↑ 上巻
↑ 中巻
↑ 下巻
中公文庫 上・中・下 3巻 2000年5月25日初版~
平成9年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞の 「マンガ日本の古典」 全32巻の内の 14~16巻 (文庫版)
あとがきで作者も言っているように、この長大な歴史書を3巻で描き切るのは何と大変な作業だったことだろうか。他で読んだのだが、これと 「エルメスの道」 が描くのにとても大変だったと作者が言っている。
「吾妻鏡」 は鎧に馬に鎌倉時代の着物に源平合戦、「エルメス~」 も細かい馬具に馬に当時のファッションから当時の建物、時代考証が大変ですよ。
「吾妻鏡」 原典は1180年(治承4)から1266年(文永3)までの87年間を描く、全52巻の鎌倉幕府の公用記録書です。
日記の体裁をとってはいるが鎌倉末期の編纂とされるこの歴史書は、編纂当時の権力者である北条氏の行動の正当化や露骨な曲筆もあるとされる。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 吾妻鏡の項より )
このマンガ作品では概ね原典に沿って描かれているようなので、鎌倉幕府の執権北条一族は時に源氏3代の 頼朝・頼家・実朝 よりも思慮深く幕府存続に身を砕いて活躍したようにも描かれている。最初の執権となった 北条 時政 (政子の父) がのちに政子と子の義時らによって失脚、出家隠居の身となったのも、後妻の牧の方の実家の陰謀に乗せられた為だったかのように描かれているくらいだ。
それはともかく、読み物としては前半の 源 頼朝・義経ら が活躍する源平合戦の項や源氏3代将軍記のあたりが面白く、後半執権政治も落ち着いて政治や祭礼儀式、天変地異の記述などが多くなるとマンガ作品としても面白さを出すのに苦労したと思われる。
その中にあって最初からずっと作品の中心となり、このマンガ作品の主人公とも呼べるのが 尼将軍 北条 政子 である。政子は 源 頼朝 の妻となった若い頃 (21歳頃) より溌剌とした現代風の気の強い性格で描かれ、それは京風の教育を受けた 頼朝 には珍しく見えて引かれた、と有る。
頼朝 が関東を制圧し鎌倉に入り居を構えて 政子 も御台所と呼ばれるようになっても、夫の浮気に怒って関東風に愛人の家を打ち壊したり、幕府の公式な行事に頼朝といつも一緒に出席したりして、二人で幕府を作ったという感覚を持っているようだ。
時におきゃんに時に思慮深く、現代の読者は 政子 に同調してこの作品を楽しむことができる。
長女の大姫が20歳の若さで死に、夫の頼朝も落馬が元で急死すると自分も死にたいと思うほど悲嘆する 政子 だったが、この後も後家の踏ん張りで 頼家 ら子供達のために活躍する。
ところがその2代将軍 頼家 の評判が悪く 頼家の乳母の家比企氏 が台頭してくると実家 北条氏 が大事とばかりに我が子 頼家 を出家、将軍職を奪って三男の実朝を3代将軍に据えるが、頼家はその後北条氏に幽閉、のちに暗殺される。
このあたりは苦渋の決断、いや我が子をここまで、本当かな~と疑ってしまうが、母親の情としては出家させれば命は助かるかも、と考えたのに諸事情で親や兄弟に押し切られてしまったのだろうか。(涙)
自分と頼朝の子のうち、ただひとり残った 実朝 も頼家の子供 公暁 (くぎょう 有名な大いちょうの場面です) に殺されたのちは摂関家から迎えた皇族将軍の後見役となり、尼将軍と呼ばれている。
自分だけ生き続けて 頼朝 と育てた 幕府 を存続させるため、後家の頑張りを続けざるを得なかった 政子 の心情はどんなものだったのか。後鳥羽上皇が幕府に対し挙兵した折の御家人たちに言った 政子 の有名な言葉、
「頼朝の恩は山よりも高く、海よりも深い、逆臣の讒言により不義の宣旨が下された。上皇の近臣を討って、三代将軍(実朝)の遺跡を全うせよ。ただし、院に参じたい者は直ちに申し出て参じるがよい」
は、頼朝の妻というより、領地を安堵してくれる者に付く、という関東武士の娘としての 政子 を強く感じる。
2005年NHK大河ドラマ 「義経」 で政子を演じた 財前直見さん は関東という田舎出身者だけれど武士の娘としての誇りがあり、政治にも口出しするような独立した個人としての強気の雰囲気が出ていたな、と思う。歴代の 政子役者 の中では私は好き。
政子が69歳で死んだ後もページは続くが、年と起った事の記述が続いてマンガ作品としての面白みはない。原作の 「吾妻鏡」 も同様に後半は読み物としてはつまらないということなので、この作品としても後記のようなものなのだろう。
膨大な登場人物を簡潔に、枠外に説明文もたくさん付けて、苦労してなるべくわかりやすく作っているのがわかる労作です。歴史好きなら一度手に取ってみてください。
原作無理でもこのシリーズなら 「平家物語」だって「太平記」だってすぐに読めます。日本にマンガがあって良かったな~。(笑)
マンガ日本の古典シリーズでは、他にも有名なまんが家が古典に挑戦しており、自分としても読みたいものがたくさんある。刊行当時はマンガをあまり読んでいない時期なのでほとんど読んで無いのだ。
石ノ森 章太郎 「古事記」
横山 光輝 「平家物語」
木原 敏江 「雨月物語」
いがらし ゆみこ 「和泉式部日記」
坂田 靖子 「堤中納言物語」
水木 しげる 「今昔物語」
長谷川 法世 「源氏物語」
横山 光輝 「平家物語」
矢口 高雄 「奥の細道」
牧 美也子 「好色五人女」
さいとう たかお 「太平記」
里中 満智子 「心中天網島」
安彦 良和 「三河物語」
花村 えい子 「落窪物語」
バロン吉元 「徒然草」
土田 よしこ 「東海道中膝栗毛」
いがらし ゆみこ 「とはずがたり」
つのだ じろう 「怪談」
酒井 美羽 「春色梅児誉美」
やまだ 紫 「御伽草子」
黒鉄ヒロシ 「葉隠」
古谷三敏 「浮世床」
小島剛夕 「信長公記 」
以上 順不同。
わー、読みたくなるものばかり。これは又E-ブック○フのお世話になって集めねばなるまいか。
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中公文庫 上・中・下 3巻 2000年5月25日初版~
平成9年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞の 「マンガ日本の古典」 全32巻の内の 14~16巻 (文庫版)
あとがきで作者も言っているように、この長大な歴史書を3巻で描き切るのは何と大変な作業だったことだろうか。他で読んだのだが、これと 「エルメスの道」 が描くのにとても大変だったと作者が言っている。
「吾妻鏡」 は鎧に馬に鎌倉時代の着物に源平合戦、「エルメス~」 も細かい馬具に馬に当時のファッションから当時の建物、時代考証が大変ですよ。
「吾妻鏡」 原典は1180年(治承4)から1266年(文永3)までの87年間を描く、全52巻の鎌倉幕府の公用記録書です。
日記の体裁をとってはいるが鎌倉末期の編纂とされるこの歴史書は、編纂当時の権力者である北条氏の行動の正当化や露骨な曲筆もあるとされる。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 吾妻鏡の項より )
このマンガ作品では概ね原典に沿って描かれているようなので、鎌倉幕府の執権北条一族は時に源氏3代の 頼朝・頼家・実朝 よりも思慮深く幕府存続に身を砕いて活躍したようにも描かれている。最初の執権となった 北条 時政 (政子の父) がのちに政子と子の義時らによって失脚、出家隠居の身となったのも、後妻の牧の方の実家の陰謀に乗せられた為だったかのように描かれているくらいだ。
それはともかく、読み物としては前半の 源 頼朝・義経ら が活躍する源平合戦の項や源氏3代将軍記のあたりが面白く、後半執権政治も落ち着いて政治や祭礼儀式、天変地異の記述などが多くなるとマンガ作品としても面白さを出すのに苦労したと思われる。
その中にあって最初からずっと作品の中心となり、このマンガ作品の主人公とも呼べるのが 尼将軍 北条 政子 である。政子は 源 頼朝 の妻となった若い頃 (21歳頃) より溌剌とした現代風の気の強い性格で描かれ、それは京風の教育を受けた 頼朝 には珍しく見えて引かれた、と有る。
頼朝 が関東を制圧し鎌倉に入り居を構えて 政子 も御台所と呼ばれるようになっても、夫の浮気に怒って関東風に愛人の家を打ち壊したり、幕府の公式な行事に頼朝といつも一緒に出席したりして、二人で幕府を作ったという感覚を持っているようだ。
時におきゃんに時に思慮深く、現代の読者は 政子 に同調してこの作品を楽しむことができる。
長女の大姫が20歳の若さで死に、夫の頼朝も落馬が元で急死すると自分も死にたいと思うほど悲嘆する 政子 だったが、この後も後家の踏ん張りで 頼家 ら子供達のために活躍する。
ところがその2代将軍 頼家 の評判が悪く 頼家の乳母の家比企氏 が台頭してくると実家 北条氏 が大事とばかりに我が子 頼家 を出家、将軍職を奪って三男の実朝を3代将軍に据えるが、頼家はその後北条氏に幽閉、のちに暗殺される。
このあたりは苦渋の決断、いや我が子をここまで、本当かな~と疑ってしまうが、母親の情としては出家させれば命は助かるかも、と考えたのに諸事情で親や兄弟に押し切られてしまったのだろうか。(涙)
自分と頼朝の子のうち、ただひとり残った 実朝 も頼家の子供 公暁 (くぎょう 有名な大いちょうの場面です) に殺されたのちは摂関家から迎えた皇族将軍の後見役となり、尼将軍と呼ばれている。
自分だけ生き続けて 頼朝 と育てた 幕府 を存続させるため、後家の頑張りを続けざるを得なかった 政子 の心情はどんなものだったのか。後鳥羽上皇が幕府に対し挙兵した折の御家人たちに言った 政子 の有名な言葉、
「頼朝の恩は山よりも高く、海よりも深い、逆臣の讒言により不義の宣旨が下された。上皇の近臣を討って、三代将軍(実朝)の遺跡を全うせよ。ただし、院に参じたい者は直ちに申し出て参じるがよい」
は、頼朝の妻というより、領地を安堵してくれる者に付く、という関東武士の娘としての 政子 を強く感じる。
2005年NHK大河ドラマ 「義経」 で政子を演じた 財前直見さん は関東という田舎出身者だけれど武士の娘としての誇りがあり、政治にも口出しするような独立した個人としての強気の雰囲気が出ていたな、と思う。歴代の 政子役者 の中では私は好き。
政子が69歳で死んだ後もページは続くが、年と起った事の記述が続いてマンガ作品としての面白みはない。原作の 「吾妻鏡」 も同様に後半は読み物としてはつまらないということなので、この作品としても後記のようなものなのだろう。
膨大な登場人物を簡潔に、枠外に説明文もたくさん付けて、苦労してなるべくわかりやすく作っているのがわかる労作です。歴史好きなら一度手に取ってみてください。
原作無理でもこのシリーズなら 「平家物語」だって「太平記」だってすぐに読めます。日本にマンガがあって良かったな~。(笑)
マンガ日本の古典シリーズでは、他にも有名なまんが家が古典に挑戦しており、自分としても読みたいものがたくさんある。刊行当時はマンガをあまり読んでいない時期なのでほとんど読んで無いのだ。
石ノ森 章太郎 「古事記」
横山 光輝 「平家物語」
木原 敏江 「雨月物語」
いがらし ゆみこ 「和泉式部日記」
坂田 靖子 「堤中納言物語」
水木 しげる 「今昔物語」
長谷川 法世 「源氏物語」
横山 光輝 「平家物語」
矢口 高雄 「奥の細道」
牧 美也子 「好色五人女」
さいとう たかお 「太平記」
里中 満智子 「心中天網島」
安彦 良和 「三河物語」
花村 えい子 「落窪物語」
バロン吉元 「徒然草」
土田 よしこ 「東海道中膝栗毛」
いがらし ゆみこ 「とはずがたり」
つのだ じろう 「怪談」
酒井 美羽 「春色梅児誉美」
やまだ 紫 「御伽草子」
黒鉄ヒロシ 「葉隠」
古谷三敏 「浮世床」
小島剛夕 「信長公記 」
以上 順不同。
わー、読みたくなるものばかり。これは又E-ブック○フのお世話になって集めねばなるまいか。