IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

知らない国での戦争

2006-05-03 13:45:16 | きょういく
前にも少しこのブログで紹介したポール・グリーングラス監督の「ユナイテッド93」、2日前のブログではユナイテッドと書くところを「フライト」と間違えて書いてしまったんだけど、ようやく映画館で見ることができました。監督がグリーングラスで、音楽を担当したのがジョン・パウエル。この2人はマット・デイモンの「ボーン・スプレマシー」でもコンビを組んでいるけれど、映画全体のつくりはグリーングラスが2002年に監督を務めた「ブラッディ・サンデー」に近く、映画というよりはドキュメンタリーを見ているような気持ちにさえなった。何日か前には「パラダイス・ナウ」というパレスチナ映画をDVDで見たんだけど、映画の中のドラマ性で言えば、テルアビブで自爆テロを企てる2人の若者を描いたこちらの方により強い衝撃を受けた。どちらも秀作だと思うので、機会があればぜひチェックを。さて、今日はアメリカ人の若者の地理音痴が深刻なレベルにあるというニュースを。日本の位置を正確に示せないアメリカ人は少なくないけど、自分の国の兵士が戦っているイラクやアフガニスタンがどこにあるのか分からないという人も少なくないようだ…。

アメリカがイラクでの軍事行動を開始してからすでに3年以上が経過したが、最近行われた調査の結果、アメリカ人の若者が10人中6人の割合でイラクの場所について正確に把握していない事が明らかになっている。米ナショナル・ジオグラフィック協会が民間調査会社の協力を元に行った調査によると、回答者の約3分の1がハリケーン「カトリーナ」で大きな被害を受けたルイジアナ州の位置を答えられず、ミシシッピー州の位置を答えられなかった回答者は約半数に達している。調査はアメリカ国内の18歳から24歳までの若者約500人を対象に行われた。アメリカの若者の世界地理オンチは以前から一部の教育者の間で問題視されてきたが、今回の調査結果を深刻に受け止める有識者は少なくない。「地理音痴は将来的な外交との関係を悪化させ、アメリカを孤立させる原因になりかねません」、ナショナル・ジオグラフィック協会のジョン・ファーフェイ会長はCBSニュースの取材にそう語った。

しかし、地理音痴は世界地図だけではなく国内地図でも同じだったようで、ファーフェイ会長は若者が地理への関心を失っている現状に嘆く。「アメリカの国内地図を前にして、ニューヨーク州の位置を正確に答えられた若者が半分しかいなかったのです。まぁ、それでもルイジアナ州よりは少しマシでしたけどね。こういった結果を目にして、ただただ驚いています」ファーフェイ会長はそう語った。ナショナル・ジオグラフィック協会では現在「マイ・ワンダフル・ワールド」と題したマルチメディア・キャンペーンの計画を進めており、8歳から17歳までを対象にしたこのキャンペーンは、子供達にパソコンなどで楽しみながら世界地理に親しみを持ってもらうのがねらいだ。

調査結果のサマリー:

・全回答者の3分の1が地図上でルイジアナ州の位置を答えれず、48パーセントがミシシッピー州を位置を答えられなかった。

・ニュースで報じられる国々の場所を知っておくのは重要だと答えた回答者は全体の30パーセント未満で、外国語習得は大切なスキルだと答えたのはわずか14パーセントだった。

・全回答者の3分の2が2005年にパキスタンで7万人以上の犠牲者を出した大地震について知らなかった。

・全回答者の約60パーセントが中東地域を示した地図でイラクの場所を答えられなかった。

・アメリカ産業界のアウトソーシング場所として知られるインドだが、今回の調査に参加した若者の47パーセントがアジア地域の地図上でインドの場所を示す事ができなかった。

・全回答者の75パーセントが中東地域を示した地図上でイスラエルの場所について答えられなかった。

・全回答者の60パーセントが朝鮮半島を二分する38度線が世界で最も警備の厳しい国境地帯だと答えられず、30パーセントが世界で最も警備の厳しい国境地域はアメリカ・メキシコのものだたと回答した。

サッカーのワールドカップ・ドイツ大会開幕まで、残すところ37日と12時間あまり。ブルース・アリーナ監督率いるアメリカ代表のメンバーが早くも2日に発表されていて、DCユナイテッドのベン・オルセンが最終メンバーに名を連ねた。16歳のフレディ・アドゥの最終メンバー入りは極めて低いと国内メディアは予想していたけれど、やはり彼が最終メンバーに名を連ねる事は無かった。メンバーの中に僕が期待していたテイラー・トゥエルマンの名前は無く、アリーナ監督は今季のリーグ戦でゴール欠乏症に悩まされているストライカーを代表メンバーから外している。以前に某夕刊紙のコラムでも書いたんだけど、今のアメリカ代表は間違いなく2002年のチームよりもレベルアップしていると思う。ランドン・ドノバンやダマスカス・ベアズリーといった名前は日本のサッカーファンの間でも知られているようだけど、もしドイツ大会でアメリカ代表の試合を見る機会があれば大会前に23歳の誕生日を迎えるボビー・コンベイという選手に注目してください。16歳でプロデビューしたコンベイ、現在はイングランド1部のレディングというチームで主力として活躍していて、レディングは来シーズンからプレミアリーグで戦う(プレミアへの昇格はクラブ史上初)。すでにイギリスのサッカー専門誌が「注目に値する選手」として取り上げていて、数年前までDCユナイテッドのアイドルだった彼がどんなゲームメイキングを展開するのか、今から待ち遠しくなってきた。


写真:「ユナイテッド93」の1シーンより。 (AP通信/ユニバーサル・スタジオ)