私は若いころから、
国会の演壇の前に速記者が何人も並び、記録しているのを見て、
こんなもの録音で済むじゃないかと思っていた。
ただ、やはり速記でないと都合の悪いこともあるのだそうで、
現在は、縮小方向ではあるが、まだ全廃とはゆかないらしい。
その速記も、今のように録音機材が発達する前には、重要な役目を果たしていた。
明治の初めころは、話し言葉と書き言葉は別物で、
今のように首相が話したことをそのまま文章にする事はできなかった。
記録としては文語体になってしまうのである。
その時代に、いよいよ国会開設となり、
どうしても、議員が話した言葉をそのまま記録する必要が生じた。
話した言葉の通りの正確な記録がないと、
あとで、言った言わないの水掛け論になりかねないのである。
その速記を、日本語でも作ろうと苦労した先駆者の物語が松本清張の短編にある。
その短編の載っている
北村薫と宮部みゆき編の「とっておき名短編」と云う文庫本の、
後書きとも云える解説対談のなかで、
ご両所はこんなことを述べている。
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「日本の速記者術の創始者を清張さんが書いていらしたんですねえ」
「天下の松本清張だから、知られていない作品なんか何もないような感じですが、実はこういうものもあったんです」
「これはどこにも収録されていない埋もれた作品ですから、ぜひ」
「大松本清張ですから、もちろん短編に優れた作品が山ほどありますが、こういう珍しい作品も読んでほしいですね」
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はいはい、読みましたよ。
知らなかったです。
初めてでした。
おもしろかったです。