【時事(爺)放論】岳道茶房

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尖閣ビデオ 政府対応が招いた流出

2010年11月06日 | 社説
尖閣ビデオ 政府対応が招いた流出

 尖閣漁船衝突事件の模様を収録したとみられる映像が動画サイトに投稿された。政府のちぐはぐな対応で、事件直後なら日本の主張を裏付けた映像が、日中関係修復を急ぐ政府を困惑させている。

 ビデオ映像は何者かが動画サイト「ユーチューブ」に投稿した。中国漁船とみられる青い船が、尖閣付近の日本領海で海上保安庁の巡視船らしい船二隻にそれぞれ衝突する模様を映し出している。

 「ぶつけてくるぞー!」の叫び、中国語による停船命令などの音声も収録され、現場の緊張した雰囲気が伝わってくる。漁船は取り締まりを恐れる様子もない。

 前原誠司外相は「海保が撮ったものだと思う」と述べ、投稿映像が本物という見方を示した。

 九月上旬に起きた事件の直後、中国は巡視船が漁船に衝突してきたと主張していた。当時、映像が公開されていれば漁船の危険航行を立証する根拠になった。

 日本の主張を国際社会にアピールでき、中国の行きすぎた対抗措置をけん制したに違いない。

 ところが政府は公開をためらい逮捕した船長の身柄を送検した。映像は那覇地検が証拠として管理し公開のタイミングを逸した。

 九月下旬、地検が「日中関係への配慮」を理由に船長を処分保留のまま帰国させ公判の可能性がなくなっても、映像は証拠の扱いを受け公開はできなかった。

 この間に政府はブリュッセルで菅直人首相と温家宝首相の「廊下会談」を実現させ関係緩和に動いた。政府は関係修復の動きに水を差すことを恐れ、ビデオ映像公開を遠慮するようになった。

 十月末にハノイで予定されていた首脳の公式会談は関係改善に対する中国国内の反発を恐れた温首相が土壇場でキャンセルした。今月十三日から横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で胡錦濤国家主席との首脳会談実現を目指す政府は、ますます映像の扱いに慎重になった。

 映像流出は真相にふたをした事件の幕引きに反発する政府関係者が、かかわっている可能性が高い。捜査資料の流出は遺憾だが、それを招いたのは政府の混乱した事件への対応ではないか。

 中国は憂慮を表明しているが自らの主張を覆す映像をめぐり、ことを荒立てるとは思えない。流出映像で明らかになった日本の立場の正当性も背景に、政府は主張すべきを主張し首脳会談実現を中国に迫る外交力を発揮すべきだ。

2010年11月6日 中日新聞 社説


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