●映画「フラガール」。口コミ効果で、興行成績が全国3位に!ということで、人から「おもしろい」との声もあり、昨日観てきました。
●話は、常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)オープン時のフラダンスチーム育成秘話という感じでしょうか。結末は予想がつきますが、その過程のストーリー展開はなかなかのもの。この手の邦画はなんとなく、くさい芝居になりがちですが、すごく自然で、文句なく楽しめます。
●特に、松雪泰子はダンスの先生役。ストーリーが進行していく中で、顔つきが変わって行く、その演技は出色もの。蒼井優のスクリーンいっぱいの笑顔には吸い込まれます。音楽も場面、場面にマッチしていて楽しくなりますよ。「フラガール」、ぜひ皆さんもご覧ください。
●時代設定が昭和40年。「昭和」という感じが懐かしいですね。そのちょっと後に、札幌にも茨戸ハワイランドというのができ、遊びに行った記憶があります。映画館にも結構年配の人が来ていましたね。
●映画では、福島県いわき市の常磐炭坑が、日本全体が石油エネルギーへ転換していく中、閉山の危機を迎え、地域の雇用を守るため早めに手を打とうと、「常磐ハワイアンセンター」を考えます。雇用開発事業としては、その当時を考えるとすごい発想ですね。
●スパリゾートハワイアンズの歴史によると・・・常磐炭坑ではその当時、石炭を掘るのに、温泉が噴出して非常に邪魔だったようです。この温泉は、生産力ダウンをもたらす「負」の資源でした。石炭を1トン掘るために何と40トンの温泉を汲み出すほどで、当時一日の湧出量は、日本の総人口に毎日一合(0.18L)の温泉を分けられる程の量だったといいます。石油エネルギーへの転換が進み炭坑の将来にはっきりとした凋落が見えてきたとき、炭坑の運営会社である常磐炭礦株式会社は、企業の存続と地域経済の再生を目指し、新業種への参入を検討しました。「坑内から湧出する温泉の地熱と、豊富な湯量を利用すれば、東北の地でも一年間温暖な空間が創出できる」として、昭和38年に「温泉レジャー施設」の建設計画を発表したのです。つまりマイナスをプラスに転じる発想、これがすべてのスタートとなったとのことです。そして、その目玉になったのが暖かさを象徴するもの「熱帯樹とフラダンス」、そしてハワイの雰囲気。
●今なら、エンタテインメントの重要な要素である「非日常性」という一言で表現されるでしょうが、この当時に、20億円弱の巨費をかけて打ってでるというのは大きなかけだったでしょうし、それだけ地域が追いつめられていたということだと思います。準備も周到で、映画にも出てくる「常磐音楽舞踊学院」は、県の各種学校の認可を取り人材育成を続けているというのも先見性があったと思います。
●映画の中では、解雇を言い渡された炭坑夫が新たな職を求め夕張に引っ越すシーンが出てきます。夕張では、平成2年の三菱石炭鉱業南大夕張炭坑閉山まで炭坑が残りました。夕張でもどんどん閉山していったのでしょうが、全体的には遅かったようで、それが街の再生への取組を遅らせたとも言えるかもしれません。夕張市でも遅ればせながら、石炭の歴史村などの観光施設に乗り出しましたが、今考えると博物館的発想が強く、ソフト面で「非日常性」が弱かったのかもしれませんね。
●同じように、炭坑の閉山危機を契機に、地域の再生に取り組んだいわき市と夕張市。今は明暗を分けています。 その違いはどこにあるのか、知りたいものですね。