精神世界と心理学・読書の旅

精神世界と心理学を中心とした読書ノート

風邪の効用(野口晴哉)

2010-04-06 23:36:16 | 気功
◆『風邪の効用 (ちくま文庫)

同著者の『整体入門 (ちくま文庫)』とならんで文庫本で読めるようになった のがうれしい。これをきっかけに野口整体が再評価されることを祈る。  

一読して従来の風邪についての通りいっぺんの考え方が吹き飛ぶような思いがする。風邪は、からだのゆがみや不自然な疲労を癒し生体のバランスを取り戻すために必要な大切なプロセスだとする主張は、眼を開かれる思いだ。著者は、「風邪を 引くとたいてい体が整う」、「風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為だ」とさえ言う。体を酷使して、ある部分が「偏り疲労」の潜在状態になって弾力性を失うから風邪を引く、そして風邪を引いたあと回復する。

癌になったり脳溢血になったりする人は、得てして風邪も引かない場合が多いそうだ。風邪を引かないのは、むしろ体の調整作用や柔軟性が失われた結果であるから注意せよと言われてハッとする人も多いだろう。実は私もその一人であったが。

風邪を安易に治してしまうのではなく、完全に経過させて生体の柔軟性を取り戻す方法が、独特の「体癖」論によって論じられる。風邪の講話の記録なので読みやすい。

野口晴哉が風邪について語ったことは、プロセス指向心理学の創始者アーノルド・ミンデルの次の言葉を思い出させる。「プロセスワークの基本的な考え方は、自分が体験できるすべての体験は、それ自身の展開、解決、成長を含んでいる、ということです。自分に見えるビジョンや、聞こえる声や、からだの痛みの中にあるメッセージは、決して幻想などではなく、自分自身に向かう急行列車なのです。(『自分さがしの瞑想―ひとりで始めるプロセスワーク』地湧社)

体が風邪をひくというプロセスもまた、「それ自身の展開、解決、成長を含んで」いて、自分のからだからの大切なメッセージになっているのかも知れない。

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