今回はちょっと真面目です。
知の巨人とも呼ばれた立花隆さんが亡くなられたとのニュースがありました。
知的好奇心でとことん取材し、世の中に問題提起するホネのあるノンフィクション作家でした。
立花さんの作品に「脳死」いう本があります。
万里村は「白の条件」という病院モノの漫画のためにたくさん資料を読みましたが、その中に当時話題の「脳死」もありました。
心臓が動いているのになぜそれを死と認定するのか、臓器移植と込みで語られるため本質が伝わりずらく、
認定そのものが歪められてしまうような話題でした。
それを専門家でないからこその丁寧な解説でつづった本でした。
分厚くて読みごたえがありました。。。
魔女は文章を読むと、内容もさることながら、
行間からにじみ出る作家のお人柄とか価値観を感じ取ってしまう癖があるので、
「脳死」を読みながら、立花さんの抱えている苛立ちを感じていたことを思い出しました。
「頭の悪い人にはわからないかもしれないが、人の命を支配しているのは心臓ではなくて脳なのだよ」
と嫌味っぽく語られたような気がしたのです。
「ここは感情的にならずに、人が尊厳をもって生きることに科学の裏付けをつけていこうじゃないか」
などと言われたようにも感じました。
人の死に関しては誰でも感情的になるものです。
嫌味な物言いは、たぶん、上梓するまでに大変なご苦労をされた証でしょう。
ところで、魔女の漫画で脳死を扱うことになった時、
「素人が色々と突っ込まれたら苦しいから、とりあえず医者の監修つけておこう」という編集部の意向で監修の医師がつきました。
その方は脳死に造詣が深いわけでもなく、「どうせ漫画だし」とアルバイト気分でついてくださった方だったのですが、
どうも脳死認定には反対するご意見(派閥)の方だったようです。
魔女自身は脳死はニュートラルに考えたつもりだったのですが、原稿が出来上がってその方に見て頂くと、
脳死判定のネーム(セリフ)をごっそりとカットして欲しいとのことでした。
「こういう判定基準は現代の医学では認めていません」とのこと。
「いや、それがないとお話が進んでいかないのです。
作家が伝えたいのは脳死の判定基準ではなくて、現場で苦しむ家族の姿であって・・」と伝えても、
「だめです」の一点張り。
既に出来上がっている作品の設定を変えるのは無理でしょうということになり、
魔女は「この方に監修を降りて頂いても良いですか?」と編集者にお願いしました。
「いや、今後のお付き合いもあるから、ご機嫌を損ねたくない。どうかうまく収めてほしい」と言われ、
魔女は勉強した脳死判定事項をすべて捨てました。
でも、とても悔しかったので、用意してあった大ーきな吹き出しをそのままに、ほんの少しのセリフを残して抵抗しました。
ネーム(セリフ)の量に見合わない大きな吹き出しに、
ここにはいったいどんなセリフがあったのかしら、何か訳があったのかもと気づく人がいたかもしれませんね。
年月が過ぎ、医学も変化しました。
移植医療だけに頼らず、いずれは再生医療がメインとなる日もやってくるかもしれません。
もしくは何かもっと別の医療も・・・
立花さんお疲れ様でした。