旅するくも

『旅が旅であることを終わらせる為の記録』

二つの道

2011-04-24 23:55:55 | 
旅に出て、自分の場所に帰ってくる。
旅の資金を貯める為に仕事をして、また旅に出ることを繰り返してきた。

旅から帰ってくるたびに日本に馴染むのに時間がかかっていた。
旅に出ているときと、日本にいるときで明らかな違いを感じ、まるで
自分の中に全く違う二つの時間が存在するかのようだった。

言い換えればそれは、「地球に生きる普通の人として生きたい自分」と、「日本人として生きる事を避けられない自分」。
二つの生き方を別々に生きるのではなくて、二つを同時に生きる生き方ができないのかと、ここ数年、僕は模索してきたし、
そんな生き方をしたいと心底願っている。
例えば、「お金が不要な生き方」ではなく、「お金に生き方が左右されない生き方」とかね。

旅をかさねるごとに、少しづつ二つのあいだにあった距離が近づきつつあるのを感じてきた。
日本に帰ってきてから1ヶ月がたって、今はますますそれを実感している。
もっとも初めてアメリカの砂漠に出会って帰ってきたあと半年間混乱していた時と比べての話だが。

僕がそんな生き方を求めるようになるきっかけは、
北山耕平著『ネイティブ・マインド』~アメリカ・インディアンの目で世界を見る~ だった。 

われわれは、もういちど
もとの道に戻ろうとしている。
力をとりもどし
現代生活と呼ばれる虚構と
不誠実にみちた生活から離れて
いかに生き
どうしたら自分に正直でいられるかを
われわれは もういちど
学習しなおしているのだ。

ローリング・サンダー


何を知らないのかさえ知らなかった僕に北山耕平さんの書いた『ネイティブ・マインド』は
もう一つの生き方を指さしてくれた。
もっとも多くの方に読んでもらいたい、この先もずっと読まれ続けてほしい一冊。

あなたが地球の上のじょうずな歩き方を学ぼうとするとき、進むべき道を示す地図になるはずだ。

野田るみさん当選!

2011-04-13 11:58:25 | 最南端
石原都知事がまた当選して高円寺のパレードの参加者や関わった人たちからは落胆の声が多かった。
福島原発の設計に関わった方が、文明というのは車のようにリスクと便利さを同時に背負うものだが、
東京では原発のリスクを弱者に金で押し付け、電気という便利さだけを受けとるという卑怯なやり方は
許されないというような事を言っていたが僕も同意権だ。
「東京原発」という役所 広司主演の映画もある。

今回の石原が圧勝した結果は全てではないが東京都民が弱者切捨てを認めているかのように見える。
投票率から考えれば関心すらないといった印象だけど。
脱原発側から落胆の声が出るのもよくわかる。

でも、悪いニュースばかりじゃない。
最南端3号目の記事の中で名古屋で突然300年続く湧き水が湧く田んぼが埋め立てられた
という記事を載せたが、そこは名古屋の野田農場という場所だ。
名古屋市内で唯一蛍が見られる場所でもある。

僕は何度か行ったことがあり、「カンタ・ティモール」という映画の広田監督、音楽の小向定さんと初めて
会ったのも野田農場だった。
ある日、湧き水が湧く田んぼは埋め立てられたが、まだ一ヵ所湧き水が沸く場所があった気がするという
おばあさんの記憶をもとにみんなで草をかき分けて探し、湧き水を見つけた時は本当に嬉しかった。

その野田農場の長女の百姓で主婦の野田るみさんが名古屋の県会議員に出馬して当選した。
僕にとって最近の一番嬉しいニュース。

続 オカマのおじさん

2011-04-13 03:10:40 | 
翌朝のフライトが早かったので、朝の5時半にタクシーに乗って空港に行く事になっていた。
ネパールの早寝早起きの規則正しい生活から、タイに戻ってきて1日で生活のリズムが変わって
朝5時に起きられる気がしなかったから、宿で寝ないで朝を待つことにした。

旅の最後の食事は、いつも行っていた日本食屋でとることにした。
少し遅めの夕食を終えたら細い路地にあるコーヒーの屋台でアイス・コーヒー(ラテ)を受け取って、
宿に帰るのがバンコクでの夜の過ごし方になっていた。
酒は飲まないし、ブラックコーヒーで腹をこわす僕にはタイの甘いコーヒーがちょうどいい。

朝まで時間があるけど、とりあえず荷物をまとめようかと宿の階段を上っていると、
前日に会ったあのへヨカ(道化)が部屋からちょうど出てくるところだった。
スカートを穿いて、何かを塗ったらしく顔がキラキラしている。
そして、誰が見てもすぐに男だとわかるハゲかかった頭。
手には踊るときに振り回すのであろうポイ。
これから通りへ踊りに行くであろうオカマのオジさんに偶然遭遇したのだし、僕も一緒に行きたいと思って
「ちょっと待っててくれ」と伝えた。

オカマのオジさんは観光客が集まる大きな通りに出ると、まずコンビニに入ってドライジンを飲みながら
出てきた。
それをすぐに飲み終えると周りの観光客に指を指されるのも気にせず、二本目を飲み始め歩き出した。
観光客に声をかけられて、僕がカメラで彼と観光客の写真を撮ってあげると、彼はカメラを取り出したついでに
いままで撮った写真を見せながら話をした。
キレイな彼の彼女の写真もあった。

通りに面した大きなカフェバーで足を止めると、オジさんはそこでながれている音楽が気に入ったのか、
僕に飲みかけのビンとバックを預けてダンスを踊り始めた。
周りに人が集まってくる。
写真を撮る人、指を指して笑う人、気づかずに彼の横を通って踊りの邪魔になる人。
その横で彼の酒と荷物を持っている僕。

こいつはアホなのか、ただの変態なのかと踊りを見ながら僕は悩んだ。
ただ目立ちたいわけじゃない。
パフォーマンスでお金を稼いでいるわけでもない。
でも、何が目的なのかわからない。
休憩のときに何事も無かったように話をするようすは、どうやらアホでもなければ狂ってもいないようだ。
カフェバーの店員に「店の前でやるな!」と言われても彼は怒ることもなく礼儀正しい。

オカマのオジさんは踊りがうまいわけではないけど、踊っているときは幸せそうでカッコよかった。
僕にとっては今回の旅で一番の出会いだった。


意志を感じる

2011-04-07 03:37:26 | 素晴らしき日々
日本に帰ってきてバスで成田から池袋に着いき、街中を駅に向かって歩いていると、
居酒屋の客引きがいつも通り行われていたことに驚いた。
東京の友人の家の近くのコンビニの本棚に『風の谷のナウシカ』が売られていたことにも、また驚いた。
日本は『風の谷のナウシカ』の世界になる寸前でなんとか止まっている状態なわけだ。

そんな日本で毎日をのん気に暮らしている僕だけど、とても不思議に思っていることがある。
それは、土などに含まれる放射性物質をどういうわけだか、ひまわり、菜の花、大麻が吸収するということだ。

力に対してまた違う力が働く世界。
大地の上で生きるものがバランスを失ったとき、準備されていたかのように大地の上のバランスを取り戻す為に
現れる生きものや存在する植物たち。

きっと、この世界に完璧なものなどない。
でも、完璧なものへと向かおうとする意志を感じざるをえない。
祈りってその意志の声を聴くことなんだな。

手元にセイジとタバコもあることだし明日は久しぶりに海で火をおこして、声を聴く時を持つことにしよう。



蜘蛛の巣

2011-04-05 23:45:55 | 素晴らしき日々
TwitterやUSTREAMなどで情報と映像がもの凄いスピードで飛び交っている。

真実を伝えられないテレビがほとんど意味を持たなくなっている。
いかに馬鹿げたことをすりこませようとしているのかを見るのは別の意味で興味があり
面白いけど・・・

世界中に張り巡らされた蜘蛛の巣というネットワークが持つ意味と役割はとてつもなく
大きいことは間違いない。
蜘蛛の巣で繋がった世界が一つの意思となって動き出す日が遠くない先にきっと来る。

『深夜特急』

2011-04-04 00:35:02 | 編集長の本棚
『深夜特急2』マレー半島・シンガポール
『深夜特急3』インド・ネパール
沢木耕太郎
新潮文庫

旅に出たときくらい素直に旅行記を読もうと思って読んでみた。
ほとんど旅行記というものを読んだことがなかったので新鮮だった。

といっても内容はほとんどがお金をぼられたことや、食べ物の話ばかりだった。

沢木耕太郎さんが大学を出て就職し、その会社を一日で辞めたことを
旅の中で振り返るシーンがある。


僕にも同じような経験があった。

21歳で、まだ就職していたころトラックで配達しながら営業し、
毎日朝から晩まで働いていた。
2年間の思い出は仕事以外にほとんどない。
狂ったように働き、総合成績は2000人の中で9位以内だった。

その晩、お客さんで同じ歳の女の子と酒を飲みに行った。
朝7時前に出勤しなきゃいけないのに3時過ぎまで飲んで、女の子を家まで送って
車で家に着く頃には4時だった。
駐車場に入る為に左折するとき、バックミラーにパトカーが見えたがその晩は
捕まることはなかった。

また同じ女の子と酒を飲みに行ったときだった。
翌日も仕事。
僕らは4時になってもまだ居酒屋にいた。
最後に頼んだビール大ジョッキをあっという間に飲み終えて、そろそろ帰ろうと
車に乗ってはしりだす。
何故かはわからないけど、その日に警察に捕まることが僕はわかっていた。

動きだして5分もすると後ろからパトカーが『左に寄せて停まりなさい』と
早朝にもかかわらず大音量で言う。
『ちょっとスピードが出すぎてたね・・・あれ?酒臭いけど酒を飲んでるの?』
下手くそな芝居をする警察官にイラつき、隣りに座ってる女の子に『大丈夫だから・・・』
と言って車から降りる。
大丈夫のあとに『わかってたから』と言おうとも思ったがやめた。

パトカーに乗って息を計ると酒気帯び運転だった。
一応、警察官に『酒気帯びで捕まると仕事がなくなるんですけど・・・』
と言ってみたが見逃してはくれなかった。

女の子にタクシー代を渡して帰らせ、僕は代行で家に帰り上司に連絡をして
その日のうちに会社を辞めた。
それからしばらくして僕の初めての海外一人旅がはじまったわけだ。

沢木耕太郎さんは会社を一日で辞めた理由を、
『属することで何かが決まってしまうことを恐れ、回避した。
ただ、逃げたかっただけなのかもしれない』
と言っている。

僕も同じだった。
勤めていた会社の30歳の先輩からは僕の10年後が見えた。
40歳の先輩からは僕の20年後が見えたんだ。
まるで全部が決められているように感じた。
だから僕はそこから逃げた。
誰かに自分が進む方向を決められてたまるかって。
どんな方法でも自分を変えられる前に回避するべきなんだ。

僕は何も後悔していない。