【時事(爺)放論】岳道茶房

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若林議員辞職 何とも情けない汚点だ

2010年04月03日 | 社説
若林議員辞職 何とも情けない汚点だ

 あぜんとするほど情けない不祥事である。参院本会議採決で議場にいなかった議員の代わりに投票ボタンを押した問題の責任を取り、自民党の若林正俊元農相が議員辞職した。

 議案への賛否を表明する行為は言うまでもなく、議員活動の根幹だ。経験を積んだはずの議員がまるで学生の「代返」のように軽い気持ちで代理投票をしてしまうとは、信じがたいモラルの崩壊だ。辞職は当然であり、国会全体の緊張感の欠如も懸念せざるを得ない。

 ことのいきさつはこうだ。若林氏は3月31日の参院本会議に出席したが、隣席の青木幹雄前参院議員会長が途中退席した。その後、10年度NHK予算承認案など計10件の採決すべてで若林氏は青木氏のボタンを押し、投票を代行した。このことが1日発覚し、民主党は若林氏の懲罰動議を提出した。自民党にも議員辞職を求める声が急速に広がり、スピード辞職に追い込まれた。

 若林氏は記者会見で「魔が差したとしか言いようがない。青木氏がすぐ戻ってくると思いボタンを押した」と釈明している。だが、議員が議場にいなければ表決に参加できないのは衆参両院を通じた議会の鉄則だ。このため、重要案件の採決の際、病身をおして議員が登院することも珍しくない。衆院3期、参院ほぼ2期務めた閣僚経験者にそんな当たり前の節度が欠けていたことに、寒々としたものを感じてしまう。

 単なる「お粗末劇」と見過ごせないのは、国会での議決の信用性を損ねた罪深さにある。参院本会議は98年の通常国会から押しボタン方式を導入している。議員の投票行動の明確化のためだが、当時は「牛歩戦術」などの抵抗戦術封じが目的、との指摘もあった。

 今回、若林氏は自らの独断と説明し、青木氏も投票依頼を否定した。青木氏が参院自民の実力者とはいえなぜ無断で代理投票までしたのか、本当に今回だけか、不信を抱かれても仕方あるまい。参院は厳しく事実関係を検証しなければならない。

 押しボタンは隣席からも手が届き、出席議員が投票時まで着席していたかは確認されない。あくまで議員の自覚の問題なのはもちろんだが、必要ならシステム上の課題も点検すべきだろう。

 それにしても、国会に緊張感が乏しい。若林氏は今夏の参院選を控え、今期限りの引退を表明していた。与党側も、閣僚の審議への遅刻や居眠りが批判を浴びたばかりだ。

 政権交代後、初の当初予算審議を終え、重要法案の審議が本格化するのはこれからのはずだ。にもかかわらず、国会自らがその存在をおとしめているのでは自殺行為に等しい。

2010年4月3日 毎日新聞 社説

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