【時事(爺)放論】岳道茶房

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増税論議 「目指す社会」を語れ

2010年06月28日 | 社説
増税論議 「目指す社会」を語れ

 消費税を含む増税論議が参院選の焦点になってきた。税制は、どのような国、社会を築くかの思想や理念で裏付けられなければならない。参院選を通じ、各党は目指すべき社会を語るべきだ。

 「このままでは二年か三年でギリシャみたいになる」。菅直人首相は参院選の遊説でこう演説し、消費税率引き上げなど増税の必要性に言及した。財政悪化で国債が急落したギリシャ危機のような事態を避けるため、増税によって財政を健全化する。将来に備えた論議の提案だ。

 これに先立ち、政府税制調査会の専門家委員会(委員長・神野直彦東大名誉教授)は、消費税率を引き上げて広く国民に負担の分かち合いを求める一方で、これまで弱めてきた所得税の累進構造を回復し、富裕層により多くの負担を引き受けてもらう-とする報告書をまとめた。

 基礎年金と老人医療、介護の福祉三分野の予算は膨らみ、社会保障全体では毎年一兆円の増加が避けられない。二つの税を車の両輪に、税収を回復させて社会保障の安定財源を確保し「支え合う社会を」が報告書の理念だ。

 消費税が1%で二・五兆円の税収を見込むのに対し、所得税は最高税率を現行の40%から45%に引き上げても税収増は四百億円。

 数字的にはわずかだが、そこには再分配機能を強化して、高額所得者も低所得者もみんなが支え合って社会をつくるという理念が込められている。この専門家委の提言を国民が受け入れるかどうか、税の在り方論議が徹底して深められなければならない。

 今回の参院選での違和感は、民主も自民も、二大政党が消費税率引き上げで足並みをそろえていることだ。先の衆院選で民主党が獲得した三百を超える議席は、行政の徹底したムダ削減など、新しい政治に対する期待だったはずだ。各党が競うべきは、まず行政のムダ排除の知恵だ。

 税制や財政健全化論議で大切なのは目指すべき社会の姿が示されることだろう。少子高齢化や経済のグローバル化による雇用の不安定は歴史的に未知の難問だが、国民に選択すべき社会が各党から示されることが出発点でもある。

 政治と納税者との相互信頼が欠かせないことも当然だ。

2010年6月28日 中日新聞 社説


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