不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

伯父の戦記_56_野豚と私達(1)

2007-11-08 | 伯父の戦記



 伯父の戦記の26話め、「野豚と私達」です。
 伯父達が駐屯したパプア・ニューギニアの「カビエン」地区はジャングルに囲まれていました。そこには様々な生物が棲みついており、今回の話はそのジャングルにいた獣との関わりです。
 本土からの補給も絶たれ、自分達で栽培した芋が主食となっていた長期に亘る伯父たちの駐屯生活は、芋だけでは持ちこたえられなかったと思います。古代の生活に戻ったようなこともしながら伯父達は生き抜きました。
 今編は2回に分けて掲載します。

 画像は本文とは関係ありません。JR立川駅付近の夜景です。

******************************************************************

 この島の豚は、土人が飼育している以外は、主としてジャングルに生息していた。そのため土人の外では滅多にその姿を見る事もなく今日迄過ぎてきた。
 しかし戦斗が激しくなり、輸送も途絶えた現在、我々の日常の生活も一変し、日夜戦斗に、農耕にと多忙な日々が余儀無く強いられた。
 にも関わらず食糧は日増しに不足の一途を辿り、兵隊の体力は日増しに衰え、急速に弱体化した。

 駐屯地の周辺には既に口に入る物は何一つ無く食い尽くされていた。そのため我々の食糧を求め歩く行動範囲も日増しに拡大し、これがやがては野豚の棲息する領域に迄進入し、手当たり次第に「(日本の八つ頭と同じ)タロ芋」を採取した。その結果、彼等の食糧までが不足の状態となり、数日後には野豚からの逆襲をうける結果を生んだ。
 我々が命の綱としている主食「芋」畑が毎夜の如く数頭の群に食い荒らされ、甚大な被害を被り始めたのである。これも数カ所の農園に及んだ。
 考え方によっては、これもお互い様と水に流したい処だが、人間とは勝手なものである。彼等の食糧を奪いながら、自分等は清純であるが如く考える。現状はそんな悠長な考えでは生きて行けない。許す訳にも行かない。なんとか対策を講じなければならない。又最近の爆撃も陣地飛行場では飽きたらず、食糧にする畑迄が爆撃されている。被害も馬鹿に出来ない。

 そこで我々は野豚に対し反撃を開始したのである。最初は各部隊から数名を募り、交代制で農園の巡回をする事になった。
 その陰には誰もが体験したであろうか、不気味な恐ろしい思い出があった。
 月は雲間に隠れ、周囲は一瞬にして暗夜に包まれる。その闇の中を一人ジャングルの獣道を足音をたてないように静かに進む。
 夜光虫が燐光を放ち蛇のように足元で蠢いている。一寸でも触れれば全身によじ登って来るようで背筋にゾーッと寒気を感じる。
 樹齢数百年と云う大木が覆い被さるようにのしかかる。体が硬直する。
 突然大コーモリが、我々の進入に驚いたのか、カン高い声で闇の静寂を破り頭上に飛び去る。
 (以下続く)

******************************************************************


Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« The Police Live in Concert | TOP | 伯父の戦記_57_野豚と私達(2) »
最新の画像もっと見る

post a comment

Recent Entries | 伯父の戦記