精神世界と心理学・読書の旅

精神世界と心理学を中心とした読書ノート

「気と経絡」癒しの指圧法(遠藤喨及)

2010-04-20 11:43:31 | 気功
◆『「気と経絡」癒しの指圧法 (講談社+α新書)

気について長年の治療と研究に基づく驚くべき発見と真の独創性に満ちた本だ。気に特別の関心がない人にも読むことをお勧めする。

遠藤は、ある日患者の経絡がイメージとして見てとれるようになり、それを境に気についての様々な発見をしていく。それが治療効果という事実に裏付けされているだけに、気という奥深い世界にまったく新しい視野を開いてくれたような気がする。

経絡も経穴も絶対固定的なものなど存在しない。時代とともにあるいはひとり一人の中でも、つねに変化し、流動している。

経穴が変化することは、故中川雅仁氏も実践に基づいて主張していたし、私も自分の労宮が変化することで確認していた。

また遠藤氏は、中国古典にない新しい経絡も多数治療中に発見している。中国古典の経絡経穴図を千年一日のごとく信じることが変化流動する気の世界の現実をいかに見失わせるか。

気の真実がどこにあるかを知ろうと思うなら必読の本だ。

魂が癒されるとき(帯津良一、津村喬)

2010-04-17 18:51:03 | 気功
■『魂が癒されるとき―気功・ホリスティック医学・ガン治療をめぐる対話』(創元社)

津村氏の書いたものは前から好きであったが、この対談も期待を裏切らなかった。帯津氏 の他の対談などはいくつか読んでいるが、西洋医学と気功、東洋医学、心理療法等を結合したガン治療の、帯津三敬病院での具体的実践をまとまった形で読めて、興味深かった。

津村氏は、日本に気功を紹介し広めた草分け的存在であり、その文章にはつねに広い視野 と見識、おおらかな温かさが感じられる。帯津氏もガン治療の現場に気功を導入して大きな 成果を上げる、日本の気功界の代表的な人物だ。その二人の対談が面白くないはずがない。  

津村氏が日本に気功を紹介する過程での、帯津氏がガン治療の現場に気功を導入するうえ での、それぞれのいきさつや苦労が興味深く語られる。中国気功界の問題点や中国気功界に 日本の岡田虎二郎、藤田霊斎、霊子術などが与えた大きな影響など興味深い話題もある。  

二人とも外気治療に対し一定の評価をしつつも、金銭をとっての外気治療にはかなり批判 的である。あくまでも自己鍛錬が中心で、気功師はそれを援助するのがいいという考え方のようだ。日常生活の中で気功をどう生かすかを大切にしている。  

本書に一貫して流れているのは、人を癒す、癒されるということを狭くとらえず、武術気 功、芸術気功、教育気功、環境気功など気功全体とのつながりのなかで治療文化を理解する と言うことだろう。さまざまなジャンルを含む気功を、自己調和、生命場の調和を深めていくプロセスとしてとらえ、そうした意味での自己成長の流れのなかで治療や癒しを理解する、あるいは宇宙との一体感というような「さとり」をも理解するということだろう。  
この対談は、いま読んでも新鮮で、逆に気功ブームが去って久しい今だからこそ学ぶとこ ろが多いと思った。

☆気功全体へのもう少し入門的な良書としては、津村喬『気功への道』(創元社)を挙げたい。気功の定義から始まり、伝統気功と現代気功の歴史の簡潔な紹介、気功法の紹 介の紹介と、密度の濃い内容となっている。Amazonなどでも入手可能のようだ。

整体入門(野口晴哉)

2010-04-16 18:36:36 | 気功
■『整体入門 (ちくま文庫)』(ちくま文庫、2002年)

本書は、1967年に一度出版されたが、長いこと絶版になっていたが、2002年6月に 文庫本化されたもの。

体の自発的な運動を誘導して体の偏りを正すという「活元運動」、体の本能的な力を使っ た「愉気法」など、野口晴哉自身の言葉で語られるを直接読めるのがうれしい。

野口整体にはずっと関心を持ち続けている。私のサイトの「覚醒・至高体験事例集」や「臨死体験事例集」に収録して いる渡邊満喜子氏も「活元運動」の体験が大きな転機となっていた。私がほそぼそと行なってきた自発動気功は「活元運動」に共通するものだとは思っていたので、野口整体に触れたいという思いは強かった。

読んででますます興味が湧いた。一人で行なう活元運動も面白いが、二人で組んでやる活元 運動はなお面白い。気の交感作用によって一人でやるのとは全く違った力が働き出すという。

活元運動を行なっていると、体に徐々に変化が現れてくる。体が敏感になって、体の健康 を保とうという働きが高まるのだが、その「反応」に三段階があるという。これも興味深 かった。

第一段階は、眠くなったり、だるくなったりする弛緩反応。体がゆるんで、妙に疲れたよ うな感じだが心地よいなど。

第二段階は、熱が出たり、下痢をしたり、体中が汗ばんだり、痛みが起こったりする過敏 反応。体の皮膚の下を水が流れるような感じを伴うという。急性病にも似る過激な変化が起こってきたりする。

そして第三段階は、体の老廃物や毒素が体外に排泄される排泄反応。汗、尿、皮膚病等さ まざまな形で排泄されるらしい。排泄が行なわれるたびに体は快くなるという。

こうして体の偏りや歪みが正され、浄化され、自然治癒力を回復していくらしい。 このほか野口整体独特の体癖論や、それに基づいた体癖修正方法が具体的に記されている。

(その後、筆者は何度か朝日カルチャーセンターなどで野口整体に触れている。)

野口整体・ 病むことは力(金井省蒼)
健康生活の原理・活元運動のすすめ(野口晴哉)

健康生活の原理・活元運動のすすめ(野口晴哉)

2010-04-13 09:34:09 | 気功
◆『健康生活の原理・活元運動のすすめ』(全生社)

講演の記録なので野口晴哉の本のなかでは分かりやすい。その基本的な考え方を知るための入門書である。この本では、大きく二つの視点から語られている。

まずは病気の意味についてである。 「病気をする人は、病気をしないといけない状態になっている。そして病気をして経過すると、今までの疲れが抜ける。眠っている力が出てくる。ひょっとしたら病気はそういう居眠りしている力を喚び起こすためになるのではないだろうか。」

この考え方は、『風邪の効用』でも強調され、野口整体にとって基本であり、また活元運動についての考え方とも重なる。活元運動とは、人間に本来備わっている自然治癒力によって体がバランスを取り戻そうとする運動だ。思わずクシャミをしたり、アクビをしたり、無意識に痛いところに手を当てたりするように、体がひとりでに動くのも一種の活元運動だ。

病気もまた、活元運動と同じように体のバランスをと取り戻そうとする反応と捉えられる。しかし、訓練を重ねていると、徐々に体が敏感となり、体が必要を感じた時に、バランスを取り戻すために最も適した運動が出やすくなるという。人間に備わる自然のリズムに添って動く活元運動が活発になれば、それによって自然に健康が保たれるようになる。

もうひとつ野口整体の基調になるのは、「外から気を伝えるというのではなく、 気と気が感応して、相手の中に元気が沸き起こる」という「感応」の考え方だ。愉気(ゆき)法とは、「人間の気が感応し合うということを利用して、お互いの体の動きを活発にする方法」であるという。愉気して呼びかけると、呼び出されたままに感応して動き出してくる。気は、体の中の勢いを誘導する。とくに体調が崩れたひとは、早く快復しようとする動きが起こる。弱い人は丈夫になろうとする要求が動きだす。

活元運動の誘導も、人間が気に感応するという働きを使って成立する。なぜ動き出すのか分からなくとも、また動かそうという格別の工夫をしなくとも、ひとりでに自然にしたがって体が動きだしてくる。そういう動きで体を整え、丈夫を保つの が活元運動なのである。本書では、活元運動を誘導するための具体的な訓練法にも触れられている。

本書は一般の書店では入手しにくいようだが、全生社の以下のサイトで入手できる。また以下の本も活元運動を知るのに参考になる。

http://www.zensei.co.jp/haruchikabookpage/bookj.htm

わたしと整体法―活元運動のすすめ

野口整体・ 病むことは力(金井省蒼)

2010-04-07 23:23:12 | 気功
◆『野口整体 病むことは力』(春秋社、2004年)

野口整体へのたいへん分かりやすい入門書になっている。著者は、野口整体の道場を開 いて30年、おそらく野口整体の正統を引き継ぐ数少ない指導者の一人だろう。その豊富な指導体験に基づき、何人かの体験者の体験談を柱にしながら、野口整体の中心となる活元運動や愉気の何たるかを語っていく。長年の指導経験からにじみ出るような言葉である。

野口整体では、ただ故障を探し出し、そこを治せばよいという考えかたをとらない。生理的な故障、異常が起こるのは、その背後に自由、性、成長、自発性、要求の抑圧があり、その反動であることが多い。そういう抑圧や不満が体の病気として返ってくる。体に起こることに偶然はない。病気になるのも、事故を起こすのも、生き生きと輝くのも、かならずわけがある。そういう自分を客観的に観ることができるようになると、生き方が変わる。

著者の金井氏は、野口整体のとくにこういう部分、「心療的な整体指導」という側面を温めてきたという。おそらくこれは、野口整体の正統であろう。体の故障と心理的な問題を一体のものとして捉える視点は、プロセス指向心理学の創始者、ミンデルの考え方 に深く共通する。ミンデルは、「病気や身体症状などのマイナスと把握されやすいものに隠されたメッセージ・知恵を信頼し、それを自覚的に生きることによって全体性が回復される」という。

そういえば、野口晴哉の評伝『野生の哲学』を書いた永沢哲も、ミンデルの『紛争の心理学―融合の炎のワーク (講談社現代新書)』で、長く熱のこもった序文(素晴らしいミンデル賛歌)書い ていた。野口整体は、気と体(体癖)についての理解が深いが、プロセス指向心理学は、 心理療法的なアプローチの確たる方法をもち、またドリームボディという概念に代表されるような世界観としての自己表現に優れている。

野口晴哉は、病気とは「要求」であるという。病気になりたい要求。自分の体を壊してでもかなえたい要求があるときに、人は病気になる。活元運動や愉気には、そういう押さえつけられた要求を解放する働きがあるようだ。自分に対面する。知らなかった自分が見えてくる。体が素直になることで、感情的な解放も起こる。 この本では、活元運動や愉気によって、体のゆがみがとれたり、ゆるんだりするプロセスと、それと一体となって心理的なトラウマが解消されていく事例が多く語られている。 体・心・気が一体のものとして、体のゆるみが、心の開放、気の充実につながっていく様子がよく分かる。心理的成長と気という私の関心の二つの方向が、ここでは一体のも のとして語られ、統一的な方法論として確立されている。

たとえばある女性は、自分自身が感情的にいやなことは一切向き合ってこなかった。野口整体に取り組むなかで、そういう自分の奥深い「あり方」に気づき、今までの価値観が一度壊れるという精神的な危機に直面した。そういう経過ののち、ある日彼女は、「体も心もゆるゆるにゆるんで、ただいるだけで心地良い」という状態を体験する。それは、究極の「整体」状態、体の整った状態であり、そうなるとまるで「お風呂に入りっぱなし」のように、自分の存在そのものが楽しくなるのだという。

野口整体の指導は、本当に蘇生するためにこそ、古い価値観を打破することを重視する。 人を「不整体」にしている観念を捨てる。心と体の、不必要な「こり」をなくしていく。 そうすることで元からある気、「元気」が発揮される。 病気が心の状態に関係すると主張するだけでなく、体の歪みやしこりを取り除くことで、体だけでなく心もゆるむ、心がゆるむことで体がゆるむ。以上のことが、活元や愉気と いう独自の方法、体癖論や骨格の歪みについての具体的な理論によって支えられているのである。

風邪の効用(野口晴哉)

2010-04-06 23:36:16 | 気功
◆『風邪の効用 (ちくま文庫)

同著者の『整体入門 (ちくま文庫)』とならんで文庫本で読めるようになった のがうれしい。これをきっかけに野口整体が再評価されることを祈る。  

一読して従来の風邪についての通りいっぺんの考え方が吹き飛ぶような思いがする。風邪は、からだのゆがみや不自然な疲労を癒し生体のバランスを取り戻すために必要な大切なプロセスだとする主張は、眼を開かれる思いだ。著者は、「風邪を 引くとたいてい体が整う」、「風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為だ」とさえ言う。体を酷使して、ある部分が「偏り疲労」の潜在状態になって弾力性を失うから風邪を引く、そして風邪を引いたあと回復する。

癌になったり脳溢血になったりする人は、得てして風邪も引かない場合が多いそうだ。風邪を引かないのは、むしろ体の調整作用や柔軟性が失われた結果であるから注意せよと言われてハッとする人も多いだろう。実は私もその一人であったが。

風邪を安易に治してしまうのではなく、完全に経過させて生体の柔軟性を取り戻す方法が、独特の「体癖」論によって論じられる。風邪の講話の記録なので読みやすい。

野口晴哉が風邪について語ったことは、プロセス指向心理学の創始者アーノルド・ミンデルの次の言葉を思い出させる。「プロセスワークの基本的な考え方は、自分が体験できるすべての体験は、それ自身の展開、解決、成長を含んでいる、ということです。自分に見えるビジョンや、聞こえる声や、からだの痛みの中にあるメッセージは、決して幻想などではなく、自分自身に向かう急行列車なのです。(『自分さがしの瞑想―ひとりで始めるプロセスワーク』地湧社)

体が風邪をひくというプロセスもまた、「それ自身の展開、解決、成長を含んで」いて、自分のからだからの大切なメッセージになっているのかも知れない。

宇宙とつながる気功レッスン(メグミ・M・マイルズ)

2010-04-06 15:55:05 | 気功
◆『宇宙とつながる気功レッスン

著者紹介によると、24歳の時に中国へ渡り気功を学び始め、その後、世界各地の音楽や舞踏など伝統文化に接しながら独自に気功体験を深めたとある。カナダに在住する人だ。中国で三人の先生について気功を学んだ頃の体験や、その後、個性豊かな一人弟子「ちゃーちん」の素朴・率直な質問に苦労して答えながら、気功を教えたり、治療したりする姿が、とても分かりやすく愉快な文章で書かれている。必要なところだけ読もうと読んでいたのだが、面白くてついつい普通に続けて最後まで読んでしまう。

体験は、具体的に正直に書かれている様子が感じられ、とても参考になるし、自分も気功を再開しようと、刺激になった。中国で相性の合わない先生の元を去る話、見込んでくれた先生との交流、自発功の展開、樹木との気の交流の話その他、様々な気の体感を、上から教えるという形ではなく、自分が歩んできたプロセスとして書いているから親近感がもてる。また、師匠を選ぶときの人間を見る目などにこの人の人柄が出ており、書いていることは信頼できるなと感じる。気功を知らない人のための入門書としてもおすすめだ。

私自身、樹木との気の交流もしたし、自発功もやっていたので、これらの部分はとくに興味深く読んだ。もちろん私よりもずっと深い体験だが、たいへん刺激になり、私も再開したくなった。 また、気功と精神的な体験、成長、覚醒との関係も体験的に語られており、両者の深い関係を充分に感じさせるものだった。このあたりの体験の記述にも、かなり刺激された。 ぜひ再読したい。