【時事(爺)放論】岳道茶房

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軽い首相の言動 「資質」問い始めた各紙

2010年04月04日 | 社説
論調観測 軽い首相の言動 「資質」問い始めた各紙

 田原総一朗氏がキャスターを務め21年続いた報道番組「サンデープロジェクト」が3月28日放送で終了した。最終回、郵便貯金限度額をめぐる菅直人財務相と亀井静香金融・郵政担当相の身もフタもないののしり合いは現政権の有り様をのぞかせた意味で「らしい」閉幕だった。

 年度が改まったこの週、鳩山内閣への各紙論調にも節目が訪れた。「政治とカネ」など政権の迷走を指摘しつつも、各紙はこれまで基本的に鳩山由紀夫首相の指導力発揮に期待を示してきた。それが「郵政騒動」を境に首相の統治能力、さらに資質への疑念に踏み込み始めた。

 郵政改革をめぐっては郵貯の預け入れ限度額を倍増する亀井氏案を首相がいったん「了解していない」と否定し、菅氏らも激しく批判した。その後、亀井氏案を「聞いていない」とする菅氏と「耳が悪い」となじる亀井氏の口論で内閣のバラバラぶりが浮き彫りになった。すると首相は今度は亀井氏案をあっさり丸のみし、収束を急いだ。

 郵貯肥大化を招きかねない改革逆行との指摘に加え、それ以上に各紙に目立ったのは定見なく混乱を拡大した首相のかじ取りへの批判だ。毎日は31日社説で両閣僚の口論を「子どものけんかのような醜態」と評し、首相の迷走ぶりに「統治能力に疑問符がつく」と政権運営能力に疑問を投げかけた。

 朝日は1日社説で「擦り切れる『首相の資質』」との見出しで郵政問題の決着を「後ろ向きの『裁定』」と断じ、「もはや『首相としての資質』が疑われるところまで来ている」と指摘した。政権が半年を迎えた先月中旬、各紙はそろって社説で取り上げたが、朝日は実績への批判より改革への期待にかなり力点を置いた内容だった。一気に論調が厳しくなった印象だ。

 普天間飛行場の移設問題をめぐっては首相が「3月中にまとめる」と公言しながら「法的に決まっているわけではない」と繕った軽さを産経は「首相の無定見は目に余る」(31日)と非難した。党首討論で首相は「腹案」の存在を明言したが、与党からさえ半信半疑で見られているようだ。

 為政者に発言の重みの自覚を促す際「綸言(りんげん)汗の如(ごと)し」という格言が決まり文句として用いられる。しかし、トップの発言が軽んじられ、もはや個別の発言の責任すら問われなくなりつつあるのが実態ではないか。若林正俊元農相の「代理ボタン」騒ぎとどこか通底する、政治のモラルハザードを感じる。【論説委員・人羅格】

2010年4月4日 毎日新聞 社説

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