精神世界と心理学・読書の旅

精神世界と心理学を中心とした読書ノート

『心と脳の正体に迫る』02

2007-03-31 23:32:17 | 科学と精神世界の接点
◆『心と脳の正体に迫る』天外伺朗・瀬名秀明(PHP、2005年)
天外の考え方で共感できるのは、「あの世」を時間・空間が定義できない世界だとする点である。死んではじめて「あの世」に行くという考え方は間違いで、生きているときにも「あの世」に存在しているという捉え方である。「この世」と「あの世」は同時に存在している。私たちが、「自我」に執着して生きている限り、時間・空間の世界にどっぷりと浸かって生きている。執着がなくなると、たとえ死なずともそこに「あの世」つまり、「永遠の世界」が出現する。それは、時間がずっと続く世界ではなく、時空を超えた世界である。般若心経の中の不生不滅、不増不減とは、そういう世界のことを指す。それは、まさに悟りの世界であろう。

上のような考え方は、最近私にとってほとんど確信に近くなっている。悟ったからではない。相変わらず「自我」には執着しているが、「自我」に関係する一切を失ったとき、そこに何か開けるのかは、分かるような気がする。不生不滅の世界が私たちの存在に背後に開けている、ということが分かるような気がする。

臨死体験者の多くが、体験後に精神的な変容を遂げるのは、「永遠の世界」に触れるからである。光の存在やその他のヴィジョンは、何かしらこの「永遠の世界」に関係する。

にもかかわらず天外は、「結論として臨死体験は幻覚の可能性が高いと思う」と言う。死ぬ時の自己防衛本能である種の「脳内麻薬」が分泌され、LSDと同じような幻覚作用を起こすのだという。結局、天下は、「あの世」を時空を超えた世界と捉えながら、臨死体験における「悟り」と、時空を超えた「あの世」観とを、本質的な意味で結びつけるという発想には至っていないようだ。

しかし、この本を読んで私も再び、臨死体験と精神変容の問題への関心が高まった。臨死体験の本を書いた頃よりは、また少し深い視点から、考えることができしそうな気もする。


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