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社長ノート

社長が見たこと、聞いたこと、考えたこと、読んだこと、

産経抄 産経新聞

2016-10-30 21:24:19 | 日記
   政権の引き締めや活性化を促す好敵手はいないか

 野村克也氏がプロ野球のヤクルト監督に就いて間もない頃、試合でエラーをした野手がベンチに戻ってきた。控えの選手は「ドンマイ、ドンマイ」となじる気配もない。牧歌的なシーンに野村監督が血相を変えた。
 「傷をなめ合うのはアマチュアのやることだ」と(『巨人軍論』)。かりそめにもプロを名乗るなら、ミスへの慰めも頬かぶりも選手を磨く砥石(といし)にはならない。個々の器を鍛えるものは自軍、敵軍を問わぬ好敵手との切磋琢磨(せっさたくま)であり、ベンチや外野席のやじだろう。
 政道に目を光らすべき報道機関は統制下で政府のお先棒を担ぎ、改革派の雑誌は廃刊の憂き目に遭う。インターネット上の言論サイトは閉鎖され、耳に痛いやじは虫の息にある。一党独裁の政府を球団にたとえるのも妙だが、まともなチームなど組めるはずもない。
 中国共産党の中央委員会総会で習近平国家主席が「核心」と位置づけられた。絶対の権威を手にしたということらしい。今後は「反腐敗」と銘打った粛清でさらに政敵を締め付け、国外では威嚇と軍拡に訴え、東・南シナ海で新たな挑発行動に出る可能性もあろう。
 さて、日本の政治は―と書いて思案する。安全保障で手を尽くしてきた安倍晋三政権だが、自民党に「一強」の油断も見える。経済政策でほころびが目立ち、閣僚の不手際も多い。政権の引き締めや活性化を促す好敵手はいないか。エラーをなじるやじは出ないか。
 「V9」時代の巨人には一つのミスにも味方の痛罵が飛んだという。野党が「自民一強」をうがつ好敵手たり得ない以上、個々を磨く砥石は自前で調えるほかない。「ポスト安倍」を掲げて若手が旗を揚げる一驚があってもいい。必要なのは政治のダイナミズムであり鮮度である。