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世界と中国出合う機会 上海万博あす開幕

2010年04月30日 | 社説
世界と中国出合う機会 上海万博あす開幕

 中国・上海で五月一日から万国博が始まる。愛知万博から五年。隣国で開かれる万博は楽しみながら世界が中国を知り、中国が世界を知る絶好の機会だ。

 上海万博が人を驚かせるのは、二年前の北京五輪と同じく規模の大きさだ。今年中にも日本を追い抜き世界二位の経済大国に躍進する中国の勢いを象徴している。

 市中心を流れる川を挟む会場の広さは愛・地球博(愛知万博)の約二倍。参加した国や国際機関は最多の二百四十六に達した。

 入場者数も過去最高だった大阪万博の約六千四百万人を上回る七千万人と予想されているが最近では、この予想は控えめで一億人に達するという見方も出てきた。

○愛知万博の理念継承

 過去最大を誇る上海万博は「自然の叡智(えいち)」をテーマに自然との共生をうたった愛・地球博の理念も受け継いでいる。

 「より良い都市、より良い生活」のテーマで、各国の展示は最新の環境技術を競い、太陽光発電や電気自動車の導入などで「エコ万博」実現が目標にされている。

 会場の中心を「東方の冠」をイメージしたという、ピラミッドを逆さまにした形の真っ赤な「中国館」が占める。五千年にわたる都市発展の知恵をマルチメディア劇場や体験型展示で実感させる。三十一の全国省市展示館では中国各地の自然や文化に触れられる。

 紫色で蚕のまゆの形に似ている日本館は「紫蚕島(ズーツァンダオ)」とも呼ばれる。日中交流の歴史をひもとくことから始まり二〇二〇年の仮想未来都市まで映像や展示で表現した。二足歩行のロボットもバイオリンを弾いて来場者を歓迎する。

 日本からも百万人規模の観光客が見込まれているが、来場者の圧倒的多数は中国人になる。

○大きく変わる消費

 中国最大の経済都市である上海市民にとって、都市生活や外国の文物はなじみ深いものになっているが、地方からの参観者には新鮮に映るに違いない。

 上海万博の日本産業館総合プロデューサーの堺屋太一氏は「大阪万博で日本人の消費スタイルが変わった。上海万博によって中国も変わる」とみている。万博で外国や都市のライフスタイルを体験した地方の人々は、さらに進んだ消費や生活を求めるだろう。

 中国は一九五〇年代末、独特の戸籍制度で都市と農村の間に垣根を作った。農村戸籍に生まれた人々は都市に来ても戸籍には転入できず、就業や住宅から、教育や福祉まで差別されてきた。

 共産党政権は戸籍制度の緩和や農村の生活向上を打ち出しているが、戸籍制度撤廃を明言せず差別の実態に大きな変わりはない。

 上海万博で進んだ生活様式を経験した地方の人々は、今後、一層消費生活を向上させ、待遇の改善を望むようになるだろう。それは奥深いところで中国の変革を促すかもしれない。

 日本にとって上海万博は中国との関係を改善するチャンスだ。万博関係者は「愛・地球博の経験に学びたい」と繰り返してきた。

 愛知万博のトラブルを教訓に禁止する予定だった弁当の持ち込みを許可し、トイレの長蛇の列を解消するため大幅に増設した。

 万博を認定する博覧会国際事務局(BIE)の本部はパリで運営も欧州が主導している。しかし、万博に出展した国々で構成する「陳列区域政府代表団・運営委員会」の議長として中国は塚本弘日本政府代表に就任を依頼した。

 中国の公安当局はテロ対策で警備を徹底し、外国館への機材搬入やスタッフの出入りも厳しくチェックし、外国館側の不満が募っているが、摩擦の調整にも日本は役割を発揮しているという。

 万博の半年を通じて培われる日中の相互信頼は、今後の両国関係の発展にも役立つに違いない。

 また、外国館の中で最大級の規模を誇る日本の展示は中国で行われた調査でも「行ってみたい外国館」の上位を占める。

 実際に中国の人々が日本館を参観すれば、さらに好感がアップするだろう。五年前に上海で「反日」デモが起こったことなど、信じられなくなるほど対日感情が改善されることを期待する。

○避けられぬトラブル

 空前の大規模なイベントにトラブルは避けられない。殺到する参観者やテロへの厳重警備がお祭り気分を損なう可能性もある。

 万博PR曲が歌手の岡本真夜さんの楽曲に酷似しており万博当局は使用を停止し岡本さんに使用許諾を求めた。PR曲の作者は、それに異を唱え問題は未解決だ。

 これからも起こるであろう各種のトラブルや問題が、上海万博の成功や、それを通じた国際社会と中国の相互理解を妨げることのないよう望みたい。

2010年4月30日 中日新聞 社説


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