IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

もうひとつのワールドシリーズ?

2006-11-01 16:15:56 | 政治
ワールドシリーズではセントルイス・カージナルスがデトロイト・タイガースを破ってチャンピオンになったけど、セントルイスがデトロイトを打ち負かしたのは野球だけじゃなかったようだ。民間調査会社のモーガン・キント社が最近発表したところによると、全米371都市の中で最も危険な町としてセントルイスが堂々の首位となっており、デトロイトは僅差で2位につけている(ちなみに3位はマイケル・ムーアのドキュメンタリーでも紹介されたミシガン州フリントで、ワシントンDCは19位だった)。これは犯罪を6つのカテゴリーに分け、それぞれの発生率などを計算して出されたものらしいんだけど、ニューオーリンズは今回の調査には含まれなかったそう(この調査は今回で13回目となる)。ちなみに、全米一安全な町にはニュージャージー州ブリック・タウンシップが選ばれていました。ワシントンDCの19位には少し驚いたけど(ワースト3に入ると思ってたので)、たしかに夜のセントルイスって独特の気持ち悪さがあったのも事実。これでも、初めて訪れた20年前よりは絶対にマシになったと思うんだけど…。さて、今日は中間選挙直前になって民主党のケリー議員による発言が問題になったというニュースを。

7日の中間選挙を前にして、アメリカ国内では民主党と共和党の関係者らが、演説やテレビ広告の中で対立候補や政党を罵倒する、いわゆる「ネガティブ・キャンペーン」が活発化している。2004年の大統領選挙で民主党から出馬したジョン・ケリー上院議員は30日、カリフォルニア州パサデナの市立大学で講演を行い、ブッシュ政権のイラク政策を厳しく批判したが、共和党はその際に使われた表現が「イラクの米兵を侮辱するもの」と抗議。ブッシュ政権からのクレームに対して「米兵ではなく、ブッシュ大統領に対しての皮肉だった」と主張するケリー議員と共和党との間で、31日の朝から激しい中傷合戦が展開されている。30日にパサデナ市立大学で生徒達を前に講演を行ったケリー議員は、「教育についても言わせてください。とにかくしっかりと勉強する事で、将来必ずその努力が報われるのです。もし今努力しなければ、あなた方はイラクに送られますからね」と語っている。

政治関係の世論調査で知られるゾルビー社は26日、10月後半にロイター通信と共同で実施した調査の結果を発表し、有権者の44パーセントが7日の中間選挙では民主党に投票すると答えたと発表している。同じ調査で共和党を支持した有権者は33パーセントにとどまり、選挙直前になって国民の間で共和党離れが加速している実態が明らかになった形だ。ゾルビー社の代表はAFP通信の取材に対し、7日の選挙で民主党が上院と下院の両方で過半数を制するのは困難ではないと語っている。民主党の躍進が期待される今回の中間選挙だが、ケリー議員の発言がどのような結果をもたらすかは不明だ。ホワイトハウスのトニー・スノー報道官は31日、「ケリー議員は兵士だけではなく、その家族にもきちんと謝罪すべきです。これは間違いなく侮辱なのですから」と語り、30日の発言を厳しく批判した。ケリー議員は31日にシアトルで記者会見を開き、「ブッシュ大統領や、崩壊した彼の政策に対しての批判について謝罪するつもりはない」とコメントしている。

ケリー議員の共和党関係者への批判はさらに続き、過去に例を見ない激しさでブッシュ政権や共和党を糾弾している。「何人もの卑劣な共和党議員が政策について何も語らず、他人の揚足取りばかり行う今の状態にうんざりしています。軍隊経験のない人たちが、実際に米軍兵士として戦った者についての嘘をつくなど、本当に吐き気がします」。ケリー議員はそうコメントした。ケリー議員の発言に対しては、民主党内部からも反発の声が上がっており、ある民主党議員はCNNの取材に、「選挙が終わるまでは、とにかく黙っていてほしい」と不満をもらしている。AP通信は31日、アメリカ国内の選挙で定番のイベントとなった「ネガティブキャンペーン」について報じており、今回の中間選挙で総額1億6000万ドルが選挙CMに使われ、その約9割が相手候補者を中傷する内容だったと指摘している。

少し前に「ハードボール」という野球映画をDVDで見る機会があった。キアヌー・リーブスがシカゴのプロジェクトでクラス黒人の子供達に野球をコーチするという話なんだけど、作品は「がんばれ、ベアーズ!」と「デンジャラス・マインズ」を足して2で割ったような内容で、映画のクライマックスでは本当に涙が出そうになるほどだった(この映画、日本では「陽だまりのグランド」というタイトルだったらしいけど、なぜそんな邦題にしたのだろうか?)。この映画を見たあとで、数年前にラジオのニュースで紹介した黒人コミュニティ内における深刻な野球離れの話を思い出した。全米の野球用グランドの約9割が郊外の住宅地に作られているため、都市部に住む割合の高い黒人層が野球を実際にプレーすることが難しい環境になっている。野球の代わりにアメフトやバスケットボールが人気スポーツとなったんだけど(これは施設の問題だけではなく、それぞれのスポーツがマーケティング戦略に力を入れたためでもあるけれど)、オジー・スミスやダリル・ストロベリーといった黒人の名選手が続々と輩出された時代はもう来ないのだろうか?今年の日米野球で注目を集めるライアン・ハワードはセントルイス出身。彼のような選手がこれからも出てくる事を期待したい。


写真:30日にカリフォルニア州で演説を行った民主党のジョン・ケリー上院議員 (AP通信より)


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