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社長ノート

社長が見たこと、聞いたこと、考えたこと、読んだこと、

春秋 日本経済新聞

2018-01-27 22:54:00 | 日記

 「冬はつとめて。雪の降りたるは、言ふべきにもあらず」。清少納言はこの季節の早朝の風情を「枕草子」でめでた。しかし、千年余を経た宮仕えの我々は記録ずくめの寒さに身を縮めるばかりで、そんな余裕はとても持てない。つらい通勤の日々がやっと小休止した。
 けさはあたたかな布団に存分、長居した方も多いのではなかろうか。東京は48年ぶりの氷点下4度、さいたまも統計を取り出して以来の同9・8度など列島ごと冷凍庫に収まったような週だった。意外に雪と寒気に弱かったのは首都高速で、高架が上下から製氷皿のように冷やされ、全線の復旧には97時間も要したという。
 水道管の破裂が相次ぎ、電力需給も逼迫気味と聞けば、インフラの防寒も大切と改めて気付く。それでも、この数日は子どもらにとってめったにない自然観察の好機だったろう。雪だるまをこしらえ、小さなつららに手をのべたり、水たまりにできた氷をすくい取ったり。「もっと雪降らないかな」と無邪気なものである。
 漱石の「火鉢」は朝から冷気にすくみ、いら立つ自らを描く。昼すぎに思い切って銭湯に赴き、帰って妻が出すそば湯をすする。書斎で炭の炎や音に接し、初めてその日のあたたかみを感じた、とつづった。やっとたどり着いた小さな安堵だろう。冬との戯れを忘れた身として、自分なりのあたたかみを探す週末としたい。