漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

文盲の天才

2009年01月16日 | 言葉遊び
きのうの続き。

戯曲「王将」で有名な坂田三吉氏は、
大阪、堺の人だが、貧困の中に育ち、成人して目に一丁字も無かった。

やがて将棋で名を挙げ、
各界の名士とも交流を持つようになる。

当時は、テレビゲームの無い時代、
男なら誰でも将棋を指すことが出来たから、
「将棋が強い」と云う事は、今のイチロー選手以上の人気があった。

従って、庶民のみならず、
財界人や文化人にも将棋ファンは多く、
坂田氏と親交を結びたいと云う人は多かったのである。

さて、そうなると、
色紙に揮毫を求められたり、
あるいは、署名だけでも、と要請される機会も増える。

そう云う場合、
「私は字が書けなくて」と断るしかないのだが、
それが又、「字も書けないのに、将棋が強い」と、一層の人気になった。

中には書けないことを承知でサインを求め、
「書けない」と言わせて喜ぶと云う手合いまで現れる始末。

いつも付き添いで行く娘さんが、
これを苦にして、なんとか揮毫できるようにさせたいと思い立った。

しかし、忙しい人だ、
せっかく教えても、次までに間があいて忘れてしまう。

そこで、
ともかく名前だけでもと、ある便法を思いついた。

まず、
習字の練習のように、
横一直線を上から七本、順に引いてゆく、

次に、
三本目と四本めの間、
真ん中から、五本めへと、タテ一直線に引く、

さらに、下二本の横線の両脇に、縦棒を引き「口」の形にする。

これで、「三吉」となり、立派なサインの出来上がり。(笑)

ただし、
巷間伝わるこの逸話、事実かどうか保証の限りでない。





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