碧田直の いいじゃないか。

演劇ユニット、ミルクディッパー主宰の碧田直が、日々を過ごして、あれこれ思ったことを、自由気ままに綴ります。

無題そのひゃくさんじゅうろく

2016-09-01 13:43:58 | 日々
昨日書いたとおり、シン・ゴジラの感想を。

まず、一言で言って面白かった。
この映画の捉え方は、人それぞれの立場や思想などによって分かれるだろうが、二時間をあますことなく使いきって、最初から最後まで飽きさせなかった。
ゴジラというファンタジーを成立させるために、それ以外はリアリティにとことん徹して、かつスポットをあてる役者たちを絞った。結果として、物語がゴジラと相対する立場の人間たちのみを描くこととなった。

これは、個人的には正解だったと思う。市井の人間が、未曾有のパニックにも毅然として立ち向かい、ゴジラを追い詰める。いわば超人のように描かれてしまえば、相対的にゴジラの存在感は弱くなり、観客に与える絶望感もなくなってしまうだろう。

会議ばかりとの声も聞かれるが、これも、これまでの常識では考えられない超生物が現れた場合、どうするのか。いまの日本に何が出来て、何が出来ないのかを考え抜いた末の結果であるし、飽きさせないように構図もテンポも工夫してあった。この前半があればこそ、自衛隊の発動や、最後の作戦に至る緊張感とリアリティは保たれたといえる。

役者陣は、概ね良かったのではと思う。主人公の矢口蘭堂を演じた長谷川博己は、膨大なセリフを使いこなして存在感を放っていたし、尾頭ヒロミ役の市川実日子も、超早口の無表情なキャラクターを効果的に演じていた。
石原さとみの演技に批判が集中しているが、彼女が出来ることはすべてやっていたように思う。どういう事情があるにせよ、配役されたのは彼女だし、彼女なりの全力で役に取り組んでいるのは伝わってきた。演技は確かに浮いていたが、いまの彼女にはあれが精一杯だったろう。
残念な点をあげるとすれば、彼女のフレームが、この映画には合っていなかったと思えるところで、欲を言えば、あの役には、もっと背が高くてスタイルのいい女優がふさわしかったように感じた。
ベテラン陣はだいたい良かった。個人的に受け入れがたかったのは、大杉漣くらい。もう少しセリフを自分のものにしてくれたらな。

賛否両論ある映画だと思う。好き嫌いがハッキリ分かれる映画だとも思う。エヴァを思わせるシーンも、踊る大捜査線を想起させる場面もあった。
が、面白い。ゴジラを基軸に、ゴジラと相対する人々を、ただそれだけを潔く描いて、その意気やよしの映画だ。
コメント
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