斬る!雑草魂

北京五輪なんかどーにでもなれっ

新たな宇宙開発競争と立ち後れる日本

2005-10-19 | 科学ネタ
靖國問題が一段落して朝日と産経の社説は中国の有人宇宙船「神舟6号」の成功から日本の宇宙開発の立ち後れに憂慮した内容となっている。

その中で朝日新聞の社説を引用してみたい。

神舟6号 日本はどうするのか
有人宇宙船「神舟6号」が、中国としての2度目の有人飛行を終えて、無事、地上に戻ってきた。

 2年前の神舟5号は、1人乗りで飛行時間も1日足らずだった。今回は2人乗りで5日間に及んだ。飛行中、微小重力が人体に与える影響など、さまざまな実験をしたという。

 中国の有人飛行計画は92年に始まり、段階を踏んで進んできた。その着実な歩みを改めて世界に印象づけた。

 今後は、宇宙飛行士が船外に出て遊泳したり、宇宙船同士をドッキングさせたりする計画だ。目標は宇宙ステーションの建設である。そのための大型ロケットの開発のほか、新しい発射場の建設も進む。

 また、アジア地域での協力の枠組みを今秋にも立ち上げ、衛星の利用や技術者の教育を進めようとしている。これまでの実績を追い風に、宇宙開発でもリードしようというのだ。

 中国の台頭もあり、世界の宇宙開発地図は今、大きく変わりつつある。

 米国はスペースシャトルを使った国際ステーションの建設計画を縮小したうえで、2010年には計画を終え、月や火星の探査に移ることを決めている。

 欧州は独自の月探査計画を進めるとともに、ロケットの打ち上げでロシアと協力するなど、米国離れを強めている。

 ロシアはソユーズ宇宙船を使った旅行ビジネスを展開する一方、スペースシャトル後の宇宙船開発に参加するよう日本にも呼びかけている。

 アジアでも、韓国が宇宙開発に力を入れ始めるなど関心は高まってきた。

 こうした中で、明確な構想を持たず、国際的なうねりに埋没しかねないのが日本である。

 宇宙開発は科学技術を発展させるにとどまらない。安全保障や国際政治にも密接にかかわる。ところが、日本には、総合的に宇宙開発の戦略を立てる組織がない。各省庁が、科学技術としての宇宙開発をバラバラに扱っているだけだ。

 どのような目的で、どの分野の宇宙開発を優先的に進めるのか。日本の得意技をどう生かすのか。国際的な協力をどうするのか。政府全体として、宇宙開発をきちんと位置づけることが大切だ。

 このままでは、せっかくの技術力を生かせない。根本に立ち返って、日本の宇宙開発を考え直す時期である。

 中国の有人飛行をめぐって気がかりなのは、軍事利用の不安がぬぐえないことだ。江沢民前国家主席はかつて軍事的な意義を明言したことがある。平和利用を確かなものにするには、やはり国際的な協力の仕組み作りが欠かせない。

 独自の有人飛行計画はないが、先端技術に強みを持つ隣国として、新しい協力の形を探っていきたい。
【以上引用】-------------------------------

意外にも朝日にしてはまともな社説だった。諸外国よりも立ち後れている日本の宇宙開発への懸念や中国の軍事利用にも言及している。

1950~70年代活発だった宇宙開発競争も米ソ冷戦終結後、停滞とは言わずとも一時期の勢いを無くし計画も低予算で小粒な物が多くなった。
確かに冒険の時代から実用の時代に入ったこともあるが、各国とも予算は削減されNASAですらケチケチ宇宙開発に終始していた。

しかしここに来て中国が宇宙開発競争に乱入、欧州とロシアは共同開発で接近、アメリカも月面基地や火星有人飛行計画ブチ上げるなど俄然各国ともやる気を出してきましたな。

アメリカも中国という軍事・宇宙の対抗勢力が現れたおかげで、宇宙開発計画の前倒しまでが期待できそう。なんせ中国に月有人飛行計画までブチ上げられてはアポロ計画を成功させたアメリカの面子にかけても先を越されたくはないだろう。

まぁ宇宙ネタ好きのオイラにとっては理由は何であれ宇宙開発計画が加速するのはまずよしとしよう(中国の宇宙開発はヤバイと思うが)。

そんな中で立ち後れているのが我が日本。宇宙の分野でもアメリカ一辺倒、当のアメリカがやる気を無くした国際宇宙ステーション(ISS)にしがみつくのが精一杯か。偵察衛星もまともに打ち上げられず、多額の予算を注ぎ込んできたISS計画がポシャれば、どーするのでしょうか?

産経の10/19のフロンページを読めば日本の宇宙開発の立ち後れは何も予算だけではなく“政策”の問題も大きそうだ。外交もそうだが日本には国家戦略がかけている。

日本遅れる“宇宙戦略” 統合政策が不可欠
平成17(2005)年10月19日[水]

≪情けない実情≫

 日本は平成十年、北朝鮮の弾道ミサイル「テポドン1号」の発射をきっかけに情報収集衛星を導入。米国は解析度十五センチの偵察衛星を持つとされているのに対し、日本の情報収集衛星の解析度は一メートルと民間並みだ。帝京大の志方俊之教授(安全保障論)は「『宇宙の開発、利用は平和目的に限り行う』ことを定めた昭和四十四年の国会決議に縛られ、民生用以上の性能を導入できなかった」と理由を解説する。

 日本は、情報収集衛星を平成十六年から四基体制で運用する計画だったが、国産ロケット「H2A」6号機の打ち上げ失敗や集積回路の不具合で三基目の打ち上げが来夏に延期された。同じ地点を一日一回撮影するためには四基が必要で、二基では二日に一回になる。

 志方氏は「せめて解析度二十-三十センチは必要だ。現状ではボヤーっとしたものが二日に一回見えるだけ」と情けない日本の実情を打ち明ける。逆に中国は、二〇〇三年以降に八基の偵察衛星を打ち上げ、「国土防空型の空軍から攻撃・防衛一体型の空軍へ転換する」(防衛白書)方針と合わせ、弾道ミサイルの命中精度を上げているとみられる。日本は専守防衛という制約があるだけに、「『世界一目ざとく、聞き耳の早い国』でなければならない」と志方氏。

≪司令塔不在≫

 「日本は宇宙での生命維持や月面探査用のロボット技術といった個々の面では優れているが、これらを統合する宇宙政策を持っていない」と、警鐘を鳴らすのは未来工学研究所の稗田浩雄理事(科学技術論)だ。

 宇宙開発戦略を検討する場としては、小泉純一郎首相を議長とする政府の総合科学技術会議があるが、学術的な側面から宇宙を扱っているのが実態。文部科学省には宇宙開発委員会があるが、JAXAに関する事項を審議する場との位置付けだ。

 志方氏は「経済産業省や防衛庁を含めた国家全体での取り組みが不可欠」と主張。稗田氏は安全保障面も含めた宇宙政策を議論する場を内閣官房に設ける必要性を指摘している。
【一部引用】------------------------------

結果的に今回の「神舟6号」の成功がイイ刺激になればと思う。

ところで朝日の社説に気になる一文が、
『アジアでも、韓国が宇宙開発に力を入れ始めるなど関心は高まってきた。』と。こちらを参照
どーせ学術的な研究よりも「ウリナラマンセー」「チョッパリに負けるな!」が目的なのでしょう。最後の一文の『独自の有人飛行計画はないが、先端技術に強みを持つ隣国として、新しい協力の形を探っていきたい。』にある“協力”には韓国を入れる必要はありませんな。