叢雲会ブログ

叢雲会 刀匠達の四方山話

往々にして    杉田

2008-10-20 22:02:13 | Weblog
物事周到に準備万端し、期待を膨らませますと余りよい事はありませんね。
期待が大きすぎて、なかなかそれに叶う事がありません。
今宵もそんなものかと、半分諦めて食事を進めて行きました。
一時間以上も過ぎましたか。今では空高く登っています。月の出時分は、うす雲や、大気に邪魔されてその輝きは半減されます。それはそれで風情になるのですが、もういい加減高く登っているのです。それなのにちっとも冴えない。
間抜けな満月が、掛かっているだけです。
こんなはずはない。俺の知っている名月はこんな物ではない。泣きたい気持ちでありました。が、少し酩酊してはおりましたが明晰な頭脳で冷静に考えましたよ。フム。これは部屋の明かり、これが明るすぎるに違いない。早速女将に頼み、明かりを全部消してもらいました。するとどうでしょう。一瞬真っ暗闇になり何も見えません。
と、同時に一条にの光が部屋の奥まで差し込んで来たのです。一体これはこれは何事が起こったのか。と思った刹那、部屋中が青白い月明かりに満たされたのでありました。畳も襖も青く、白く、浮かびあがりました。その上に己が影法師がひとつ。これこれ、これでなくてはいかません。また外をみれば、以前とは全く違った仲秋の名月が浮かんでいるではありませんか。あまりの美しさについ引かれ、よろよろと窓際まで歩み寄りました。すんでのところで川の転がり落ちるところでしたが。さあそこに、黒い山並みの上にと言うのか下にと言うのか、またもうひとつ満月が川面に写っているではありませんか。この川面に写る月が名月也や、はたまた、中空にある月が名月也や、と訳のわからない事を考えたりしたのでした。
これで満足満足、今日計画した甲斐があった、来てよっかった。単純な私としては簡単にきげんがなおるのですね。さあ、それでは最後の総仕上げ、これを肴に最後の一杯と、席にもっどたのです。そして、美味い料理に箸をつけようとすると、これは困った。
また明日。