精神世界と心理学・読書の旅

精神世界と心理学を中心とした読書ノート

脳がよみがえる断食力(山田豊文)

2009-07-30 12:05:32 | 食と健康
◆『脳がよみがえる断食力 (青春新書INTELLIGENCE)』(青春出版社)

断食の様々な効果について、その生理学的な根拠についても詳しく解説しており、充分に説得力がある。この本でとくに強調しているのは、断食が総合的な「脳力」を高めるということである。つまり、断食後に頭が冴え、記憶力や理解力が増すというのである。

著者自身が、若き日にある病気に悩まされていた。病院を転々としたが悪化するばかりだった。ある雑誌で断食で病気を克服した体験記を読んで自分も実践した。母に野菜ジュースをつくってもらい、数日間それだけで過ごした。その結果、病気はウソのように治り、身長も急に伸び、成績もよくなった。その不思議な体験が人生を変えたという。ちなみに断食や少食の良さを説くこの分野のリーダーたちも、自分の病気を断食で治した経験を持つ人が多い。『少食の力』の甲田光雄や、『「半断食」健康法 』の石原 結實などである。

多くの体験者が断食後に「頭も体も生まれ変わった気がする」と言う。爽快感や自由感、充実感をもち、イライラしなくる。自分らしさを取り戻し、何にでも感動できるようになるという。断食で脳が活性化する理由として、断食は脳に必要な栄養、とくに糖分の栄養が絶たれことで、シャペロン(タンパク質の変性を阻止し、修復をする)が種チュするからではないかと、著者は考えている。また断食によって「ケトン体が体内に生ずると脳のα派が増えるという相関関係が確認され、そのメカニズムについても詳しく語られているが、ここでは詳しく紹介できないので本を読んでもらうほかない。

この本では、断食のデトックス(解毒)効果も強調され、その科学的な根拠も述べられている。印象深かったのは、1968年、九州・福岡を中心に起った「カネミ油症事件」だ。九州大学との共同研究の結果、政府はPCB中毒の治療法として、断食療法を正式に採用し、「断食療法、ほぼ9割の効果」と当時の新聞でも報道されたという。有害物質は脂肪に蓄積されやすい。断食でその脂肪が燃えてエネルギーを作ると、蓄積された有害物質は、血液中に遊離して肝臓から体外へ排出されるのだ。

とこあれこの本を読んで私自身、再度断食に朝鮮する気持になった。

『釈尊の断食法』

2007-05-01 22:47:46 | 食と健康
◆『釈尊の断食法』前田行貴(地湧社2003年)
少食や断食が健康にもたらす効果については、甲田光雄医師の一連の著作などによってかなり知られるようになった。私も、甲田氏の本によって断食や少食を試みるようになった。この本も、巻末で甲田氏が解説を執筆しており、断食の医学的理解についてはほぼ同じ考え方にたつものと言ってよい。

原始仏典における釈尊が断食をどれだけ具体的に説いたかは疑問だ。著者も釈尊がどのような断食法を説いたかを文献的に基礎付けているわけではない。本書でも、釈尊成道後の瞑想と断食に触れ、後は義浄三蔵の『内海寄帰内法伝』(694年)において、「病気の時はまず食を断つべきだ」だと釈尊が説いたと書かれていることに触れられている程度だ。

が、断食や少食を行うこと自体は、健康のためだけでなく瞑想のためにも、また仏教の慈悲の精神からも、きわめて意味の深い実践だと思う。本書によると、断食を印度の言葉でウポワズという。ウポワズによって気力や体力が落ちてくると、自己の内面に潜在する本性が露見してくる。その時こそ過去世からのカルマ(業)と向き合う反省の時であり、運命開拓の時であるという。

私も断食のあと、いつもより深い夢をみることが多い気がする。それが自分の内面を探るのに役立っている。本書で、再び一日半の断食にチャレンジするよき刺激となった。