猫山の乳がん日記

2009年11月、2年半かかった乳房再建が完了。ホルモン治療は副作用のため1年間で中止し、無治療です。

「代替医療のトリック」

2010年03月29日 | 読む

「代替医療のトリック」サイモン・シン&エツァート・エルンスト 著






著者しんさん(←いきなり馴れ馴れしい)は、池澤ナツキ氏が尊敬する
一流科学ジャーナリストだとかで、こういう興味深げな本を紹介していました。
共著者のエルンストさんが代替医療学部の教授という組み合わせも
おもしろいです。

この本では代替医療の代表、鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法
が「科学的根拠にもとづいているか」を徹底検証していきます。

鍼治療はいかにも患者が刺されたように感じる&見える偽鍼を開発して
臨床試験を行いました。

結論から言うと、タイトルから想像できるように、
一部に微々たる効果があるのみで、4つの治療法すべて、
現代医療研究の水準に適う科学的根拠がありませんでした。

多くの人が症状が改善しているのはプラセボ効果だというわけです。

この4つ以外の代替療法についても巻末に一覧が付いています。
(「風水」まであります。あれって「治療」だったのか)
セントジョーンズワートと魚油以外はほぼすべてダメダメです。


読んでいて、私の体験で、プラセボでは説明つかないことがあるなと思ったのは、

・以前肩凝りのために鍼治療を受け始めたとき、
毎日港に停泊する船で生活しているような感覚がする(めまいの一種か)
という症状もあった。
・その頃は肩凝りや腰痛など筋骨格系以外の症状に
鍼が効く(本書によれば効かない)と知らなかった。
・しかし、問診で肩凝り以外の症状を聞かれたので、一応上記の症状も答えた。
・鍼灸師は治療の際、何に効くツボかなどを説明せずに鍼を数本刺していた。
・数回の治療後、「めまい、治りましたね?」と言われ、
そういえば船から陸に上がっていることに気がついた。

この場合、鍼灸師も「鍼はいろんな症状に効きまっせ」とは言わず、
私も肩凝り以外の治療を行っているとは知らずに治療を受け、
患者からの自己申告なしで、「治癒している」ことを施術者が察知しているので
プラセボでは説明つかないでしょう、と思ったのですが
しんさんはぬかりないです。

こういうのは「偶然の一致」で、たまたま自然治癒力で回復期にあるときに
治療を受けたということ。

慢性病は悪化と改善を繰り返すので、回復期と治療した時期が重なる
時期はいくらでもある。
もし治療で悪化したら「好転反応」と言えば済む、ということです。
  

たくさんの研究結果を読んでいて、
代替医療の効果のなさよりも、プラセボ効果の高さに関心してしまいました。
「人間は詳細に観察されると、健康状態が改善することが分かっている」そうですが
偽治療+観察でこんなに成績を出せるものかと。

代替医療を「商売道具」として利用している人が多すぎる、
利用される側も無知すぎる、
「通常医療」での治療が必要な症状までプラセボ効果で和らげるのは危険という
しんさんの書いてることは、いちいちまともです(なんたって一流科学者ですから)。

一方で、「通常医療」では「なすすべなし」と診断された人が
代替医療に「エビデンス」がないと分かっていても、
なんだかよくわからないけどたくさんの人がよくなったらしいというレベルだと
分かっていても、その治療を試そうとするのも、まともだと思えてしまう。




        

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 -タワラマチ

「悪性でした」と先生が言ったから三月二十九日は告知記念日 -ネコヤマチ

Comments (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 婦人科再訪 | TOP | ひっそり3周年 »
最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (whitebird)
2010-03-30 17:56:28
某先生によると「プラセボ」というのは比較対照実験では結構な壁でなかなか越えるのは難しいのだそうです。

日本では試験が原則無償だから、参加する人には「治りたい」というモチベーションが強くあるのかもしれませんね。

ただし、そういう人々からお金を巻き上げる商法はいただけませんが…

「あなたの場合は絶対癌よ」、キョーレツで日付もおぼろな告知記念日 by シラトリッチ(ロシア人かよ
返信する
シラトリッチさんへ (猫山)
2010-03-30 20:49:53
>「プラセボ」というのは比較対照実験では結構な>壁でなかなか越えるのは難しいのだそうです。
シンさんも、代替医療も通常医療と同じあの高い壁に挑戦せよ、というようなことを書いてました。

参加が有償のほうが「元をとってやるぜ!」とモチベーション高まるのかと思っていましたが、どっちなんでしょうね?
返信する

post a comment

Recent Entries | 読む