【時事(爺)放論】岳道茶房

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人民元弾力化 これで矛盾が和らぐか

2010年06月22日 | 社説
人民元弾力化 これで矛盾が和らぐか

 中国が人民元の対ドル相場固定を解除した。初取引が行われた二十一日はわずかな元高にとどまった。ゆっくりとした改革は中国内外の矛盾を緩和しきれず新たな問題を引き起こす可能性もある。

 北京や上海など大都会は訪れるたび、人を驚かす高層建築が現れビル街が増殖する。しかし、夜、灯がともる窓は限られる。投資目的で買われ、住む者もない。

 点在する「城(都市)中村」と呼ばれる地域では、農村出身労働者(農民工)たちが二十年前と変わらない貧しい暮らしを送る。

 輝きが増すだけ暗さも際立つ景観は実勢より低く抑えられてきた人民元のレートにも原因がある。中国は国土と労働力を格安で外資に提供し「世界の工場」として委託加工貿易を発展させた。

 膨大な貿易黒字を抱え、米国などからの元切り上げ圧力にはドルを買い元を売る介入を続け為替相場を維持した。あふれる資金は株や不動産、商品市場に流れ込み派手なマネーゲームを演出した。

 一方、農民工たちの賃金は、ほとんど上がらず農村購買力は振るわなかった。投資と貿易が成長をけん引し、内需が伸び悩む偏った経済発展を続けてきた。

 中国もこの問題を自覚し二〇〇五年七月には対ドル相場の固定をやめ、元切り上げを容認する管理変動相場制に移行した。その後、三年で元の対ドル相場は約20%上昇したが、金融危機の影響で輸出不振に陥ると〇八年八月から再び対ドル相場を固定していた。

 今回の固定解除で人民元は上昇に向かうとみられる。しかし、毎日の元取引の目安になる基準値はドル以外にユーロや円など多通貨の相場を参考にする「通貨バスケット方式」で決められ変動幅は上下0・5%以内と制限がある。

 ただちに貿易不均衡是正や国内の産業構造転換につながるとは思えない。元切り上げをあてにホットマネー(熱銭)と呼ばれる投機資金が流れ込めば、株・不動産のバブルが再燃する恐れもある。

 実効性に乏しく二十六日にカナダで始まる二十カ国・地域首脳会合(金融サミット)に臨む胡錦濤国家主席のメンツを立てた措置という色彩が強い。

 人民元の切り上げは中国への輸出企業には有利、中国に加工を委託している企業には不利に働く。各地で頻発する労働争議とあわせ、日本企業は中国が賃金の格安な工場であった時代が終わりを告げることを覚悟すべきだろう。

2010年6月22日 中日新聞 社説


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