中国貴州省とそこで暮らしている苗族トン族等の少数民族を紹介しています。

日本人には余り馴染みのない中国貴州省と、今私が一時滞在中の雲南省や大理白族自治州大理古城について

トン族の鼓楼は奇数層が原則

2016年06月20日 | トン族

从江風物誌(雲南民族出版社)に拠れば、トン族の村の象徴として知られる鼓楼は、原則として奇数層との事です。鼓楼が何故奇数かと云えば、それはトン族が奇数を崇拝するからとの事です。从江县には、現在約100棟程の鼓楼が現存しているとの事ですが、殆んど全てが、5層、7層、9層、11層、13層と云う具合に奇数層が基本との事です。但し、从江県内には例外として2棟だけ、偶数層の鼓楼があるとの事です。私は、偶々この本を手に入れて、目を通していたので、トン族の村の鼓楼は原則として奇数層と云う事知っていたのですが、その様な予備知識が無いと、トン族の鼓楼が奇数層とは気が付かないかも知れません。 

从江風物誌(雲南民族出版社)と云う本は、从江県の新華書店で手に入れたのですが、この様な本は他の市や県の書店では先ず手に入らない物です。私の様に中国語が余り出来ない者にとっては、この本は、トン族の風俗、習慣などを概括的に紹介してあり、沢山写真も載っているので大変分かり易い本です。行ってみれば、トン族を理解する上での入門書の様な本ですが、大変良い本だと思います。

 この本でも紹介されているのですが、从江県内には例外的に2棟の偶数の鼓楼があるとの事です。その一つが上銀譚村に有る鼓楼です。この鼓楼は、12層の偶数層で、大変珍しいとの事です。実は、この村には何度か行った事があり写真も撮ったのですが、当然私も、最初は気が付きませんでした。この本を読んだ後、この偶数層と云う鼓楼は大変珍しいと聞いて、改めてこの村に行った様な次第です。

上銀譚村の12層の鼓楼。
奇数が原則の鼓楼の中では大変珍しい偶数層の鼓楼。「百度」のトン族の鼓楼を説明した件にも「鼓楼」は、全て奇数である。奇数は陽数で吉祥を意味するとの説明がありますが、どういう訳、この村の鼓楼は大変珍しい事に偶数の鼓楼です。  普通は、ナカナカ気が付かないかもしれません。

 

現在中国には貴州省、湖南省等のトン族の住む村には、約630棟の鼓楼と500程の花橋が現存するとの事ですが、その内320棟の鼓楼と290座の花橋が貴州省の犂平県に現存するとの事です。物の本に拠れば、最も低い鼓楼は3層との事ですが、私は3層の鼓楼は見た事はありませんで、私が見た中で一番低い鼓楼は5層の鼓楼です。

 

5層の鼓楼。これは、私が見た鼓楼の中で一番低い鼓楼。3層の鼓楼もあるとの事ですが、私は見た事はありません。肇興郷のあるトン族の村。

 

9層の鼓楼。鼓楼の内では、重要な会議や、宴会、葬儀等も行われるとの事。また、祭りの際には、鼓楼でトン族大歌が歌われます。鼓楼の中心には「火塘」と呼ばれるたき火を燃やす場所があります。春節には、トン族大歌が歌われるのですが、寒いので「火塘」では、たき火が焚かれます。

 

11層から13層が平均的な鼓楼の高さの様な気がします。

 

 

一番上の部分が四角形の物や六角形の物と幾つか種類もあるようです。また、写真の様に、二個の場合と一個の場合があるとの事。

 

 

 貴州省内で、かなりの数の鼓楼を見ましたが、貴州では、11層から13層が一番多い様に思います。

 

紀堂村の鼓楼。抬官人と云う春節に行われる祭りの時の写真です。


述侗村の鼓楼と花橋。

 

梨平県等には、述洞村、岩洞村等と云う様に洞と云う地名が多いのですが、これは元々トン族の住む地域を意味するとの事です。中国でも最大の数のトン族の住む郷として知られる梨平県肇興郷も、元々は肇洞と呼ばれ、文字通りトン族の住む村として知られていた様ですが、何時か分かりませんが肇興郷と名前が変更されたとの事です。現在確認されている最も古い鼓楼は矢張り貴州省は犂平県高僧郷の鼓楼で清朝の物との事です。また、最も古い花橋は明朝初期に建てられた物だそうです。

良く知られている様に、鼓楼の最上部には文字通り牛の皮で作った「鼓」が据えてあり、外敵が村へ侵入して来た時や、重要な会議が開かれる際には、鼓が打ち鳴らされた様ですが、今では鼓が置いてある鼓楼も少なくなっている様です。私もかなりの数の鼓楼を見た積もりですが、実際に「鼓」を見た事はありません。鼓楼がこの様に高いのは、村を離れ外で農作業等をしている人にも「鼓」の音が良く聞こえるためとの事。

また、物の本に拠れば、日本人は一般に奇数を好み、漢族は一般に偶数を好むとの事ですので、そう意味でもトン族は漢族とも違う様です。また、西蔵自治区のラサのポタラ宮は、13階建てとの事ですが、これはチベット族が13と云う数字を最も尊ぶからの事です。四川省の西蔵族の住むある村の「調楼」も、13階建ての事ですが、それも同じ理由からの事。

 

鼓楼の中には、この様な牛の皮で作った「鼓」があるそうです。

 

 最近は観光用に、木製ではない、23層、25層と云う様にバカ高い鼓楼も作られていますが、以前は最高は15層程度が限度だった様です。当然の事ですが、観光用に作られた鼓楼には、「鼓」もありませんし、「火塘」もありません。 

トン族の村の鼓楼



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