【財政・金融、窮余の一策 日銀版マネー・ヘリコプターは飛ぶか 2016年5月1日田村秀男の日曜経済講座
(略)08年9月にリーマン・ショックが勃発した。バーナンキFRB議長は巨額のドルを刷る量的緩和政策に踏み切ったが、ヘリ・マネー政策ではない。FRBが市場から購入する国債はいずれ金融機関など民間に売却される。政府は民間に金利を払う。政府の借金に変わりはないのだ。
それでも、米景気はそろりと回復していった。FRB資金は株価を押し上げる。野球ファンよりも個人株主数のほうが多い米国では株価が上がると家計が消費を増やすし、企業のほうは株式市場から有利な条件で資金調達し、設備投資するので雇用も増える。
黒田東彦(はるひこ)総裁の日銀が3年余り前に踏み切った異次元緩和政策はFRBの量的緩和政策そっくりだが、景気への効き目は米国に比べてかなり弱く、不安定だ。株価は円安とともに上がるが、円高になると下がる。
グラフを見よう。日銀は新規発行の2倍超相当額の国債を市場で購入し、年間約80兆円の資金を創出している。実質経済成長率は平成25年(13年)度に上向いたが、翌年度はマイナスに落ち込み、その後もゼロ・コンマ台で低迷している。景気は政府による公共投資(公的固定資本形成)がぐんと上積みされると刺激されるが、減った途端に冷える。おまけに2年前の消費税増税が内需を減退させた。黒田総裁はマイナス金利政策を導入したのだが、成果が出るまでにはまだまだ時間がかかる。デフレ圧力が再燃すれば、アベノミクスは失敗とみなされ、安倍晋三政権の命運にかかわってくる。
日本の窮状を見た米欧は、「ヘリ・マネーを導入したらどうか」とささやく。英エコノミスト誌が2月下旬に「日本のように途方に暮れた国」にはうってつけだと論じて以来、英米の金融専門家が口にする。米ウォールストリート・ジャーナル紙は4月16日に黒田総裁を直撃し、ヘリ・マネー導入の意思を引き出そうと試みた。2月に上海、4月にワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は金融政策の限界と財政の重要性を強調した。安倍首相が議長となって、5月下旬に三重・伊勢志摩で開かれる主要国首脳会議(G7サミット)では財政支出拡大が主要議題になる。
政府と日銀はヘリ・マネー政策に踏み切るだろうか。金融専門家には「悪性インフレを引き起こす」との異論が多い。財政と金融政策とも行き詰まった欧州ではそんな劇薬を日本に試させたいという本音が透けてみえる。黒田総裁もさすがに慎重だ。しかし、「ヘリ・マネー」と銘打たなくても、日本の財政・金融政策がそれに限りなく近づく公算はかなりある。
安倍首相周辺では熊本地震対策としての補正予算に続いて、伊勢志摩サミット合意を受けた形で10兆円規模の大型補正予算を編成する検討が始まった。有力な財源案は、国債の一種である財投債の発行だ。財投債はインフラ整備を対象に政府が発行するが、政府系金融機関を通じて民間に貸し出されるので、通常の国債と違って政府債務としては扱われない。
政府が財投債に限らず国債全般についてマイナス金利を生かせば、金利負担がゼロ以下になる。さらに日銀が購入した財投債を含む国債を市場に売却しないと約束すると、国債はマネー同然となる。さて、黒田総裁はどう出るか、ヘリに乗り込むだろうか。(編集委員)】
●問題は「へりに乗るか」ではなく、「市中バラマキ債券の規模と出口戦略があるか」どうかだ
(GG:問題の捉え方が違っている、問題は「へりに乗り込むか」ではない。「へりに乗る以外の選択肢が与えられていない」ことだ。だから問題は財投債(市中バラマキ債権と言える)の発行規模と、いつまで発行するかいつ閉じるかという出口だ。これは現段階で決められないほど様子見にならざるを得ないが、米や中国の景気動向、日本のGDP動向による。出口条件を制するのは米国FRBであることは確かだとGGは断言する。そして市中バラマキ債権は出口を描けないでドツボにますます嵌っていくのが日本の最悪のシナリオだ。この際には証券、不動産全般が価格高騰しながら経済全般は不況色を強め、いずれ証券も不動産のバブルも破裂する)
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