銀河夜想曲   ~Fantastic Ballades~

月が蒼く囁くと、人はいつしか海に浮かぶ舟に揺られ、
そして彼方、海原ワインのコルクに触れるを夢見、また、眠りにつく……

忘れ物

2007年05月09日 02時30分00秒 | 散文(覚書)
ぼくね、お姉ちゃんといっしょに遊んでたんだよ

おうちをつくってたんだ



ちょっとだけ暗かったけど

ちょっとだけこわかったけど

お姉ちゃんの指輪が光ってたから

ぼくたち、それをかざしておうちを建てたの

お姉ちゃんがお母さんのおなかに来る前から

もっとずっと遠いところから

だいじに持ってきたんだって



太陽の近くにおうちができて

やった~って、さけんだら

どこからか大きな水が流れてきて

いつの間にか、お姉ちゃんがいなくなってた

だから緑色のブロック

お母さんのおなかの中に、忘れてきちゃった



ぼく、ずっとおうちのなかに入っていたよ

水はすっかりかわいていたけど

とてもさびしかった

いつも

ひとりぽっちで

でもいつも

ひとりっきりじゃなかったけれどね



それからね

トクトクトクっていう音に合わせて手をたたいてたら

ずっとそばにいた指輪が

お姉ちゃんのおでこからコロンって出てきて

そのまま地面にとけちゃったんだ

こっちにおいで

ってお母さんが呼ぶと

お姉ちゃん うれしそうに立って

あんよのまわりが銀色の

指輪の粉がまかれたみたいで

サラサラまぶしかったよ

ぼく、みんな見えてたんだ



そしてどのくらい いたのかな

どこかでセミが

おかあさ~ん、おかあさ~んって

ないてたよ

それで

ぼくは目がさめたんだ



ありがとう、お母さん

あの緑色のブロック

大事に持っててね

いつかきっと

お母さんの役に立つから



なんだか眠くなってきちゃった

ちょっと おしゃべりしすぎたみたい



ねえ、お母さん

いつかぼく、お母さんの木になりたいな

そしたら

ぼくに頭をのせて眠れるでしょ

葉っぱの帽子だってかぶせてあげる

歌だって 歌ってあげる



でも今は

お母さんの歌がききたいな

そしたら緑のブロックも

さみしくないんだって