴の葉の香りがかすかにすしに移ったころが食べごろという。(正子評)

●今週の秀句/5月23日~31日
○高橋正子選

【金賞】
★路地抜ける風やすがしき祭あと/尾 弦
「風やすがしき祭あと」に、この句の高まりがあり、リズムよく、祭あとの、すがすがしさ、清らかさが詠まれている。祭によって清々しくなった町筋に、これから本当の夏がやってくる。(正子評)

【銀賞/2句】
★やっと咲いた鉄線ふたつ朝空に/堀佐夜子
「やっと咲いた」「ふたつ」という言葉に、朝空にやさしく咲く鉄線の花に対する思いやりがよく出ている。楽しみにしていた鉄線の花が朝空に向かってさわやかである。口語の平易な表現に正直な気持ちがあって、読後涼やかな気持ちになれる。(正子評)

★風鈴や夕日染み入る浅間山/小口泰與
軒端の風鈴の音色を聞きながら、夕日の染み入る浅間山を眺めている。夕日の浅間が、風鈴の音色とともに心に染み入る。(正子評)

【銅賞/3句】
★植え終えて水澄み始める植田かな/ふるたけいじ
田に苗が植え終えられたそのときから、田は静かになって、植えるためにかき混ぜた田水も落ち着いて澄み始める。田植えまでの準備には、明るく高揚した気分があるが、田植えが終わると、稲は確実に成長への時を過ごし始める。その区切りの時を逃すことなく、捉えられている。(正子評)

★柿の実に似て方状の柿の花/小西 宏
柿の花について、私もいつも思っていることを、すっぱりと言ってもらった。柿の花は、柿の実のミニチュアのように、四角であるのが、かわいくて面白い。(正子評)

★日出る時の静寂若葉満ち/河野一志
日が出るときの静けさに自然の神々しさを感じる。目には、若葉があふれ満ちる季節。その中にあって、精神のレベルが高い。(正子評)

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