「『NEWS23』岸井氏を名指し攻撃…異様な“意見広告”の真の狙い 日刊ゲンダイ2015年11月26日
今月14日付の産経新聞と15日付の読売新聞に掲載された全面意見広告が大きな話題になっている。「私達は、違法な報道を見逃しません」とデカデカ見出しの意見広告は、TBSの報道番組「NEWS23」のメーンキャスター・岸井成格氏を名指しで批判、問題視する中身だったからだ。」
●不気味な「私たちの『知る権利』はどこへ?」と「『放送法第四条をご存知ですか』」の柔和な衣(GG見出し)
「全国紙の紙面を買い取って広告を出したのは「放送法遵守を求める視聴者の会」。呼びかけ人には作曲家のすぎやまこういち氏、上智大名誉教授の渡部昇一氏ら“安倍応援団”の面々が並んでいた。
彼らが問題にしているのは岸井氏が安保法案成立直前の9月16日放送で「メディアとして(安保法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と発言したこと。コメンテーターならともかく、番組メーンキャスターである岸井氏がこう言うのは「政治的に公平であることなどを定める放送法に反する」と主張しているのである。
「番組にはさまざまな意見がさまざまな形で寄せられており、意見広告もその中のひとつと考えております」(広報部)
まるで“他人事”なのである。
岸井氏といえば、毎日新聞の特別編集委員。読売も産経も、よくもまあ、ライバル紙の個人攻撃広告を載せたものだが、驚くのは早い。自民党の礒崎陽輔前内閣補佐官は早速、「極めて冷静で妥当な意見です」とツイート。与党との二人三脚ぶりをうかがわせた。安倍政権との“連携プレー”のにおいがプンプンだ。
「安倍政権や、そのお仲間は全局を“安倍サマのテレビ”にしたいのでしょう。安保法案は国民の8割が、なぜ成立を急ぐのかと反対していた。岸井氏の発言は国民の声の代弁です。それなのに、政府に逆らうものはみなダメだと言わんばかり。それもひとりに対して、全面広告を使って、集団で吠えて弾圧しようとしているのは極めて異常なことです。こんな広告を出されて、何も言わなければ、テレビが死んでしまいますよ」(評論家・佐高信氏)
(GG:「私たちの『知る権利』はどこへ?」と「『放送法第四条をご存知ですか』」とさも”公平”を装っていることがいかにも卑劣だ。個人攻撃で各個撃破しようとの魂胆が窺える。「放送法遵守を求める視聴者の会」と個人ではなく準公的な組織と偽装しているところも輪をかけて卑劣で臆病。「政治的に公平であることなどを定める放送法に反する」という発言のインチキさは「公平」であるかに装っていることにある。「公平」の名を騙る「議論封殺」だ。
産経と読売がお先棒を担いでいる影絵が透けて見える。もちろん籠に乗っているのは安倍晋三殿様で脇に控えるのが礒崎陽輔前内閣補佐官、すぎやまこういち、渡部昇一だ。この面々の顔ぶれは忘れてはならない。将来、間違いなく日本国民と日本国をどん底に突き落とす主役の役割を果たすであろうからだ。
そして、国が滅びてから、「私のせいではない」と真っ先に言うに違いないからだ。語るまでもないことだから言いたくもないが、彼らはなぜ議論を堂々と吹っ掛けないのか?!大いに議論すべきではないのか?!この手の”議論封殺は卑劣だ!!” この事態の特徴は産経と読売が加担していること。言論機関が言論を封殺していることだ。日本の言論界の後進性が露出している。「公平」の印籠が、このように欺かれているのは開いた口が塞がらないと言うよりお笑いですらある。ご当人たちは棒の先に印籠をぶら下げて、番小屋の隅の物陰に隠れながらオズオズと大通りに印籠を差し出した。大江戸一の笑いものの一幕だ。)
●放送倫理・番組向上機構(BPO)への圧力の延長上の攻撃でTBSの弱腰に付け入る(GGの見出し)
「安倍応援団の偏向キャスターは山ほどいるのに、まったくフザケた話である。このタイミングで、こんな意見広告が出てきたのは恐らく、放送倫理・番組向上機構(BPO)の存在があるのだろう。今月6日、BPOの番組検証委員会は自民党がNHKやテレ朝に事情聴取を行ったことを問題視、異例の政権批判を展開した。そうしたら、安倍首相が国会答弁で「(介入は)至極当然だ。まったく問題ない」と切れまくった。自民党内には「BPOを潰せ」という意見がある。TBSは擁護派である。そうしたさなかでの意見広告は、TBSへの“牽制”にも見える。TBSは当然、大反論しなけりゃおかしいのだが、本紙の取材にこう言った。
「番組にはさまざまな意見がさまざまな形で寄せられており、意見広告もその中のひとつと考えております」(広報部)
まるで“他人事”なのである。
TBS局内には「岸井更迭論」もあると聞いた。後任にはライバル紙の編集委員の名も浮上している。
一方、「視聴者の会」の事務局長で文芸評論家の小川榮太郎氏はこう言った。
「出稿のお金は基本的に有志の方の寄付です。(掲載紙が産経、読売になったのは)保守系という縁故関係からです。今後、発表紙が広がる可能性はあります。(また、放送法に反するようなことがあれば)何かしらのアクションはすると思います」
安倍首相たちの言論圧力に屈すれば、テレビが“死ぬ日”は遠くない。」(以上「日刊ゲンダイ」から引用。随所にジージ=GGの意見が入っています。以下はGG論評)
●”放送法に反する”とのイチャモンで”言論封殺”。岩井は更迭か?
(GG:小川榮太郎の発言に見るように”放送法に反する”という衣をまとって”言論封殺”は”発表紙が広がる”だろう。岩井更迭論は現実のものになるかのしれない。彼らはこれが常とう手段で恐怖政治はこのようにして敷かれていくのかもしれない。そして「物言えば唇寒し秋の風」となり、誰もが沈黙して鬱々とし、隣りを監視し合う時代が来る。
●主戦場は国会前から言論機関に移った。言論機関が言論を破壊する?
自由な言論の場は”公平”の名のもと奪われようとしている。主戦場が俄かに浮かび上がった。さて、”公平に議論しようと、議論の場を据えようとしているのはどちらなのか?”とくと拝見しよう。言論の自由がどのように護られるか、棄て去られるか―ー安定した生活の基本となる日本の民主主義の大きな分かれ道だ。
国連の国連人権理事会が特定秘密保護法などの情報収集のため特別報告者を来日調査させようとしたが、先送りされた。朝日報道で明らかになったのは11月20日だった。日本政府が忙しいのを盾に延期を要請したと言う。特定秘密保護法に限った話ではない、より広範な基本的な言論の自由すら、暴圧的に封じ込めようとしていることが国連人権理事会で問題にならないとはいえない。
日本の言論の自由には大きな疑問符が世界的にもついている。
すでに古いニュースだが、朝日2015年7月3日付けによると外国特派員協会は報道威圧発言で抗議声明したという。自民党の勉強会で報道機関への威圧的発言が相次いだ問題などについて、日本外国特派員協会のジェームズ・シムズ会長は7月2日、抗議声明を出して「深い憂慮」を表明したという。
報道機関への威圧的発言とは6月25日にあった自民党勉強会「文化芸術懇話会」で講師を務めた作家の百田尚樹氏が「沖縄の二つの新聞社(琉球新報と沖縄タイムス)は絶対つぶさなあかん」などと発言したことをさす。2紙は翌26日、両編集局長名で抗議声明を発表した。7月2日には両紙の編集局長が日本記者クラブの求めに応じて記者会見し、「事実に基づかない誹謗・中傷、看過できない」と厳重抗議している。
報道封殺の動きは根強くあった。その前後にもあった。自民党の若手議員が6月25日に開いた勉強会では、「マスコミを懲らしめるには広告収入をなくせばいい」などの暴論が相次いだと28日の日刊ゲンダイで報じている。「安倍首相は26日の国会で『事実であれば大変遺憾』と答弁、佐藤勉国対委員長は会を主宰した党青年局長の木原稔衆院議員(熊本1区、当選3回)を呼び、『大変なことをしてくれたな』と怒鳴りつけた。自民党は木原青年局長の更迭し、1年間の職務停止の処分に」と。 そして「『問題の会合に出席していたのは加藤勝信官房副長官(岡山5区・当選5回)をはじめ、約40人。『マスコミを懲らしめるには……」以外にも「不買運動を働きかけてほしい』などの暴言が相次いだ。会合に呼ばれた作家の百田尚樹氏は『沖縄の2つの新聞社は絶対に潰さなあかん』『もともと普天間基地は田んぼの中にあった。そこに商売あると住みだした。そこを選んで住んだのは誰やねん。沖縄は本当に被害者やったのか。そうじゃない』などと語った」と”前科”はあるどころか確信的な言説だ。言説は構わないが「事実に基づかない誹謗・中傷、看過できない」のだ。挙句は反対意見を一方的に封殺しようとする。
これにはさすがに経済界からもクレームがついた。読売2015年07月02日によると「日本商工会議所の三村明夫会頭は2日の記者会見で、自民党議員が『一部マスコミを懲らしめる』と発言したことについて、『誠に好ましくない。自民党首脳部も、非常にはっきりと『こういうことがあってはいけない』と言っている』と批判した」と言う。
実にこの問題の根は深く、燻り続けていた。
「百田氏の発言の裏にはこれまた安倍首相のお友達、桜井よしこ氏が昨年11月に沖縄で行った講演会が見え隠れする。 『日本を取り巻く状況というのを、地元の琉球新報も沖縄タイムスもほとんど報道しない。新聞と言わないのです。琉球新報も沖縄タイムスも翁長さんを応援している。翁長さんを応援しているのは誰ですか。共産党じゃないですか』」と日刊ゲンダイは2015年6月28日で報じている。
●問題は左右の激突ではなく、「放送法第4条違反」や「知る権利」を護ること。どちらが背いているのか?!
今回の意見広告での「放送法第4条違反」や「知る権利」を騙った言論封殺、それも暴力的、魔女裁判的な言論封殺と個人攻撃は左右の激突ではない。彼らの「建前」主張の真逆が全面広告と言う形であれーーというか、恥ずかしげも無く厚顔に、いわば白昼堂々と行われた人権抑圧で、ファッショ的事件と言ってもいい。この事件は言論抑圧事件であると同時に、明白な分かり易い人権問題でもある。大きな俎板に載せて、しっかりした議論が欠かせないだろう。
国連人権理事会がどのように見るか?タイムリーと言えばタイムリー極まりない。近代国家の基準が歴史修正潮流の中で試されている。トンデモナイ事件だ。
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