IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

THREE DECADES

2005-10-28 12:34:53 | 政治
ハリケーン「ウィルマ」の被害を受けたフロリダ半島南部で住民になかなか救援物資が届かない実態が判明し、政府やFEMAに再び批判が集中しているようだ。また、ハリケーンの影響で電気などのライフラインがストップしたメキシコのカンクーンでは、数千人のアメリカ人観光客が取り残された状態になっているらしい。今日の昼すぎ、僕は通信会社に勤めるアメリカ人とこのニュースを見ながらランチを一緒にした。「なぜ、この時期にカンクーンなのかねぇ」-これが2人の共通した意見だった。日本人にとってのハワイ、ドイツ人で言えばマジョルカ島のように、メキシコのカンクーンはアメリカ人にとって最もよく知られる外国のリゾート地だ(彼らがカナダをアメリカとは違う独立国家と認識していれば、話は別だけど)。だから、カンクーンに1年中アメリカ人観光客の姿があっても驚きはしない。でも、かなり前からハリケーンの通過が予想されてたのに、なぜ行ったんだろうか?地震や爆弾テロと違い、ハリケーンは通過の時間や場所まで天気予報である程度予測できたのに…。さてさて、今日はブッシュ政権にとって大きなダメージとなりうる2つの話を。

ブッシュ大統領から連邦最高裁判所判事に指名されていたハリエット・マイヤーズ氏は26日夜、大統領に電話で指名を辞退する意向を伝え、27日朝になって彼女の事態が正式に受け入れられた。テキサス時代から旧知の仲として知られるマイヤーズへの指名を巡っては、これまでにもブッシュ政権の「友情人事」を批判する声が後を絶たず、ホワイトハウス法律顧問の肩書きがあるとはいえ判事経験はゼロという彼女の憲法観をは常に議論の対象となっていた。マイヤーズ氏の承認作業を行っていた上院司法委員会は、判事経験のない彼女の思想などを理解する目的でホワイトハウス法律顧問としての関連書類を提出するよう求めていたが、ブッシュ政権側は提出を最後まで留保したままだった。退官が決まっているサンドラ・オコナー最高裁判事の後任として指名を受けたマイヤーズ氏だが、民主・共和両党、そしてブッシュ政権支持層の中核を担う宗教保守派からも厳しく批判され続けていた。

ホワイトハウスのスコット・マクレラン報道官が27日の記者会見で明かしたところによると、ブッシュ大統領は26日午後8時半頃にマイヤーズ氏から電話を受け、指名を辞退したいとする意向を聞いたのだという。約12時間後の27日午前、マイヤーズ氏はハワイトハウスの大統領執務室を訪れ、ブッシュ大統領に手紙を手渡ししている。マクラレン報道官は「大統領は今回の指名辞退に失望している」と語ったが、同時にマイヤーズ氏が顧問としてホワイトハウス内に残り、新たな最高裁判事候補者の選定作業に加わるとも示唆している。1987年、マイヤーズ氏と同じようにドナルド・ギンズバーグ氏が連邦最高裁判事の指名を辞退しているが、その時の理由はギンズバーグ氏が過去に大麻を使用した事実が発覚したからであった。マイヤーズ氏の支持者として知られる民主党のハリー・レイド上院院内総務は、マイヤーズ氏による指名辞退を「共和党右派の大勝利だ」と皮肉を込めて言い放っている。

27日午後にはマイヤーズ氏がブッシュ大統領に渡した手紙の内容が公開され、その中で同氏は承認手続きの長期化がホワイトハウスや政府の負担になっている事を懸念し、自ら指名辞退するのが最善の策だったと語っている。マイヤーズ氏が上院によって承認される確立が極めて低かったのも事実で、ブッシュ政権としては「指名辞退」という形で政治的なダメージを最小限にとどめ、新たな候補者を探す方が得策だと判断した模様だ。しかし、今回の辞退がゴタゴタ続きのブッシュ政権にとって新たなマイナス要素となったのも事実で、28日午後までには2人の政権高官(ルイス・リビーとカール・ローブの両氏)が連邦大陪審から起訴される公算が強まってきた。マイヤーズ問題の争点となったのが、妊娠中絶をめぐる彼女の思想の不透明さで、国内の宗教右派はこの点を激しく批判してきた。民主党のエドワード・ケネディ上院議員はAP通信に対し、「大統領にはまだ国をまとめるチャンスが残されています。次の候補者選びでは、極右だけでなく、アメリカ人全体の声に耳を傾けてほしいものです」とコメントした。

CIA工作員バレリー・プレームの身元情報漏洩事件をめぐって、ワシントンの連邦大陪審は28日午後の終了までにブッシュ政権高官数名の起訴を行うかどうか最終的に決定する見込みだ。複数の関係者が27日にCNNに語ったところによると、ブッシュ大統領の腹心として知られるカール・ローブ大統領副首席補佐官に対する捜査が最終段階に入っており、事件を担当するパトリック・フィッツジェラルド特別検察官がいよいよ最終的な決定を下す時が来たようだ。ニューヨーク・タイムズ紙電子版は27日夜、ルイス・リビー副大統領首席補佐官が28日に起訴されるだろうと報じている。記事によれば、ローブ氏に対する起訴は行われないものの、引き続き調査が継続される模様だ。同紙は関係者の話として、フィッツジェラルド特別検査官がローブ氏に対する捜査継続を理由に、28日に終了が予定される連邦大陪審の延長が申請される事になるだろうとも報じている。

CNNが取材した法律専門家の多くは、フィッツジェラルド氏による延長申請の可能性が低いと語っており、ローブ氏も連邦大陪審ですでに4回の証言を行っている。28日に予定されるフィッツジェラルド氏の記者会見だが、現在のところ、どのような内容がいつ語られるのか全く明らかにされていない。連邦大陪審が終了する直前になって意外な結末を迎える可能性もあり、27日のワシントン政界は慌しさにつつまれた。複数のホワイトハウス高官がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、リビー氏は起訴された場合に副大統領首席補佐官を辞任する模様だ。また、リビーとローブの両氏が弁護団を組織して、徹底的に法廷闘争を開始する可能性も浮上している。ブッシュ大統領と側近は27日、いつもと変わらず平静を装ったが、CBSのビル・プランテ記者はホワイトハウス内の緊張状態が次第にエスカレートしてきていると報じている。

27日のワシントン・ポスト紙電子版は、2人のホワイトハウス情報筋の話として、リビー氏がすでにホワイトカラー犯罪を専門に扱う弁護士を選びはじめ、ローブ氏は起訴された際に備えて広報チームの設立を開始したと報じている。また、ホワイトハウスに近い共和党政治コンサルタントによると、アンドリュー・カード大統領首席補佐官は先週予定していた2つの出張を急遽キャンセルし、ブッシュ大統領と連邦大陪審の決定に対する対応を協議した模様だ。ワシントン・ポスト紙の取材に答えたこのコンサルタントは、カード氏が「政権の暗黒時代がやってくるかもしれない」と漏らしていたとも語っている。ブッシュ政権開始以来で最悪のイベントが2つ発生した27日、ハリエット・マイヤーズの最高裁判事指名辞退に加えて、政権幹部に対する起訴が現実味を増してきたことから、今後の政治的ダメージの大きさを懸念する声は少なくない。

マサチューセッツ州にブラジル人移民が多い事は有名だけれど、ほぼ同じ言葉を話すポルトガル移民の数もかなり多い。学生時代、ボストン近郊にあるポルトガル料理店でシーフード料理を堪能した時、何人かのポルトガル系のジイさん達と何時間も話をした記憶がある。テーマはもちろんサッカーで。最高のフットボーラーは誰か?-世界中のあらゆる町で、今日も答えが見つからないまま延々と続く議論だが、ジイさん達は口を揃えて北アイルランド生まれのジョージ・ベストの名を出した。フットボール界だけでなく、60年代イギリス文化の象徴的存在でもあったベスト。ミス・ワールドの美女たちをアストン・マーチンの助手席に乗せて連夜のナイトライフを満喫したマンチェスター・ユナイテッドの長髪選手は、当時最強とうたわれたベンフィカ・リスボンに欧州カップで勝利する原動力ともなった。ロブソン、カントナ、ベッカム、そして最近ではクリスティアーノ・ロナウド…、ベストと同じ背番号をつけた後継者達が10年周期でユナイテッドに登場したが、僕の周囲にも「7番はベストのもの」と言い張るファンは少なくない。以前からアルコールの問題に悩まされてきたベストだが、現在ロンドン市内の病院で重体となっている模様だ。再び元気な姿を見れることを願う。

わたくし、ついに30代に突入しました。明日の晩(現地時間28日)は友達がみんなで祝ってくれるとかで、それなりに誕生日っぽい雰囲気になるのかもしれないけれど、今日はそんな感じが全くしないなぁ。20代最後の夜に何をしていたのかといいますと、とある雑誌企画の情報収集で、ロマンチックな話とは対極的なワシントン政治のネタ集め…。明日はジャズかボサノバを生演奏してくれるクラブに行きたいですなぁ。カール・ローブの顔を眺めてても、ハッピーな気分になれるわけないし。20代半ばの頃、30代に対して漠然とした憧れを持ってて、その気持ちは今でも少なからずある。僕の周りにいた30代の面々が、女も男も関係なく、かなりの割合で格好いい生き方をしてたので、少しでもあんな風になれればと思ったりもしてるんだけど。30才になった今日からも、今までどおり「人生を楽しむ」というモットーを忘れずに…、なんてね。


写真:27日のワシントン市内で記者に囲まれるパトリック・フィッツジェラルド特別検察官 (AFP通信より)

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