【時事(爺)放論】岳道茶房

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企業中間決算 円高は攻めの経営で克服を

2010年11月08日 | 社説
企業中間決算 円高は攻めの経営で克服を

 今年度上期の企業業績は急回復したが、先行きは楽観できない。長引く円高を克服する戦略が問われよう。

 東証1部上場企業の今年9月中間連結決算の発表がピークを迎えた。上場企業全体の経常利益は前年同期比で倍増し、リーマン・ショック前の中間期以来の高収益を記録した。

 世界不況のどん底からV字回復しつつある主要企業の勢いが鮮明になったと言える。

 原動力は、コスト削減の徹底による経営体質の強化だ。新興国向けなどの輸出が好調なうえ、エコカー補助金や省エネ家電のエコポイント制度など、政府の支援策も収益拡大に貢献した。

 トヨタ自動車、ホンダやパナソニックなど、自動車と電機の有力企業が代表例だ。

 これらの業界向けの鋼板販売が伸びた鉄鋼各社や、資源ビジネスが好調な商社も好決算だった。

 一方、ゲーム機の販売が不振だった任天堂は赤字に転落した。内需型の建設、不動産などは伸び悩み、明暗が分かれた形だ。

 しかし、5分の1の企業が通期の見通しを下方修正した。先行きの厳しさを示している。

 1ドル=80円台の円高が続いていることが最大の試練だ。下期の想定為替レートを実勢に見直す企業が相次いでいる。現在の円高水準が続けば、輸出企業の採算悪化は避けられないだろう。

 エコカー補助金終了で新車販売が激減するなど、景気対策の効果は息切れしている。日中関係の悪化が中国での事業に波及するリスクも警戒しなければならない。

 とはいえ、逆境をはね返そうとする動きにも注目したい。

 トヨタは、新興国市場での生産拡大など、海外生産を加速する方針だ。日産自動車は主力車マーチの国内生産をタイなどに移し、東芝は1ドル=70円台にも耐えられる経営改革を目指している。

 多くの企業に必要なのは、ドル建てによる原材料購入を増やすなど、円高に左右されない経営を目指したり、“強い円”を武器に海外企業の買収を仕掛けたりする攻めの経営姿勢である。

 政府も企業活力を引き出すため、法人税率の引き下げや中小企業支援の拡充など成長戦略を迅速に実施すべきだ。有望な内需産業の育成を目指し、医療や農業分野などの規制改革も欠かせない。

 こうした後押しが、海外生産の加速による国内産業の空洞化を防ぎ、雇用確保に役立つことは間違いあるまい。

2010年11月8日 読売新聞 社説


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