葉隠れ

　「武士道とは死ぬことことと見つけたり」
という言葉が、あたかも武士道の神髄であるかのように受け取られて久しい。そうあれは、武士というには程遠い人物が書いた本だったから、より武士らしい人物像が描かれていくのだが、すごく道徳くさい場面もあって、戦国時代の武士にあったような荒々しさもなかった。敗戦後軍国主義の書物とされていたが、近年その時代の武士の姿を正確に書き残したものとして再評価されている。
　今から六十数年近くも前、悲惨な太平洋戦争の時に、日本の若者たちは、特攻隊として爆弾を積んで戦闘機に乗って、敵艦などに突っ込まされた。この根底には『大和魂』『武士道』という呪縛に縛られてしまった
日本人がいた。
　まだ『葉隠れ』などにとらわれて『武士とは』などと追体験しようという人たちがいるが、あの当時でさえ武士でない人たちのほうが多かったし
、ましてや『武士』などの記憶もない現代人に厄介な代物として突きつけられている。