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● なにが「謀略」どこまで「謀略」 ●

2009年10月01日 | 今週の注目記事
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 9月11日発行の週刊金曜日№766が、22ページから、「今こそ問われる米国の『陰謀・謀略』の歴史」と題し、前防衛大学校教授に聞くという形で、成澤宗男氏が再び「陰謀論」を展開しているので、一言しておきたいと思います。

 展開される論法を少々乱暴に纏めると、次のようになるでしょう。
 「米国はこれまでの歴史の中で陰謀・謀略を多用してきた。従って911もまた米国の陰謀・謀略である。」 だが、これは推論としていささか無理があるのではないでしょうか。

 今回の議論は孫崎さんという方の個性なのか立場なのか、今までのような「ビルは仕掛けられた爆薬で爆破された」だの「ペンタゴンに突っ込んだのはミサイだだのといった、露骨で滑稽な陰謀論は抑え気味に語られています。また歴史上、例えば米西戦争やノースウッズ作戦、トンキン湾事件など、実際に謀略かそれに近かっ
た事実もあるのは確かだと思います。更には旧サダム政権とアルカイダの関係なども、書いてある通りではないかと私も思います。しかしだからと言って911もまた謀略であり、陰謀であるということにはならないでしょう。
 そんなことを言ったら、張作霖の爆殺も、柳条湖も謀略だから、未だに日本は謀略国家だという話になってしまいます。(米西戦争は張作霖謀殺の30年も前です。)

 例えば1923年の関東大震災では、6000人にも上る朝鮮人、600人にも上る中国人、60人にも上る日本人が惨たらしく殺されたと言われます。(実数はちゃんと調査されていませんので、正確ではないですが。)これは政府の謀略である面は確かにあります。しかし誰も地震そのものを政府の陰謀だとは言わないでしょう。天災ですから当然なのですが、そうした天災を好機として戒厳令を敷き、戦争
や政府に反対する者を拷問で殺し、民衆を煽って未曾有の人災を重ねたメカニズムは、ぜひとも解明されねばなりません。そうでないと次の地震のときに危ないのは我々だからです。
 911の場合は、天災ではありませんから、その発生そのものに謀略が含まれる可能性は確かにあります。だが911を奇貨として、民衆を煽って戦争に向かわせたことこそブッシュ大統領の「陰謀」であって、その背景にある南北問題や資源利用の偏在から目を反らせ、真の原因に目を瞑らせて戦争を作ってしまったメカニズムこそ、
告発し解明すべきだと思うのです。ところが、事件そのものが「アメリカ政府によって仕掛けられた謀略だ」とか「ビルは情報機関によって仕掛けられた爆薬によって倒壊したのだ」などとしてしまったのでは、肝心のメカニズム解明の焦点がずれてしまいます。つまり、彼らが事件をどう利用したかが追及されるべきなのに、そもそも事件を起こしたのが彼らだとなってしまったら、リアルで逐時的な解明が出来なくなると、私は危惧するのです。
 すなわち、「陰謀論」こそ、真の陰謀から目を逸らせる働きをするというのが、私の指摘です。
(草場純)

※表紙画像は9/25号

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