一昨日の夕方から昨日の朝までの夜勤の勤務中に不思議なことが起きました。
夜勤の2名は、22時半から翌3時までの間に交代で仮眠を取りますが、この日は私が先に仮眠を取りました。仮眠明けで起きだした私に、相方のMさんが、
「大変ですよ信じられないことが起きちゃいましたよ」
と、興奮しながら話しかけてきました。
Mさんの話によると、23時半頃に女性入所者Hさんからナースコールがあり、対応に向かったMさんにHさんが訴えたのは、
「なんだか変なの。。。(左)足が動くみたいなの。。。」
というものでした。Hさんは脳梗塞の後遺症により左半身が麻痺されています。左手も、もちろん左脚も動かすことができません。まさか・・・と思ったMさんが、そぉ~と布団をあげてみると、仰向けになったHさんが両足をバタバタと動かして見せたそうで、Mさんは腰を抜かしそうになるくらい驚いたようです。
Hさんは特にリハビリを受けるわけでもなく、左半身の麻痺はご本人も諦め、その状態を受け入れて生活されています。それが突然、左脚が動き出したのですから、Hさん自身も半信半疑なようで、
「朝、起きたらまた元通りになっていたらどうしよう。。。」
など、嬉しさとともに心配にも感じていらしたそうです。
仮眠を交代して私がナースコール対応の担当に就いてしばらく経った午前2時頃に、再びHさんからナースコールがありました。Hさんはほぼ毎日、この時間にトイレに起きられます。Hさんの元に向かって、トイレ利用の介助の準備をしながら尋ねてみました。
「Mさんから聞いたよ。左足が動くようになったんだって?」
「うん、そうなの。ビックリしたけど、やっぱり心配...このままでいてくれるかなぁ...」
こんなとき、答えに窮してしまいます。『大丈夫だよ!』と元気づけてしまった後で、もし元通りになってしまったら、ぬか喜びになってしまいますし、慎重な意見も心配を増すことになってしまうし、悩んでしまいます。
「う~ん・・・・・・・・・朝になったら、すぐに看護師さんに報告、相談してみようよ」
もっと気の利いた言葉がけも、後になってからは思いつくのですが、その場ですぐに出てこないことがもどかしくなってしまいます。
ともあれ、Hさんのトイレ利用の介助をしてみると、確かに左脚をご自身の意思で動かすことができていました。長期間の麻痺状態から左脚の筋力は衰えているので、立位を保ったり歩行したりすることは無理ですが、以前に比べて立ち上がりの動作が安全になったようです。機能回復訓練を続ければ、自力歩行も可能になるかもしれません。
果たして翌朝、Hさんの左脚は依然として動かせる状態でした。出勤してきた看護師Kさんに経緯を報告すると、
「まさか・・・?」
やはり半信半疑ながら、Hさんの状態を確認すると、
「本当だった・・・長いことこの仕事をしているけど、こんなことは初めてよ」
やはり目を丸くして驚いていました。
麻痺症状は、機能回復訓練を受けて、長い時間をかけて改善されていくのが通常です。ある日突然動き出すなどということは、ゼロとは言えませんが非常に稀な例になると思います。
私たちは、入所者の方々の自力では不可能な生活動作を援助することも仕事の一つなのですが、自立度を高めていただけるように改善しようとしてもなかなか叶わず、逆に不可能な動作が増えていってしまうのが現状です。それゆえに徒労感を感じてしまうこともあるのですが、今回のHさんの件のように、入所者の自立度が高まるような変化があったときは大きな喜びを感じられます。
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今日の東京・立川市内の残堀川には渡り鳥のコガモが来ていました。冬が近づいた感じがします。
トップの画像は、根川緑道沿いで咲いていた寒桜です。
筋力を上げるために、今まで使われていた添え木のような役割を持つ補装具も外して行動されています。
順調にいくことを願っています。
事故などを恐れるあまり、被介護者の自立を阻害してしまうことは、実際にあるのが現状です。
介護者、被介護者とも納得いかないのが嫌な感じです。
ルークがHさんに会って1年が経ちました。
彼のお陰なのか、それとも彼は1年後のHさんの回復が分かっていたのか、そんな風にも思ってしまいました。
少し前テレビ等で、もう回復不能と思われていた重度の麻痺が、特殊なリハビリを施すことで脳を刺激し、
別の命令回路を作ることで、マヒが軽くなることをやっていましたが、
Hさんの場合はそういうことでもないのですものね。
正に奇跡かもしれません。ルークのお陰ですね。
Hさんの喜びもさることながら、それを目の当たりにしたMさんとnon_Bさんの驚きも目に浮かぶようです。
病院や施設では、事故を防ぐ為に、必要以上に慎重になって、
かえってADL向上を妨げていることもあるのかもしれません。
その中で、大変嬉しい出来事でしたね。
Hさんの自立度が更に増すことを願ってやみません。