■1日~13日不明
【最優秀/9月14日】
★半日を風に吹かれて稲を刈る/池田多津子
稲刈のシーズンが訪れ、おそらく午前中の半日を稲刈りに費やした。午後は、自分の仕事があったのだろう、半日だけの稲刈りに、風がよく吹いてくれた。さわさわと鳴る稲穂の音を聞きながら、いい労働である。「風に吹かれて」の実感が多くを語っている。大きな秋風なのだ。(正子評)
【最優秀/9月15日】
★秋雲の渦巻く朝やゴッホの絵/安丸てつじ
ゴッホの絵の空には、ゴッホ独特の渦巻くような筆のタッチが見られる。秋雲が湧き満ちている朝の空は、まるでゴッホの絵を想像させる光景だ。「渦巻く」に生き生きとした動きの秋の雲がよく表されている。(正子評)
【最優秀/9月16日】
★白鷺のはっしと打ちし秋の水/山中啓輔
白鷺の翼が澄んだ秋の水を打つ一瞬に凝縮された清らかさ、潔さがある。「はっしと」に、秋水の飛沫が日差しにあざやかに見える。(正子評)
【最優秀/9月17日】
★娘が嫁ぎ広き部屋には吾亦紅/竹内よよぎ
娘を嫁がせたあとの心の空白。それをわずかにでも埋めてくれるかのように、吾亦紅の可憐な花が部屋に活けられている。娘を嫁がせたばかりの母の心境が優しくまとめられている。(正子評)
【最優秀/9月18日】
★該当句なし
【最優秀/9月19日】
★紫蘇の実を小皿にしごく武骨の手/平田 弘
紫蘇の実の結ぶ季節がいい。少しばかりの紫蘇の実だろうが、小皿にしごくといい香りがする。手にあくもつくが、それも骨太の手なので、実(じつ)がある。(正子評)
【最優秀/9月20日】
★大根の二葉揃いて真直ぐな畝 /黒谷光子(正子添削)
大根がうまく芽生えて、真っ直ぐな畝に二葉がでそろった。黒い土に芽生えた二葉の形も色もかわいらしい。生き生きとした芽生えがすっきりと詠まれた。(正子評)
【最優秀/9月21日】
★切口を揃え薄の担がれる/碇 英一
野原から切り取った薄だろうが、薄が担がれてゆく。ああ薄を担いでいるなあと見ていて、ふと気づくと、根元の切り口がきちんと揃っている。その切り口の潔さ、涼やかさに驚く。薄を担いでゆく光景もいい。(正子評)
【最優秀/9月22日】
★新米をたっぷりもらう十六夜に/多田有花(信之添削)
十六夜という美しい月夜に、透き通った新米をたっぷりともらったうれしさ。二重、三重のうれしさに思わず顔がほころぶ。季語の「十六夜」は、<いざよい>と読み、陰暦八月十六日の夜をいう。十五夜の翌夜のことであり、また転じてその夜の月のこともいう。(正子評)
【最優秀/9月23日】
★秋深し星の点滅明けるまで/冨樫和子(正子評)
秋の夜空の星は、明けるまできらめくことをやめない。夜は気温もさがるので、なおさらに秋の深さを感じる。「星の点滅」は、作者らしいことば。(正子評)
【最優秀/9月24日】
★小鳥来てわが目の高さそこに置く/かわなますみ (正子添削)
小鳥が来たうれしさに、小鳥のしぐさを見るために、小鳥のいる高さに自分の目をおく。小鳥への愛しさから。(正子評)
【最優秀/9月25日】
★木犀や夜空に向けてにおい初めり/竹内よよぎ
木犀が香る季節が巡ってきた。まずは、夜空に向かってその香りを放つ。きれいな星々の瞬いている夜なのであろう。夜の澄んだ気配が感じられる。(正子評)
【最優秀/9月26日】
★雲はみな山に集まり天高し/黒谷光子
空の雲が、みんな山に寄って、そのほかのところは、雲もなく青空が高々と広がっている情景。秋晴れの空を的確に写実して、実際、空の輝きを見ているような句だ。(正子評)
【最優秀/9月27日】
★菜を間引き進むにつれて手に溢れ/平田 弘(信之添削)
菜を間引いていくにつれて、貝割り菜が次第に手に溢れてくる。間引き菜をしていてうれしい時だ。無欲であれば、こんな楽しいときはない。(正子評)
【最優秀/9月28日】
該当作なし
【最優秀/9月29日】
★刈稲の青き匂いを天に干す/小西 宏
稲はまだ青い匂いの残るのを刈り取る。このことは、稲刈りの時でなければ、実感として湧かないが、実はそうである。刈り取ったばかりの稲は、たちまち束ねられて広い天に向けて干される。「天に干す」に、たとえば、干拓地などの広い平野が想像できる。(正子評)
【最優秀/9月30日】
★秋空の曇りて海の濁り初む/岩本康子
秋の空といっても、晴れ渡ってばかりいるばかりではない。急に曇ると、海の色も濁る。「濁り初む」の「初む」には、作者の驚きとともに、絶えず変化する海が描かれて、深いところの見える作者の新境地の句といえる。(正子評)
【最優秀/9月14日】
★半日を風に吹かれて稲を刈る/池田多津子
稲刈のシーズンが訪れ、おそらく午前中の半日を稲刈りに費やした。午後は、自分の仕事があったのだろう、半日だけの稲刈りに、風がよく吹いてくれた。さわさわと鳴る稲穂の音を聞きながら、いい労働である。「風に吹かれて」の実感が多くを語っている。大きな秋風なのだ。(正子評)
【最優秀/9月15日】
★秋雲の渦巻く朝やゴッホの絵/安丸てつじ
ゴッホの絵の空には、ゴッホ独特の渦巻くような筆のタッチが見られる。秋雲が湧き満ちている朝の空は、まるでゴッホの絵を想像させる光景だ。「渦巻く」に生き生きとした動きの秋の雲がよく表されている。(正子評)
【最優秀/9月16日】
★白鷺のはっしと打ちし秋の水/山中啓輔
白鷺の翼が澄んだ秋の水を打つ一瞬に凝縮された清らかさ、潔さがある。「はっしと」に、秋水の飛沫が日差しにあざやかに見える。(正子評)
【最優秀/9月17日】
★娘が嫁ぎ広き部屋には吾亦紅/竹内よよぎ
娘を嫁がせたあとの心の空白。それをわずかにでも埋めてくれるかのように、吾亦紅の可憐な花が部屋に活けられている。娘を嫁がせたばかりの母の心境が優しくまとめられている。(正子評)
【最優秀/9月18日】
★該当句なし
【最優秀/9月19日】
★紫蘇の実を小皿にしごく武骨の手/平田 弘
紫蘇の実の結ぶ季節がいい。少しばかりの紫蘇の実だろうが、小皿にしごくといい香りがする。手にあくもつくが、それも骨太の手なので、実(じつ)がある。(正子評)
【最優秀/9月20日】
★大根の二葉揃いて真直ぐな畝 /黒谷光子(正子添削)
大根がうまく芽生えて、真っ直ぐな畝に二葉がでそろった。黒い土に芽生えた二葉の形も色もかわいらしい。生き生きとした芽生えがすっきりと詠まれた。(正子評)
【最優秀/9月21日】
★切口を揃え薄の担がれる/碇 英一
野原から切り取った薄だろうが、薄が担がれてゆく。ああ薄を担いでいるなあと見ていて、ふと気づくと、根元の切り口がきちんと揃っている。その切り口の潔さ、涼やかさに驚く。薄を担いでゆく光景もいい。(正子評)
【最優秀/9月22日】
★新米をたっぷりもらう十六夜に/多田有花(信之添削)
十六夜という美しい月夜に、透き通った新米をたっぷりともらったうれしさ。二重、三重のうれしさに思わず顔がほころぶ。季語の「十六夜」は、<いざよい>と読み、陰暦八月十六日の夜をいう。十五夜の翌夜のことであり、また転じてその夜の月のこともいう。(正子評)
【最優秀/9月23日】
★秋深し星の点滅明けるまで/冨樫和子(正子評)
秋の夜空の星は、明けるまできらめくことをやめない。夜は気温もさがるので、なおさらに秋の深さを感じる。「星の点滅」は、作者らしいことば。(正子評)
【最優秀/9月24日】
★小鳥来てわが目の高さそこに置く/かわなますみ (正子添削)
小鳥が来たうれしさに、小鳥のしぐさを見るために、小鳥のいる高さに自分の目をおく。小鳥への愛しさから。(正子評)
【最優秀/9月25日】
★木犀や夜空に向けてにおい初めり/竹内よよぎ
木犀が香る季節が巡ってきた。まずは、夜空に向かってその香りを放つ。きれいな星々の瞬いている夜なのであろう。夜の澄んだ気配が感じられる。(正子評)
【最優秀/9月26日】
★雲はみな山に集まり天高し/黒谷光子
空の雲が、みんな山に寄って、そのほかのところは、雲もなく青空が高々と広がっている情景。秋晴れの空を的確に写実して、実際、空の輝きを見ているような句だ。(正子評)
【最優秀/9月27日】
★菜を間引き進むにつれて手に溢れ/平田 弘(信之添削)
菜を間引いていくにつれて、貝割り菜が次第に手に溢れてくる。間引き菜をしていてうれしい時だ。無欲であれば、こんな楽しいときはない。(正子評)
【最優秀/9月28日】
該当作なし
【最優秀/9月29日】
★刈稲の青き匂いを天に干す/小西 宏
稲はまだ青い匂いの残るのを刈り取る。このことは、稲刈りの時でなければ、実感として湧かないが、実はそうである。刈り取ったばかりの稲は、たちまち束ねられて広い天に向けて干される。「天に干す」に、たとえば、干拓地などの広い平野が想像できる。(正子評)
【最優秀/9月30日】
★秋空の曇りて海の濁り初む/岩本康子
秋の空といっても、晴れ渡ってばかりいるばかりではない。急に曇ると、海の色も濁る。「濁り初む」の「初む」には、作者の驚きとともに、絶えず変化する海が描かれて、深いところの見える作者の新境地の句といえる。(正子評)